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第二章 イケメンスローライフ?

30.王都に到着

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 薬草を採取し終わると俺達は歩き出した。

「おいおい、お前そっちじゃねーよ!」

 正しくは俺が勝手に歩いて、後ろからニャンタとにゃんにゃん団が付いてきている。

 俺の子守りをニャンタがしているため、俺がどこかに行けばニャンタは自然と俺についてきていた。

 そういえば、にゃんにゃん団は何か目的があった気がするんだが……。

 そんなことはお構いなく俺は森を突っ切った。

「うぉー! やっと見えたー!」

 勢いよく森を抜けると奥には外壁に囲まれた王都が見えていた。

 正確に言えばカレンが言った見た通りに進んだだけだ。

「おい、お前止ま――」

「あっ、ニャンタ達も来たんだね」

「「「にゃーにーーー!」」」

 はい、今回も頂きました。

 さっきからずっと王都とは逆方向やら、行き先が違うやら言われていたが、最速で着くコースを選択していた。

「おま……どうして道がわかったんだ?」

「あー、なんかそんな気がしたから?」

 ここでカレンが教えてくれたと伝えると、また幻覚花に影響されたと言われかねない。

 だからここは適当に流すのがちょうどいいのだ。

「お前ならわかりそうだもんな」

 やっぱり変な人扱いされてそうだな。

 早く王都に着けばそれだけ野営しなくても済むから楽になる。

 ちなみに王都についてからのお金の対策としてたくさんの薬草を採取してきた。

 もちろん持ってるのは俺ではなくニャンタだけどな。

「ここから先は外套を纏え」

 急にニャンタとにゃんにゃん団のメンバーは、マントで顔を隠すようにして王都に向かった。

 俺はマントを持っていなかったため、そのままニャンタに着いていくことにした。

 王都に入るまで、入り口の門前に長蛇の列ができていた。

 その行列を見て思ったのは並んでいるのが全員男だったことだ。

 初めてこの世界に来た時にウェンベルグ公爵家からは男性の方が多いと聞いていたが、いざ目撃すると実感が湧いてきた。

「おい、次はお前達だ」

 ニャンタ達の順番になり、ニャンタとにゃんにゃん団のメンバーは何かカードを見せていた。

「冒険者達か! 獣人のくせに王都に来てなんの用だ」

「依頼できた」

「はぁん!? お前らみたいな汚い獣が入るとこじゃねーんだよ」

 聞いている俺はイライラが収まらなかった。

 どこからどう見ても獣人や半獣より、この男の方が獣以下の存在だ。

 顔が良くても性格が悪ければ、ただの残念な男だ。

 ニャンタ達はお前と違ってもふもふして可愛いからな。

「テメらみたいなのは俺らの――」

 門番は手前にいたケットに殴りかかろうとしていた。

「お前、何様のつもりだ」

 そのまま振り上げた手を俺は掴み上げた。

「なっ!?」

「今ケットに何しようとしたんだよ」

 そのまま強く握ると男は狼狽した。

 自分でもいつも以上に力が出ていることに驚いていたが、異世界に来て何かが関係しているのだろう。

「おい、トモヤやめろ」

 そんな俺をニャンタが止めた。

 それでも俺の怒りは収まりそうになかった。

「お前らもなんで黙ってるんだよ! こいつとお前らの何が違うんだ? 見た目か? そんなもん少し違うだけで価値が変わるのか!」

 俺はニャンタ達に言っているが、きっと地球にいた頃の自分に対しても言っているのだろう。

 たまたま好きになったのが同性だっただけで、世間からは冷たい目で見られていた。

 見た目も同じ人間なのにそれだけで差別されてしまうのだ。

 そんな中ずっと生きていても、生きた心地がしないままいつのまにか死んでいた。

 きっとニャンタ達も似たような劣等感を持っているのだろう。

「くそ、小僧放せ!」

 俺に向かって門番は腰につけていた剣を取り出した。

 その場で斬られると思った瞬間、誰かが門番を強く突き飛ばした。

「誰が市民に手を出して良いって教えた? あん?」

 聞こえた言葉は物騒だった。

 成人男性が簡単に吹き飛ぶのも想定外の動きで俺はその場で固まってしまった。

「しかも将来有望そうな面構えと心持ちの小僧じゃねーか。希望を与える騎士様が何やってるんだ?」

 またどこか勘違いされているような気がするぞ?

 さすがにこんな修羅場の状態で言う勇気は俺にはない。

 それにしても、突然現れた男も金髪に短髪とイケメンだった。

 本当にこの国のイケメン率は高い。

 その後も門番の人は剣の鞘で叩かれていた。

 さっきまでの怒りもいつのまにか収まり、今はただの見学者だ。

「おい、お前ら変われ!」

「はい!」

 男の後ろにいた騎士達がケット達のカードを確認して、列に並んでいる人達の手続きを代わりに始めた。

「おい、小僧!」

「はいっ!?」

 隠れて王都に入ろうとしたが、男に呼ばれてしまった。

 ついに不法侵入をしようとしたのがバレたのか?

 だって、俺には冒険者カードみたいなのはないからな。

「よくやったな! だが、自衛目的でも騎士に手を挙げたら取り締まりをしないといけない仕組みになってるんだ」

「えっ……えーー!」

 だからニャンタ達は何もせずに、ただ門番の言うことを聞いていたのだろう。

 それを俺が勝手に止めたから反撃した扱いになっていた。

「だから少しだけ取調室に来てもらおうか?」

 俺は急に体が軽くなったと思うと男に抱きかかえられた。

「えっ!?」

 まさかお姫様抱っこの形で抱きかかえられるとは思わなかった。

 そんなに重くないはずだが、大きさは成人男性だ。

 そんな俺を軽々も持ち上げるとは……。

 そして思ったよりも注目されすぎて恥ずかしい。

「やっぱり綺麗な顔をしているな」

 イケメンにそんなことを言われるとさらに恥ずかしくなる。

 今頃、顔は真っ赤になっているだろう。

 あまりの恥ずかしさに俺はそのまま男の首に手をかけて顔を隠した。

 これなら見られる心配はない。

「これはたまんないねー」

 男は何か言っていたが、俺はそのまま首に手を回し目的地まで運ばれていく。
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