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第四章 もふもふはサラサラ

53.サゲスーム公爵家は大変のようです

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 翌日には元気になり、いつも通りの生活に戻った。朝から夜までみんなをもふもふしたり、薬草を採取しながら有意義な生活をしている。

 ロンリーコンとショタッコンに会った時は、二人ともくっついて離れようとしなかった。

 どうやら二人とも僕達をずっと心配していたらしい。オーブナーに話を聞いた時は、今すぐにでもオオバッカを殺しに行きそうな雰囲気が出ており、止めるのが大変だったと言っていた。

「はぁ、勉強は楽しみだけど家庭教師って誰だろうね!」

 今まで僕達は勉強をすることがなかった。ただ、今後貴族とも関わることを考えると、一般常識を教えるためにも、家庭教師をつけた方が良いという話になった。

 今日はその家庭教師に会う日だ。

 いつものように頭にモスス、胸ポケットにはタマ達、マリアは毛玉を抱えて家庭教師の先生が待っているという部屋に向かった。

――コンコン!

「失礼します」

 ドアを数回叩き扉を開けた。

「ご機嫌麗しゅうございます。私の名前はリックと申します。隣にいるのが――」

「妹のマリアです」

 僕達は挨拶をしてから部屋の中に入る。事前に挨拶の仕方を何度も練習したから問題はないだろう。

「リックくん、マリアちゃんこんにちは!」

 聞こえてくる声に驚いた。椅子に座っていたのはソフィアだった。彼女は手を振りながら、僕達を椅子に案内した。

 その隣にはニヤニヤと笑っているアリミアと遠い目をしているオーブナーがいた。

 僕達は案内されるがまま椅子に腰掛ける。

「ソフィア殿下今日は何かあったんですか?」

 マリアも同じことを思っていたのだろう。なぜ王族であるソフィアがいるのかと。

「二人とも堅苦しいんだから! もう、私はソフィア殿下ではないのよ」

 ソフィアが殿下でなければ何になるのだろうか。いまいちピンと来ていないが、マリアは気づいているのだろう。

 目をキラキラと輝かせている。

「二人から背中を押されて王族をやめてきちゃいました!」

「えー!」

 僕は驚いて立ち上がる。さっきからオーブナーが目を合わせないのと、ミリアムが笑っていた理由がやっとわかった。

「二人が驚いてくれて嬉しいわ。まぁ、一番はうちのバカ息子だけどね」

「普通は事前に言うだろう。リック達の保護者は俺だ――」

「何言ってるの? もう二人は私達の家族だから保護者は公爵家よ」

 今回の事件をきっかけに本格的に公爵家が僕達を保護することが決まった。ソフィアが王族から離れることが決まったら、マリアの工房は公爵家の庇護下になるため、必然的に保護することになるのだろう。

 家庭教師の話は少しずつ勉強する習慣をつけていくところから始まるらしい。

 詳しい話が終わると、次期サゲスーム公爵家のオオバッカの話になった。

 オオバッカを調べると犯罪行為がいくつか出てきたらしい。その件数は片手で数えられないほどだった。

 若手冒険者を囮として使っていたのは僕だけではないらしい。

 全て事実を話さないといけなくなる魔法でそれがわかったのだ。

 彼はアーティファクトの力を使って、今までの犯罪行為を隠蔽してバレずに済んだらしい。

 基本的に街を通る時に犯罪行為はバレてしまう。それを隠蔽できたのが、アーティファクトの力らしい。

 状態異常の付与を防ぐのではなく、自分に干渉するものを防ぐ効果があると言っていた。

 また、爵位が公爵位から伯爵位に落とされたことから、サゲスーム伯爵位となった。

 オオバッカは次期サゲスーム公爵家を受け継ぐ権利を失い、爵位継承は弟のデキルーンが継ぐことに決まった。

 これで全ての問題が解決した。僕達は本当にビクビクせずに笑顔で生活できることになった。
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