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第二章 イケメンスローライフ?

38.イヌとネコは仲が悪い?

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 俺は王都の門で待っていた。

 今日念願の薬草採取で外に出る日だ。

 あれから本当に採取ができるのかとクジャに問い詰められたが、うにょ花である幻覚花を拾ったと見せるとなんとか信用してもらえた。

 それだけ珍しい薬草らしい。

「おっ……お疲れ様です!」

 門の前で待っていると門番の交代時間になったらしい。

 声をかけたのは、俺が拘置所に入れられたきっかけになったやつだ。

「ふんっ!」

 無視してそっぽ向いていると、男は落ち込んでいた。

 そりゃーあんなことがあれば相手もしたくない。

「おう、トモヤ待たせたな!」

「ニャンタ!?」

 まさか今回もニャンタが一緒に行くことになったらしい。

 絶対クジャの仕業だろう。

「俺が今回も試験官だからな?」

 薬草採取に行くには、護衛依頼という形になるらしい。

 ウェンベルグ街の副ギルドマスターのニャンタだが、いざという時のために派遣されている。

 王都にずっと滞在しているのも今回の魔物が増えた理由と関係していた。

「そもそも、お前の子守ができるやつなんて俺ぐらいしかいないからな」

 ちょっとツンツンしてる感じがニャンタそっくりだ。

 それにしても俺を子供扱いしているのはやはり気に入らない。

 今回も勝手に行動してやろうと俺は作戦を練ることにした。

「はじめまして、今回試験を受けるわんわん団です」

「わんわん団?」

 礼儀正しく声をかけてきたのはイヌの集団だった。

 もうもふもふ好きな俺からしたら、やっぱり半獣はパラダイスだ。

「俺のためにごめんね? ニャンタのことなんて気にせずに気楽に行こうか」

 イヌ達は俺の言葉に目を輝かせていた。

 これで俺はこの子達の味方だと分かってもらえただろう。

「ちっ、また敵を作りやがった」

 隣から舌打ちが聞こえたが気にしない。

 身分証を門番に見せると、門番は口元を押さえニヤリと笑う。

「トモヤさんって言うんですね……」

 なんか……この門番、気持ち悪いな。

 見た目はめちゃくちゃカッコいいのにどこか不気味さを感じる。

「おい、トモヤに次何かしたら――」

「あっ、獣人の皆さん! 今魔物が増えているって話なので気をつけてくださいね」

「くっ、前と態度を変えて気持ち悪いやつめ」

 明らかに前回の時と態度が全く違っていた。

 それにしてもねっとりと見られてる視線が気になる。

 俺はニャンタに隠れるように門を通った。


「にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、にゃーん」

 門を通る時はニャンタにくっついていたが、さっきから終始ニャンタはご機嫌だ。

 そんなにニャンタも外に出たかったのだろうか。

 まぁ、ネコだから外が好きだもんな。

 一面に広がる草原と奥には森が見えてきた。

 通り抜ける風に心地よさを感じる。

「よし、薬草をいっぱいとるぞー!」

 ニャンタから離れて歩き始めると、急に歌うのをやめた。

 さっきまであんなに機嫌が良かったのに、どうしたのだろうか。

「そういえば、わんわん団はいつ結成したの?」

「トモヤさんに話しかけられてる……」

 声をかけても上の空でどこかぼーっとしており、何か呟いている。

「レトリバーくん大丈夫?」

「はっ!? すみません」

 わんわん団のリーダーであるレトリバーに、もう一度話しかけると今度は我に戻った。

「僕達はつい最近Dランクになったばかりで、今回はCランクの試験を受けるための事前試験なんです」

「じゃあ、みんな強いんだね。今日は頼りにしてるよ」

 にゃんにゃん団もしっかり魔物を倒していたからこの子達も強いのだろう。

「はっ、はい!」

 わんわん団のメンバーは元気な声で返事をしていた。

「はぁ、こいつら全員落としてやろうか……」

 最後尾を歩いてるニャンタから聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 ニャンタには後でお仕置きが必要だな。

 背後から痛いほど視線を感じるが、ずっと無視することにした。

 試験官だから監視しないといけないのはわかるが、そこまで見られたら俺でもさすがに緊張する。

 レトリバーも視線が気になるのか、緊張してガチガチとしていた。

 軽くもふもふしたらもっとガチガチになってしまった。

 ニャンタよ……そんなに睨んで緊張させたら上司として失格だぞ。

 やっぱりネコとイヌは仲良くなれないのだろうか。

 レトリバーと楽しく話していると、気づいたら森の入り口が見えてきた。

「じゃあ、ここから本格的な模擬試験だ。お前達気を抜くんじゃないぞ。特にレトリバー!」

「はいっ!」

 どこかレトリバーに冷たい気もするが、気のせいだろうか。

『あっ、トモヤあそこに薬草があるよ』

 声をかけてきたのはカレンだ。

 町にいる時はあまり声をかけてくれなかったが、やはり森だと元気になるのだろう。

「じゃあ!」

 俺は一言伝えると全力で薬草に向かって走った。

「おい、暴走するなと言っただろうが!」

 ニャンタに声をかけられたが、俺はお構いなしに薬草に向かって走る。

 これでニャンタを困らせることができるからな。
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