ガチャテイマーはもふもふを諦めない。〜フェンリルを求めてガチャを回すがハズレのようです。代わりに来たもふもふをモスモスしたら幸運が訪れた〜

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
37 / 73
第四章 もふもふはサラサラ

37.貴族のお茶会は鼻フックしたくなるようです ※ミリアム視点

しおりを挟む
 家に息子が帰ってきてから、少し家の中が明るくなった気がする。あんな事件があった息子の笑顔を見ることが、再び来るとは思いもしなかった。

「今日はお茶会にお招き頂きありがとうございます」

「あら、お元気でしたか」

 今日公爵家夫人の私がお茶会を開くことになっている。挨拶をしてきたのは、同じ公爵家夫人だ。

 彼女とは昔から気が合わないことで有名だ。同じ公爵家として誘わないわけにはいかないため、声をかけているがなぜか毎回参加してくる。

 正直この女性はめんどくさい。

「そういえば、息子さんはお元気かしら」

「ええ、最近楽しそうに子ども達と遊んでいるわ」

 彼女は蔑むように笑っている。きっと私の言っていることが嘘だと思っているのだろう。

 本当に朝からオーブナーは楽しそうに訓練場で遊んでいたわ。

 リックは死にそうな顔で逃げていたけど、息子ってああいうことには手を抜かないタイプだから心配になってしまう。

「公爵夫人聞いてます?」

「あっ、すみません。考えごとをしていましたわ」

「ふふふ、息子さんがあんなことを犯さなければ、今頃騎士団長になっていただろうに……」

 悲しそうにしているその顔面に指を突っ込みたいぐらいムカつく顔をしている。

 あなたの大きな鼻は指を突っ込むためにあるようなものね。

 オーブナーは元々王族である殿下を守る立場の職についていた。しかし、殿下は視察の時に魔物に襲われてしまった。

 殿下を守るために、一人で抱えて逃げた。息子は立派に役目を果たしたと私は思っている。

 実際に息子へ褒美が与えられたのだ。王からもその行動は認められたはずなのに、息子はそれを辞退した。

 周囲からの目がそうさせなかったのだ。

 殿下を抱えて逃げた息子に非難の声が上がった。その背景に同じ貴族出身である騎士が命をかけて殿下を守ったという理由があった。

 もちろん王はその人達にも言葉をかけていた。それでも逃げるという行動に周りは納得できないのだろう。

 きっとほとんどの貴族は公爵家である私達を陥れるためとはわかっている。それでも息子は責任を取るために騎士をやめた。

 本人は元々宿屋の経営をしたいと言っていたが、それは騎士という仕事から離れるためだったと思っている。

 それでも帰ってきた息子の顔を見たら、本当に宿屋がやりたかったのかと思ってしまう。

 あの子達が落ちぶれていた息子を救ってくれた。本当に感謝しかない。

「それでこの間冒険者として勉強している息子が、ミスリルを持ってかえってきたのよ! あのミスリルよ!」

 自分の息子は実力があると言いたいのだろう。そんな話を一刀両断する人が現れた。

「皆様ご機嫌よう」

 私達は立ち上がり一礼して挨拶をする。彼女こそがオーブナーが助けたソフィア殿下だ。

 殿下が来るからみんなこのお茶会に参加している。むしろ殿下は私が開催するお茶会にしか来ないのが特徴だ。

 彼女の中に息子に対する思いがあるのだろう。

 お茶会は普段通りに始まり、各々最近の流行を話し出した。

 もちろん鼻に指を突っ込みたくなる公爵夫人は、息子がミスリルを持って帰ってきた話だ。

 何度も同じ話をして、正直飽きないのだろうか。

「アリミア夫人は何かありますか?」

 ソフィア殿下は私に息子の話が聞きたいのだろう。

「最近息子が子どもを連れて帰ってきてね。その子達が天使なのよ」

「お子さんが生まれたんですか?」

「いえ、我が家で面倒を見ているだけです」

 私の言葉に他の夫人たちは鼻で笑っている。みんな嘘だと思っているのだろう。

 ただ、ソフィア殿下だけは違った。

「私も会いたいですわ」

 彼女は本当に性格が良い女性だ。王族なのに傲慢にならず、貴族達の誇りに値する。

 それを他の貴族達は気付かないようだ。

「ソフィア殿下! きっと悲しみに暮れたアリミア夫人の戯言――」

「今度遊びに来るといいですわ。これはあの子達がソフィア殿下にプレゼントするって手作りで用意していたのよ」

 いつまでも黙っている私ではない。今度は息子を救ったあの子達を私が助ける番だ。

 箱に入ったハンカチーフを取り出す。ハンカチーフの縁には王族である証の獅子が刻まれている。

「初めて見る生地ですわね」

 ソフィア殿下も初めて見る生地のハンカチーフに興味津々だ。マリアは私達が驚くほどの裁縫技術を持っていた。

 何かわからない糸を自分で編み込んで生地にするぐらいだ。

 正直洋裁職人でも難しいだろう。

「本当にお邪魔してもよろしいんですか?」

「ええ、子ども達も喜ぶわ」

 ソフィア殿下が興味を示したハンカチーフとなれば、他の夫人達は黙っていない。全員がうちに遊びに来たいと声をかけてくる。

「ごめんなさいね。生地が足りないのよ」

 実際にマリアからは糸が足りないと聞いている。だから、ソフィア殿下しか誘えないのだ。

 視線を感じた私は横を見ると、公爵夫人が悔しそうな顔をしていた。

 ふふふ、惨めなのはあなたよ。

 サゲスーム公爵夫人。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。 木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。 何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。 そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。 なんか、まぁ、ダラダラと。 で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……? 「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」 「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」 「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」 あ、あのー…? その場所には何故か特別な事が起こり続けて…? これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。 ※HOT男性向けランキング1位達成 ※ファンタジーランキング 24h 3位達成 ※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...