ガチャテイマーはもふもふを諦めない。〜フェンリルを求めてガチャを回すがハズレのようです。代わりに来たもふもふをモスモスしたら幸運が訪れた〜

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第二章 もふもふはモサモサ

10.モススは飛べないようです

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 清々しい風が吹いている。どこかバタバタと音がなっているが、窓を開けっぱなしで寝ていたのだろうか。

「モスス……?」

 寝返りをするとお腹の辺りで寝ていたモススがいないようだ。

 目を開けると、顔の近くでモススが必死に飛ぶ練習をしていた。

 そういえば、うちのフェンリルはなぜ羽が付いているのだろうか。あの時も実は羽があったのに、気づいていなかっただけかもしれない。

 ただ、飛べないところを見ると、やはりフェニックスとかではなくフェンリルなんだろう。

 バタバタと動く羽が顔面に当たり眠気も飛んでしまった。

 マリアも起きたのか、支度をして食堂がある一階に降りていく。今日も食堂には僕達だけしかいないようだ。

「お前達よく寝れたか?」

 店主はこの宿屋を一人で経営しているらしい。名前はオーブナーと言っていた。

 僕達は頷くと安心したのか、手際よく料理をテーブルの上に置いていく。昨日も思ったが、明らかに僕達では食べられる量ではない。

「あのー、こんなには食べられない――」

 オーブナーにギロリと睨まれた。急いで口を閉じたが彼はどこか怒っているようだ。

「ちゃんと飯を食わないと大きくなれないぞ」

 それだけ伝えるとオーブナーは他の仕事に向かった。今日はパンとお肉が入ったシチュー、それにサラダまで付いている。

 今まで朝ご飯なんて食べたことがなかった。一日に一食しか食べるお金がなかったのだ。

「こんなに食べられるかな……」

 隣にいるマリアも同じことを思ったのだろう。少し昨日食べたものがお腹に残っているが、出された料理を無駄にすることはしたくない。

 僕達は一口食べると、そんなことも忘れてしまうほどの味だった。

「お兄ちゃん美味しいね」

「ああ。毎日こんなに温かい料理食べて夢みたいだな」

 本当に今も夢を見ているようだ。騙されてダンジョンに残されたが、フェンリルに出会ってから全てが変わった。

 ポーションも買うことができ、一時的だがマリアも元気になってきた。

 またあのフェンリルに会えたら感謝を伝えたい。

 そんなことを思いながら食べていると、気づいた時にはたくさんあった料理を完食していたようだ。

「たくさん食ったか?」

 僕達の姿を遠くで見ていたオーブナーは食器を片付けにきた。

 フェンリルには感謝を伝えることはできなかったが、今なら彼に伝えることができるだろう。

 会えなくなってからでは遅いからね。

「昨日に引き続き美味しいご飯をありがとうございます」

「美味しかったです!」

『キュ!』

 僕達が感謝の気持ちを伝えると、オーブナーの手は止まり驚いた表情をしていた。

「おっ……おう!」

 その後急いで食器を持って片付けに行った。そんなに忙しいのか、途中足を何かに引っ掛けて躓いていた。

 手伝おうかと聞いたが、子どもは外で元気に遊んで来いと怒られてしまった。

 食事を終えた僕は冒険者ギルドに行くことにした。マリアはその間宿屋のベッドで休んでいる。

 いくら元気になったからといって、魔力喰いによる魔力の消費がなくなったわけではない。

 魔力とともに体力も徐々に消費されていく。

 すでにこの街に移動するだけでも疲労感が溜まっている。彼女にとって休むことは、仕事のようなものだ。

 僕は冒険者ギルドに着くと、まずはこの街の周囲について調べることにした。パーティーの荷物持ちをしていた時からそれは欠かさずやっている。

 遠征先の周囲の環境を知らないと、何かあった時に対処することができないからだ。

 守ってもらう立場だったため、なるべく狙われないようにはしていた。

「んー、この辺には薬草とかが生えているのか」

 どうやら森が近くにあるらしく、そこにはポーションの薬になる薬草が生えているらしい。

 前に住んでいた町では、周囲に薬草が生えていないため、採取依頼はなかった。

 だが、ここの冒険者ギルドでは、討伐依頼の他にも低ランク冒険者向けに採取依頼があった。

「見ない子だけど採取に行くのかな?」

 情報を集めていた僕にギルドスタッフが声をかけてきた。相変わらず冒険者ギルドのスタッフは綺麗な女性が多い。

 僕は頷くと頭の先から足元まで確認している。

「んー、その装備だと少し心許ないかな? 何か魔法とかスキルが強いのかな?」

 きっと弱そうな僕を心配しているのだろう。実際に僕の実力が弱いのは確かだ。この間見たステータスでも、魔法が使えないのに魔力ばかり数値が高かった。

 テイマーや召喚士は魔力を消費するが、ガチャテイマーは魔力を使う機会がない。だから魔力が高くても意味がないのだ。

「あっ、気を悪くしたらごめんね。一応採取でも魔物が出るから自衛手段があった方が良いってことだからね」

「いえいえ、心配して頂いてありがとうございます。ただ、お金もあまりないので……」

 あんなにたくさんあったお金も、今は半分以下になっている。それだけポーションの値段が高かった。

 それに装備を買うお金があったら、生活費の足しにしたい。

「ならこの武器屋に行ってみたらどうかな。安い武器もあるし、武器を借りたら使わなかったら武器を買うよりも安く済むよ」

 どうやら大きな街では武器のレンタルもしているらしい。武器を貸し出して、返って来なかった時はどうしているのだろうか。

 少し疑問に思いながらも、一度武器屋に話を聞いてから採取依頼を受けるか考えることにした。
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