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第二章 もふもふはモサモサ

16.おかしな男達が来たようです

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 目の前に突然できた大きな毛玉に僕は勝利を確信した。

「うぉー!」

 僕は大きな声を出して喜ぶ。それを祝うようにモススは頭に飛び乗り何度も叩いている。

 きっと僕のことを褒めているのだろう。そういえば、僕の頭の上はコボルトのよだれまみれになっているが大丈夫なのだろうか。

 僕も頑張ってくれたモススをモスモスすると、気持ち良さそうにしていた。

「ガチャコインってあるのかな?」

 あの光はフェンリルが消えた時にも同じことが起きた。ということはガチャコインが落ちている可能性もある。

 だが、周囲を見渡してもガチャコインは見つからない。

 可能性としては、目の前にある大きな毛の塊だ。

 ここはダンジョンではないため、コボルトを倒しても消えないはずだ。ならこの毛の塊自体がコボルトの正体になるのだろうか。

 僕は毛の中に手を入れると、モサモサとした触り心地を感じた。フェンリルやモススとは違う、触り心地でこれはこれでクセになりそうだ。

「これってまさか……」

 硬い何かが手に当たるような気がした。僕はそれを掴んで引っ張り上げるとそこには光輝くガチャコインがあった。

「あれ? 今度は少し黒いぞ?」

 フェンリルの時に手に入れたガチャコインは白く輝いていた。だが、今手に持っているのは黒く輝いている。

 ガチャコインの種類もひょっとしたら違うのだろうか。

 そんなことを思っていると、どこからか声が聞こえてきた。

「おーい、小僧どこ行ったー?」

 小僧とは僕のことを言っているのだろうか。とりあえず、僕が大きな声で返事をすると足音が近づいてきた。

「おい、魔の森に来て大丈夫だった――」

「ってゴブリンの集落じゃないか!」

 冒険者だと思われる男二人は集落に来ると周囲を警戒していた。あの冒険者達はギルドで僕のことを笑っていた人達だ。

 一度冒険者パーティーに騙された僕は二人に警戒を強める。

 俺に危害を加えて、ガチャコインと目の前にいる大きなコボルトを奪う気なんだろう。

「ここにゴブリンがいたのか?」

「いや、ハイコボルトの死体ばかりだ」

「なんだって!?」

 男達は驚いた顔で僕を見ていた。だが、周囲に魔物がいないことを確認できたからなのか、剣を腰に戻して近づいてきた。

「おい、怪我はなか――」

「おいおい、足が擦りむいてるじゃないか! 綺麗な足に傷が残ったらどうするんだ!」

 男達はあたふたとしている。いつの間にか足から血が出ていたらしい。

 別にこれぐらいの傷なんて、足に矢が刺さった時と比べたら痛くもない。

「こんなの舐めていたら治ります」

「舐めていいなら俺が――」

 一人は僕の足を舐めようと屈んだ。それを止めるように、もう一人の男が体を蹴っていた。

「おいおい、お前は子ども相手に何言ってるんだよ! すぐに回復ポーションを飲め」

 男は回復ポーションの蓋を開けると急いで僕に飲ませてきた。

 初めて飲んだ回復ポーションはエリクサーとは違い草の味が強かった。ただ、体の痛みはなくなり、すっきりとした気持ちになる。

「これはお前がやったのか?」

 集落のコボルト達のことを言っているのだろうか。それなら僕ではなくモススのおかげだ。

 秘技モスモスビームは最強だからな。

 僕は頭に乗っているモススをモスモスして男達に見せる。

「モススがやった」

「くっ!」

「なんて可愛いんだ!」

 なぜか男達はその場で悶えている。モススの可愛さにやられたのだろう。

「僕のモススは最強だからね」

 再びモスモスするとモススは嬉しそうにスリスリとしてくる。そして、男達も嬉しそうな顔をしていた。

 いや、一人だけは俺にスリスリしようとしていた。

「秘技モスモスビーム!」

 咄嗟にモススを近寄ってくる男に向けると、体の向きを変えた。

 大きなコボルトには効果はなかったが、男にはモスモスビームが効いたようだ。

「はぁ……はぁ……なんかお前が可愛い少年に見えるぞ」

「おいおい、俺はおっさんだ! あと、男にも興味はないぞ!」

 男は息を荒げながら服やズボンを脱いでいく。

 あれ?

 人間にモスモスビームをすると魔物の時とは違うようだ。これは良い勉強になった。

「おい、小僧。こいつを止めてくれ!」

「いや、僕にはどうすることも――」

「ぬああああ! 俺は男に興味はないんだああああ!」

 男がそのまま走って逃げていくと、僕にスリスリしようとした男は裸のまま追いかけて行った。

「そういえばどうやって帰ろうか」

 集落に迷い込んだ僕達は帰り道を聞くのを忘れていた。
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