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第一章:パーティー追放

7、僧侶ルルティエラ

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「わたくしの名前はルルティエラ。冒険職は僧侶でございます」
「はあ、さようでございますか」

 左頬にくらった拳のせいで、まだ頭がくらくらする。痛みに頬を押さえてたら、なぜか自己紹介されてしまった。そんなのどうでもいいから、僧侶なら治療してくれよ。

「ザクス、お前足は俺より早いくせに、攻撃回避能力は低いのな」

 その言葉が同情を込めて言われたのならいいだろう。だがニヤニヤしてるその目は、どう見ても面白がっている。
俺はギロッとライドを睨んでから、はあと溜め息をついた。

「まだ能力が戻ってないんだよ。足が一番最初に戻ったけど、それ以外はまだ……」
「は? なんの話だ?」

 説明してから、しまったと思って慌てて口を閉じる。
 誰にも話したことない、かつての仲間すらも知らない俺の能力を、思わずベラベラしゃべってしまうところだった。危ない。

「なんでもない、こっちの話。それよりルルティエラだっけか?僧侶ならこの頬を治してくれ」
「嫌ですわ、その痛みは必要な痛みなのです。噛みしめてくださいませ」
「理不尽!」

 言い方はバカ丁寧だが、内容は厳しい。
 理不尽だと叫んでブスッとしてたら、ライドが俺の肩に腕を乗せてきた。なんだお前、大概なれなれしいな。

「それでルルちゃんは、どうしてこんな洞窟に一人で?」
「わたくしまだ冒険者になったばかりですの。経験のために、初心者向けと聞いたこの洞窟に入ったのでございます」
「僧侶一人で?そりゃまた随分勇気のあることで」

 僧侶ってのは援護の後衛が基本だ。攻撃力なんて冒険者の中では最も期待できない存在だろう。
 まず一人で冒険しないものなんだが。

「仲間、いないの?」
「わたくしは一人でも充分強いので、いりません」

 まあたまにこういう例外もいる。さっきのビンタ、なかなか強烈だったぜ。

「武闘派の僧侶か。てことは、モンクか?」
「いいえ、僧侶です。わたくし、か弱い僧侶です。か弱いんです」

 なぜ二回言うのか分からんが、今[か弱い]に随分力込めたよな。

「充分強いんだろ?」

 俺が突っ込めば

「強いですが、か弱いです」

 とか意味分からんこと言われた。
 なんだこれ、女として強いことはアピールしたくないってか?
 なんのプライドだそれは、とちょっと呆れる俺に対し、なにごとも気にしないがモットーなのだろう、ライドがヘラヘラ笑いながら、俺の肩から腕をのけた。肩の埃、払っておくか。

「そうかそうか、ルルちゃんは可愛い顔して強くて弱いのな~、いいねいいねえ」

 どこぞのセクハラ親父かお前は。ライドの言葉に彼女はドン引きだ。俺も引くわ。
 まあライドの鼻の下が伸びるのも分からないでもない。ルルティエラという女は、確かに可愛いというか美人だった。かつて仲間だったセハやミユよりも大人びた雰囲気のある、清楚な美人。やってることは全然可愛くないけどな。

「で、さっきの悲鳴はなんだったの?こわ~いモンスターでも出た?お兄さんが倒してやろうか」
「誰がお兄さんだ、お前オッサンだろ」
「俺は21歳! お兄さんだ!」

 なんだ、結構若いのな。勇者な兄貴の1コ上なだけか。
 言ってることがオッサンくさいからもっと上かと思ったわ。

「わたくしは18歳ですわ」

 誰も聞いてないのにルルティエラは自分から年齢を教えてくれた。こっちも思ったより若い。セハ達が17歳とか18歳とかだから、もっと上かと思ってたんだがな。18歳てことらセハと同じではないか。

「へえ、若いねえ。その割になかなか立派にお胸が……ごぼおっ!!」

 けしてゴボウがあるわけではない。ルルティエラの立派なお胸をオッサンライドが見た瞬間、顎にアッパーくらっただけのこと。やっぱルルティエラはモンクだろ。目が肥えてる盗賊がかわせない攻撃ってなに。

「悲鳴は、ネズミが出て思わず出ただけですわ」
「ふうん、やっぱ女の子だな。可愛いもんだ」

 ネズミが出たくらいで悲鳴とか、いかにも初心者冒険者あるあるではないか。初々しいなという意味で言ったのだが、なぜか彼女の顔が真っ赤に。

「な! べ、別に褒めたって何も出ませんからね! ち、治療くらいはしてあげてもいいですけど」
「? よくわからんが、治してくれるなら頼む」

 言ってまだヒリヒリしてる頬を差し出したら、温かい光を感じてすぐに痛みが引いた。やれやれ。
 ホッとしてルルティエラを見たら、まだ顔を赤くしたままそっぽを向いていた。なんなのだ、一体。
 そんな俺達を見て、顎をさすりながらライドが

「ツンデレ属性、だと……?」

 と呟いてたことを俺は知らない。
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