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第二章 もふもふはモサモサ

18.どうやら本当のようです

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 目の前にたくさん置かれた金貨に、今度は僕がギルドスタッフと金貨を交互に見る。

「あのー、これは――」

「お前が薬草と間違えて持ってきたやつの買取金額だ」

 ざっと見ても金貨が数十枚以上はある気がする。

 武器もレンタルじゃなくて購入できるほどだ。

 オーブナーはお金を僕の鞄に詰めようとすると、中に入っている他の物も気になったらしい。

「おい、これってコボルトキングの毛玉だよな?」

「ん? あのモサモサしたやつってただの大きいコボルトじゃないの?」

「はぁー」

 オーブナーは大きなため息を吐き、コボルトの毛玉もギルドスタッフに渡していた。どうやらあの地味に重たい毛玉も買い取ってもらえるらしい。

「もう何言ってもびっくりしないから、他には何もないよな?」

 別に元から隠す気もないし、隠しているつもりもない。

 あと気になることは……。

「そういえばさっき男の人達がゴブリンの集落――」

「そういうのは一番初めに言えよ! すぐに冒険者を集めるんだ」

 オーブナーの声が冒険者ギルド内に響く。一瞬にして空気感が変わった。

――バン!

「それは大丈夫だ」

 勢いよく冒険者ギルドの扉が開くと、そこには服が破かれた男とその男に引っ付く全裸の男がいた。

 冒険者ギルドの内がざわざわと騒がしくなる。会話のほとんどは"小僧の話は正しかった"と言っていた。

「ロンリーコンさんとショタッコンさんじゃないですか」

 毛玉をお金に換気して戻ってきたギルドスタッフが男達の名前を呼んでいた。やはりあの男達がさっき言っていたロンリーコンとショタッコンらしい。

 オーブナーはモススと彼らを交互に見て何かに気づいたのか、魔法を唱えると全裸の男は周囲を見渡していた。

 その後男は部屋の縁に行って小さく丸まっていた。全裸だから体を隠そうと思ったのだろうか。

 話の途中だったため、僕はモススに服を持っていくように伝えると嫌そうに運んでいく。

 だって僕は話を聞く必要性があるから仕方ない。決して、あの男のところに行きたくないわけではない。

「それで何が大丈夫なんだ?」

「あー、ゴブリンの集落だがコボルトの群れにやられていると思う」

「それならそのコボルトは誰がやったんだ?」

 なんか話の内容からして嫌な予感がしてきた。モススに服を任せたが、ここは僕が代わりに持って行った方が良さそうだ。

 持って返ってきたのはこの僕だからな。

「おい、まだ話は終わってないぞ?」

 逃げようとしたが間に合わず、気づいた頃には再びオーブナーの腕の中にいた。また、眉間に皺を寄せて怖い顔をしている。

「俺達がきた時にはコボルトキングを倒した小僧が一人でいたから、倒したのは小僧で間違いないぞ」

「ほぉ? これは帰ったらちゃんと聞かないとダメだな」

「あのー、オーブナーさん?」

 チラッとオーブナーの顔を見ると、にやりと笑っている。コボルトと戦った時よりも全身の震えが止まらない。

 僕はここで悟った。オーブナーに心配をかけたら死んでしまうと……。

 そのまま、僕は話が終わるまで死んだふりをしてオーブナーの腕の中で待つことにした。





 冒険者ギルドから宿屋に戻ると、そのまま食堂の椅子に座らされた。すぐにマリアも降りてくると、目の前にはたくさんの料理が並べられた。

「おい、まずはたくさん食え!」

 僕達は言われた通りに料理を口に入れていく。マリアも僕が黙って食べているのが気になるのか、チラチラと僕を見ている。

 だが、今手を止めるとオーブナーに殺される気がした。台所の奥の方で料理をしながら、ジッと僕の顔を見ている。

 どこか獲物になった気分だ。

 さすがに作ってもらったお礼や感想を伝えると、オーブナーはたまにチラチラと見るだけになった。

 今日は色々あって疲れたな。

 薬草を採取しに行っただけなのに、いきなり大きなコボルトに襲われるし、オーブナーにも怒られる。

 僕は特に悪いことをしているつもりもないのに……。

 ひとまず明日からは大人しく宿屋で過ごすほうが良さそうだけど。

 僕は眠くなった目を擦って頑張って口に運んでいくが、いつのまにかご飯を食べながら寝ていた。
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