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第一章 ここは異世界ですか?
15.渡人はおもちゃ
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紙の資料はほとんど整理して、今は金銭が関わる資料を中心に勝手に試算表を作り直している。
「やばっ!? このままじゃ遅れる」
懐中時計を確認すると終業時刻の10分前になっていた。
昔から集中すると周りに気づかないのは異世界にきた今も変わらなかった。
あれだけ次は先に待つと昼休憩後に意気込んでいたのに気づかないとは……。
俺は持ってきた荷物と公爵家で確認する予定のまとめた資料だけ持ち出すことにした。
持ち出すこと自体あまり良くないとは思うが、本来の資料は整理されずに置いてあるためバレないだろう。
急いで騎士団本部の入り口に向かうと、すでに訓練を終えた騎士達が浴室に向かっていた。
汗をかいても不思議と不衛生に見えないのはみんなが高身長でイケメンだからだろう。
どこから見ても汗がアクセントとなりキラキラとして眩しい。
これが乙女ゲームの世界なら補正機能なのかな?
そんなに見ても大丈夫なのかと気になると思うが、向こうもずっとこっちを見ているから特に問題はない。
俺を見て手を振ってくれるから、きっと子ども扱いなんだろう。
そんなことを思っていると、ホビーが近づいてきた。
目の前で見たら、今まで見た中で一番怖い。
なんというのか熊というのか柱というのかとにかくでかい。
「ホビーさんどうしましたか?」
俺はホビーの名前を呼ぶと震えていた。
彼を怒らせてしまったのだろうか。
震えるということは、よっぽど名前を呼ばれるのが嫌だったのかな。
すでに俺には恐怖感しかない。
「これあげる」
いきなり手を握られると、気づいたら飴を握らされていた。
クリスチャンに質問する時は流暢だったのに、なぜか今はカタコトで話している。
「あっ、あり――」
お礼を伝えようとしたら、ホビーはどこかに行ってしまい、気づいた時には消えていた。
彼は俺に飴を渡したかっただけのようだ。
「あはは、ホビーのあんな姿を初めてみたよ」
声がする方を見るとクリスチャンとクラウド……尊い……。
訓練後に入浴していたのか、二人の長い髪の毛はまだ濡れており、衣服も少しはだけている。
そこから見える素肌は白く輝いていた。
「やっぱり綺麗ですね。なんというか……尊いです」
単純に言えることは綺麗という言葉だ。
もはや美人を通り越して神が降臨している。
「私達のことかしら?」
クラウドの問いに俺は頷くと、気づいたら二人に抱きつかれていた。
「トモヤくんは素直で可愛いね」
「このまま私達の物にしたいぐらいだわ」
なんとも言えないほど良い匂いがする。
女性のように甘くはなく、男性のように強くもない。
「トモヤくん大丈夫?」
気づいた時には二人に頬を突かれていた。
ロベルトのように年下だとわかった上で悪戯するのは何とも思わないが、この人達は急に何をするかやりかねない。
「悪戯はそれぐらいにして早く街に行きましょう」
抱きつかれている二人から抜け出すと、入り口の方に向かった。
「トモヤくんー! 馬車は反対ですよ!」
止められるとすぐに向きを変えた。
決して方向音痴ではないからな。
「ふふふ、顔が赤いわね」
「やっぱりトモヤくんは可愛いね」
俺は決して動揺していたわけではない。
馬車の停留所を忘れていただけだ。
だから赤くなった顔をニヤニヤと見ないでもらいたい。
「もう悪戯はやめてください」
頬を触る二人の手を払い除けて俺は馬車に向かう。
遠目で俺達の姿を見ていたのか、騎士団の人達がこちらを見ていた。
きっとウェンベルグ公爵家の人達が、騎士団の中で本当に人気なんだろう。
見た目が美人で強いから仕方ない。
俺達は馬車に乗ると、ホビーからもらった飴を思い出した。
「そういえばホビーさんから飴を貰いました」
俺は飴を二人に渡すと、包み紙を確認してから一つ食べた。
俺が貰った飴なのにな……。
「そんな顔をしなくてもあげるわよ?」
そう言ってクラウドは舌をだし、その先には飴が落ちないように乗っていた。
「んっ!」
いや、その飴を取れってことなのか……。
ただでさえ美形が目の前にいて焦るのに、その行動は難易度が高すぎる。
少しニヤニヤしているところを見ると、これもきっと悪戯なんだろう。
二人からしたら俺は良いおもちゃに見えるのかな。
飴を取らずにそのまま眺めていると、クラウドは残念そうに飴を噛んでいた。
「あー、あのまま食べたらまた面白いことになったのになー」
やっぱり俺の反応を見て遊んでいたようだ。
「実はこの飴も魔果の実から作られた物よ」
ホビーから貰った飴は俺を変態にさせた魔果の実から作られているらしい。
クラウドは毒味も含めて食べていたが、きっと面白がっていたのだろう。
あのまま食べたら、ウェンベルグ街ではあはあしていたかもしれない。
「魔力が増えたり、魔力がある食べ物ってほかにあるんですか?」
いざ街に出たが知らない間に魔力を含んだ食べ物を食べて辛い思いをするのは避けたい。
「んー、基本的に魔果の実同様に名前に基本的にわかりやすくするために魔ってつくことが多いかな」
魔果の実が問題なのかはわからない。
ただ、魔ってつく食べ物を基本的に食べないようにすれば良いのなら簡単なことだ。
「停留所につきました」
御者から声がかかると、ウェンベルグ街の中にある停留所に止まっていた。
「ここからは徒歩になるから行きましょうか」
俺は二人に案内される形で街の中を歩くことになった。
「やばっ!? このままじゃ遅れる」
懐中時計を確認すると終業時刻の10分前になっていた。
昔から集中すると周りに気づかないのは異世界にきた今も変わらなかった。
あれだけ次は先に待つと昼休憩後に意気込んでいたのに気づかないとは……。
俺は持ってきた荷物と公爵家で確認する予定のまとめた資料だけ持ち出すことにした。
持ち出すこと自体あまり良くないとは思うが、本来の資料は整理されずに置いてあるためバレないだろう。
急いで騎士団本部の入り口に向かうと、すでに訓練を終えた騎士達が浴室に向かっていた。
汗をかいても不思議と不衛生に見えないのはみんなが高身長でイケメンだからだろう。
どこから見ても汗がアクセントとなりキラキラとして眩しい。
これが乙女ゲームの世界なら補正機能なのかな?
そんなに見ても大丈夫なのかと気になると思うが、向こうもずっとこっちを見ているから特に問題はない。
俺を見て手を振ってくれるから、きっと子ども扱いなんだろう。
そんなことを思っていると、ホビーが近づいてきた。
目の前で見たら、今まで見た中で一番怖い。
なんというのか熊というのか柱というのかとにかくでかい。
「ホビーさんどうしましたか?」
俺はホビーの名前を呼ぶと震えていた。
彼を怒らせてしまったのだろうか。
震えるということは、よっぽど名前を呼ばれるのが嫌だったのかな。
すでに俺には恐怖感しかない。
「これあげる」
いきなり手を握られると、気づいたら飴を握らされていた。
クリスチャンに質問する時は流暢だったのに、なぜか今はカタコトで話している。
「あっ、あり――」
お礼を伝えようとしたら、ホビーはどこかに行ってしまい、気づいた時には消えていた。
彼は俺に飴を渡したかっただけのようだ。
「あはは、ホビーのあんな姿を初めてみたよ」
声がする方を見るとクリスチャンとクラウド……尊い……。
訓練後に入浴していたのか、二人の長い髪の毛はまだ濡れており、衣服も少しはだけている。
そこから見える素肌は白く輝いていた。
「やっぱり綺麗ですね。なんというか……尊いです」
単純に言えることは綺麗という言葉だ。
もはや美人を通り越して神が降臨している。
「私達のことかしら?」
クラウドの問いに俺は頷くと、気づいたら二人に抱きつかれていた。
「トモヤくんは素直で可愛いね」
「このまま私達の物にしたいぐらいだわ」
なんとも言えないほど良い匂いがする。
女性のように甘くはなく、男性のように強くもない。
「トモヤくん大丈夫?」
気づいた時には二人に頬を突かれていた。
ロベルトのように年下だとわかった上で悪戯するのは何とも思わないが、この人達は急に何をするかやりかねない。
「悪戯はそれぐらいにして早く街に行きましょう」
抱きつかれている二人から抜け出すと、入り口の方に向かった。
「トモヤくんー! 馬車は反対ですよ!」
止められるとすぐに向きを変えた。
決して方向音痴ではないからな。
「ふふふ、顔が赤いわね」
「やっぱりトモヤくんは可愛いね」
俺は決して動揺していたわけではない。
馬車の停留所を忘れていただけだ。
だから赤くなった顔をニヤニヤと見ないでもらいたい。
「もう悪戯はやめてください」
頬を触る二人の手を払い除けて俺は馬車に向かう。
遠目で俺達の姿を見ていたのか、騎士団の人達がこちらを見ていた。
きっとウェンベルグ公爵家の人達が、騎士団の中で本当に人気なんだろう。
見た目が美人で強いから仕方ない。
俺達は馬車に乗ると、ホビーからもらった飴を思い出した。
「そういえばホビーさんから飴を貰いました」
俺は飴を二人に渡すと、包み紙を確認してから一つ食べた。
俺が貰った飴なのにな……。
「そんな顔をしなくてもあげるわよ?」
そう言ってクラウドは舌をだし、その先には飴が落ちないように乗っていた。
「んっ!」
いや、その飴を取れってことなのか……。
ただでさえ美形が目の前にいて焦るのに、その行動は難易度が高すぎる。
少しニヤニヤしているところを見ると、これもきっと悪戯なんだろう。
二人からしたら俺は良いおもちゃに見えるのかな。
飴を取らずにそのまま眺めていると、クラウドは残念そうに飴を噛んでいた。
「あー、あのまま食べたらまた面白いことになったのになー」
やっぱり俺の反応を見て遊んでいたようだ。
「実はこの飴も魔果の実から作られた物よ」
ホビーから貰った飴は俺を変態にさせた魔果の実から作られているらしい。
クラウドは毒味も含めて食べていたが、きっと面白がっていたのだろう。
あのまま食べたら、ウェンベルグ街ではあはあしていたかもしれない。
「魔力が増えたり、魔力がある食べ物ってほかにあるんですか?」
いざ街に出たが知らない間に魔力を含んだ食べ物を食べて辛い思いをするのは避けたい。
「んー、基本的に魔果の実同様に名前に基本的にわかりやすくするために魔ってつくことが多いかな」
魔果の実が問題なのかはわからない。
ただ、魔ってつく食べ物を基本的に食べないようにすれば良いのなら簡単なことだ。
「停留所につきました」
御者から声がかかると、ウェンベルグ街の中にある停留所に止まっていた。
「ここからは徒歩になるから行きましょうか」
俺は二人に案内される形で街の中を歩くことになった。
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