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ストーカーライフ
70.婚約指輪 ※一部ソフィア視点
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俺は冒険者ギルドから出てダンジョンへ向かうと誰かに声をかけられた。
「クロウ大丈夫か?」
声をかけてきたのはクラインだ。いつも存在感を消しているつもりが、なぜかこいつだけは俺に気づいてしまう。
「ああ、すまない」
「おい、泣いているじゃないか!」
どうやら俺は泣いていたようだ。あまりにも冒険者ギルドが居づらく、そのまま出てきてしまった。
「またソフィア達に何かされたんじゃないだろうな?」
「ソフィア?」
「いや、今回はあいつら関係ないぞ」
クラインはどこかほっとしているようだ。それにしてもなぜ今頃あいつらの名前が出てきたのだろうか。
「それでどうしたんだ?」
「少しギルドで嫌なことを言われてな。まぁ、慣れているから大丈夫だ」
「おい、俺が今すぐそいつらを殴ってやる」
なぜかクラインは怒って冒険者ギルドへ向かおうとしていた。冒険者ギルドに行くならついでに、ダンジョンで手に入れたアイテムを渡して貰おうと、俺は鞄からアイテムを取り出した。
「なななな、なんで今ここで!?」
「指輪を渡そうと思ってな」
俺は"命の指輪"を取り出し、クラインの指にそっとつける。一般的にどこにつければ良いかわからないが、よく見かけるのは薬指だった。
だからそこに指輪を入れると、クラインのサイズに合わせて指輪が大きさを変えた。
「他にも……顔赤いけど大丈夫か?」
「いや、急過ぎてびっくりしただけだ」
「ああ、そうか。他にもたくさんあるからギルドマスターにダンジョンから出たと伝えてくれ。アイテムは好きに使ってくれれば良い」
俺はクラインに渡せるだけのダンジョン産アイテムを持たせて向きを変えた。
「おい、次はどこに行くんだよ!」
「ん? 俺はダンジョンにいるぞ!」
どこにいるかと聞かれればダンジョンだ。そこしか今の俺の居場所はないからな。再び付与術をかけて姿を消した。
「急にプロポーズってどういうことだよ……」
クラインは恥ずかしそうにその場で座り込んだが、その時俺はまだ勘違いさせていたことに気づいていなかった。
♢
男達を狩り尽くすと、荷物を持ったクラインがギルドに入ってきた。ギルド内の状況に彼は驚くかと思ったが、頬を赤く染めていた。
同じクロウ好きの彼もあの場にいたら、きっと怒りに狂っていただろう。
「クラインどうしたの? 回復魔法をかけてあげようか?」
さっきまで、回復魔法とメイスでフルスイングしていたモナはクラインが熱を出したのかと心配していた。
「いや、大丈夫だ」
クラインは恥ずかしそうに手で顔を隠した。その瞬間、薬指にはキラリと指輪が付いていた。
――薬指につける指輪
それは人生のパートナーが決まった人達がつけるものだ。ということはクラインに婚約者ができたということになる。
一番のライバルだと思っていたクラインが結婚すれば、あとは私達だけになる。モナとルーダもそれを思ったのか、顔を見合わせて笑っている。
「それでその指輪は誰との指輪なの?」
モナはクラインに確認すると、さらに顔を赤く染めていた。あの女好きで有名だったクラインを射止めた女性なら、私達もクロウを射止めるための勉強になる。
だが聞こえてきた言葉はあの人だった。
「クロウからもらった」
「えっ……」
「もう一度言ってもらってもいいか?」
あのあまり話さないルーダがクラウスに詰め寄った。
「クロウから急にもらったんだ」
クラインは恥ずかしそうに答えた。やはりこいつは私達のライバルだった。しかも、いつのまにかクロウと婚約関係まで結んでいるのだ。
「認めないわ」
モナとルーダも相当ショックだったのか、走るようにその場を後にした。私だってクロウがクラインのものになるなんて認めたくない。
絶対にそんなことはない。
「その結婚私達は認めないんだからね!」
不安に思いながらも私はモナとルーダの後を追った。
この出来事がきっかけで、クラインは男性冒険者から英雄と呼ばれることになったが、女性冒険者達からは嫌われる存在になるとは、クラインはずっと知らなかった。
「クロウ大丈夫か?」
声をかけてきたのはクラインだ。いつも存在感を消しているつもりが、なぜかこいつだけは俺に気づいてしまう。
「ああ、すまない」
「おい、泣いているじゃないか!」
どうやら俺は泣いていたようだ。あまりにも冒険者ギルドが居づらく、そのまま出てきてしまった。
「またソフィア達に何かされたんじゃないだろうな?」
「ソフィア?」
「いや、今回はあいつら関係ないぞ」
クラインはどこかほっとしているようだ。それにしてもなぜ今頃あいつらの名前が出てきたのだろうか。
「それでどうしたんだ?」
「少しギルドで嫌なことを言われてな。まぁ、慣れているから大丈夫だ」
「おい、俺が今すぐそいつらを殴ってやる」
なぜかクラインは怒って冒険者ギルドへ向かおうとしていた。冒険者ギルドに行くならついでに、ダンジョンで手に入れたアイテムを渡して貰おうと、俺は鞄からアイテムを取り出した。
「なななな、なんで今ここで!?」
「指輪を渡そうと思ってな」
俺は"命の指輪"を取り出し、クラインの指にそっとつける。一般的にどこにつければ良いかわからないが、よく見かけるのは薬指だった。
だからそこに指輪を入れると、クラインのサイズに合わせて指輪が大きさを変えた。
「他にも……顔赤いけど大丈夫か?」
「いや、急過ぎてびっくりしただけだ」
「ああ、そうか。他にもたくさんあるからギルドマスターにダンジョンから出たと伝えてくれ。アイテムは好きに使ってくれれば良い」
俺はクラインに渡せるだけのダンジョン産アイテムを持たせて向きを変えた。
「おい、次はどこに行くんだよ!」
「ん? 俺はダンジョンにいるぞ!」
どこにいるかと聞かれればダンジョンだ。そこしか今の俺の居場所はないからな。再び付与術をかけて姿を消した。
「急にプロポーズってどういうことだよ……」
クラインは恥ずかしそうにその場で座り込んだが、その時俺はまだ勘違いさせていたことに気づいていなかった。
♢
男達を狩り尽くすと、荷物を持ったクラインがギルドに入ってきた。ギルド内の状況に彼は驚くかと思ったが、頬を赤く染めていた。
同じクロウ好きの彼もあの場にいたら、きっと怒りに狂っていただろう。
「クラインどうしたの? 回復魔法をかけてあげようか?」
さっきまで、回復魔法とメイスでフルスイングしていたモナはクラインが熱を出したのかと心配していた。
「いや、大丈夫だ」
クラインは恥ずかしそうに手で顔を隠した。その瞬間、薬指にはキラリと指輪が付いていた。
――薬指につける指輪
それは人生のパートナーが決まった人達がつけるものだ。ということはクラインに婚約者ができたということになる。
一番のライバルだと思っていたクラインが結婚すれば、あとは私達だけになる。モナとルーダもそれを思ったのか、顔を見合わせて笑っている。
「それでその指輪は誰との指輪なの?」
モナはクラインに確認すると、さらに顔を赤く染めていた。あの女好きで有名だったクラインを射止めた女性なら、私達もクロウを射止めるための勉強になる。
だが聞こえてきた言葉はあの人だった。
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「えっ……」
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「認めないわ」
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絶対にそんなことはない。
「その結婚私達は認めないんだからね!」
不安に思いながらも私はモナとルーダの後を追った。
この出来事がきっかけで、クラインは男性冒険者から英雄と呼ばれることになったが、女性冒険者達からは嫌われる存在になるとは、クラインはずっと知らなかった。
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