上 下
65 / 73
第五章 もふもふはムンムン

65.やっぱり迷子になるようです

しおりを挟む
 僕は案の定、城の中で迷子になっていた。この間は中央に庭があったため、庭ならすぐに行けると思っていた。

 それなのにいくら歩いてもあるのは広い廊下と部屋の扉だけだ。

 モスス達もマリアのお手伝いをすると言っていたため、僕は一人寂しく城の中を彷徨っている。

「誰かいないのかな?」

 さっきから人を探したが誰一人も歩いていない。明らかに変わったその空間に戸惑うことしかできなかった。

「君こんなところでどうしたんだ?」

 突然声をかけられるとそこには分厚い紙の束を持った少年がいた。少し顔が疲れている少年は、そこまで年齢は変わらない気がする。

「あのー、迷子になったんですがここはどこですか?」

「本当に迷子なの? ここは悪いことをした貴族達が幽閉されているところだぞ」

 それを聞いて僕はオオバッカのことを思い出した。ひょっとしたらどこかの扉を開けた先に彼はいるのかもしれない。

 流石にそんなところにいたら誰でも怪しむだろう。ただ、僕もその少年がここにいたことを怪しんでしまう。

「きっと僕より君の方が怪しまれると思うけどね」

 僕の思っていたことがバレて驚いてしまった。

「今バレたと思っただろ?」

 彼は僕の心を読む天才だ。初めて会う子だが、この子には嘘をついてはいけないような気がした。

「図書室に行く予定だったんだけど、場所がわからないから庭で聞こうかと思って……」

「図書室に行くのに庭で聞く? 庭も図書室も反対だよ」

 どうやら僕は反対方向に歩いていたらしい。さすがに反対に行けば、いくら歩いても庭が見えてこないはずだ。

 図書室は庭の近くにあるらしい。一度庭でソフィアと会っているため、図書室の場所はわかっていると判断されたのだろうか。

「僕が連れて行こうか?」

「本当に!? 道がわからなかったから助かったよ」

 僕は少年に図書室に案内してもらうことになった。彼が持っていたのは本と言ってたくさん文字が書かれていた。

 図書室にはその本がたくさん置いてあり、昔のことや知識がそこには書いてあるらしい。

 ちなみに彼はアンディと名乗っていた。どこかで聞いた記憶もあるが、覚えていないってことは全く知らない人だろう。

「それで文字が読めないのに図書室に何か用があるのか?」

「今日は勉強を教えてもらうために行くんだ」

 事前に打ち合わせをするということは、きっとある程度教えてみて授業の内容を考えるのだろう。ミリアムも事前に貴族はテストをして内容を考えると言っていた。

「そうか……。まぁ、僕には必要ないことだけどね」

 文字が読めると勉強はしなくても良いのだろうか。それなら文字を読むのを第一優先にしても良さそうだ。

「なら、僕の友達になってくれないかな?」

「へっ!?」

 いきなり友達になって欲しいと伝えたら驚いた顔をしていた。心が読める彼も僕の言葉にびっくりしているようだ。

「文字がわかる友達がいたら、わからないところは聞けるかなって」

「それは家庭教師でもいいんじゃないか?」

 確かに彼の言っていることは合っている。ただ、本音は一緒に話せる同年代の友達が欲しい。

 僕にはロンリーコンやショタッコンと年齢が離れた友達しかいない。

「なら、何も教えてくれなくていいから友達になってくれないかな?」
 
「図書室に着いたよ。じゃあ、またね・・・

 たくさん話をしていると、いつの間にか図書室に着いてしまった。まだまだ話し足りないのに少年は急いでどこかへ行ってしまった。

 結局彼とは友達にはなれなかった。

「はぁ……はぁ……僕に友達って大丈夫なのか? 貴族の嫌われ者なのに――」

 少年は柱の影に隠れて息を整えていた。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

処理中です...