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ストーカーライフ
40. トラップ地獄
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――カチ
「うぉー! お前ら早く逃げろー!」
「ちょ、ボス今度は何したんですか」
「向こうから大量の水が流れて来ていますよ」
後ろから流れてくる水に追いつかれないように、俺は颯爽と逃げ回る。
「ってこっち行き止まりじゃないか!」
「ボスなにやってるんですか!?」
「兄貴あなたは本当に無能ですか!?」
振り返った時にはすでに遅かった。
水は俺達を襲い、そのまま目的地まで流される。
ええ、到着したところはダンジョンの入り口だ。
これでダンジョンの入り口に戻されたのは何回目だろう。
一回目は変な装置を踏んだと思えば床に穴が開いて、二回目は大きな岩に追われて入り口に戻された。
「全てボスのせいですよ!」
「兄貴が変なところを押さなければ何も起きないんですよ!」
「いや……だって変わったところがあったら――」
「だってもこうもないです!」
俺は今回もコボルトとゴブリンに怒られていた。
いかにも押してはダメそうな仕掛けがあれば押したくなるのが男という生き物だ。
「次はもう押さないでくださいよ」
「振りじゃないですからね!」
俺もこんなに怒られるとは思いもしなかった。
「本当は今頃コボルトちゃん達にもふもふされていたはずなのに……」
あれから未だに魔物達にも遭遇できず、トラップに引っ掛かっている。
危険率が低いと聞いたダンジョンのはずなのに危険と常に隣り合わせだ。
「全ては兄貴のせいです!」
「あっ、今声に出てたか?」
「出てました!」
しばらくは俺も静かにしておこう。
――ガチャ!
「ボス!」
「兄貴!」
「いや、今俺は触って……あっ踏んでたわ!」
言い訳になるが自ら触った時と音が違うからな!
そして今回も突然床が光り、気づいた時には入り口に戻されていた。
これが簡単なダンジョンってことは、他のダンジョンに行っていたら今頃死んでいただろう。
「ボスしっかりしてくださいよ!」
「いや、兄貴の頭じゃどうにもならないですよ」
「じゃあ、ボスを置いて――」
俺を置いていくって言い出したらただでは済ませないからな。
「ひぃ!?」
俺の圧にコボルトは気づいたようだ。
「でも兄貴がいると……」
「ここは拙者の上に乗っていけばいけるんじゃないですか!?」
「あー、それいいかもな」
たしかにそれなら俺が勝手に触れることもないし、変にトラップを発動させることはないからな。
手はちゃんとコボルトの耳を掴めば問題ない。
「じゃあ早速拙者の上に乗ってください」
「すまんな」
俺はコボルトの肩に乗り移動することになった。
今度は何もしないようにしっかりと耳を掴んでいたが、少し生えていた毛を掴んでみたら簡単に抜けてしまった。
すぐに捨てたら風に乗って、どこかへ飛んでいったからバレていないはずだ。
「じゃあ行きますよ!」
「いけぇー!」
颯爽と走るコボルトの上は心地よい風と、程よいハラハラ感で楽しく癖になりそうだ。
「兄貴着きましたよ」
「えっ? もう?」
「拙者の上で楽しんでましたね」
気づいた時には次の階層へ向かう扉が目の前に現れた。トラップに引っかからないだけでかなりの時間が短縮できたのだ。
ここまで時短ができるのなら、初めからコボルトの上に乗っておけばよかった。
「やっとコボルトちゃんに会えるんですね」
「お前達頑張ってたもんな!」
「ほとんど兄貴のせいですけどね?」
結構ゴブリンは根に持ちやすい性格なんだろう。
似たもの同士が集まるってよく聞く……俺って根に持ちやすいのか?
「じゃあ、行きますよ」
コボルトが扉を開けて中に入ろうとした瞬間、嫌な気配を感じ取った。
入り口の敷居を跨ごうとしてコボルトが足を上げた。
――ガッチャン!
「痛っ!?」
「へっ?」
「えっ?」
「お前のせいで頭ぶつけて……あっ、頭で押してたわ」
誰もドアのすぐ上にトラップのボタンがあるとは思わないだろう。
本当に引っかかる人なんて俺らみたいに肩車しているやつだけだ。
「ボス何やってるんですか?」
「いや、絶対お前のせいだからな」
「ここまで来たのに……」
「いやああああー!」
足元に魔法陣が浮かび上がると気づいた時にはまた入り口に戻されていた。
「うぉー! お前ら早く逃げろー!」
「ちょ、ボス今度は何したんですか」
「向こうから大量の水が流れて来ていますよ」
後ろから流れてくる水に追いつかれないように、俺は颯爽と逃げ回る。
「ってこっち行き止まりじゃないか!」
「ボスなにやってるんですか!?」
「兄貴あなたは本当に無能ですか!?」
振り返った時にはすでに遅かった。
水は俺達を襲い、そのまま目的地まで流される。
ええ、到着したところはダンジョンの入り口だ。
これでダンジョンの入り口に戻されたのは何回目だろう。
一回目は変な装置を踏んだと思えば床に穴が開いて、二回目は大きな岩に追われて入り口に戻された。
「全てボスのせいですよ!」
「兄貴が変なところを押さなければ何も起きないんですよ!」
「いや……だって変わったところがあったら――」
「だってもこうもないです!」
俺は今回もコボルトとゴブリンに怒られていた。
いかにも押してはダメそうな仕掛けがあれば押したくなるのが男という生き物だ。
「次はもう押さないでくださいよ」
「振りじゃないですからね!」
俺もこんなに怒られるとは思いもしなかった。
「本当は今頃コボルトちゃん達にもふもふされていたはずなのに……」
あれから未だに魔物達にも遭遇できず、トラップに引っ掛かっている。
危険率が低いと聞いたダンジョンのはずなのに危険と常に隣り合わせだ。
「全ては兄貴のせいです!」
「あっ、今声に出てたか?」
「出てました!」
しばらくは俺も静かにしておこう。
――ガチャ!
「ボス!」
「兄貴!」
「いや、今俺は触って……あっ踏んでたわ!」
言い訳になるが自ら触った時と音が違うからな!
そして今回も突然床が光り、気づいた時には入り口に戻されていた。
これが簡単なダンジョンってことは、他のダンジョンに行っていたら今頃死んでいただろう。
「ボスしっかりしてくださいよ!」
「いや、兄貴の頭じゃどうにもならないですよ」
「じゃあ、ボスを置いて――」
俺を置いていくって言い出したらただでは済ませないからな。
「ひぃ!?」
俺の圧にコボルトは気づいたようだ。
「でも兄貴がいると……」
「ここは拙者の上に乗っていけばいけるんじゃないですか!?」
「あー、それいいかもな」
たしかにそれなら俺が勝手に触れることもないし、変にトラップを発動させることはないからな。
手はちゃんとコボルトの耳を掴めば問題ない。
「じゃあ早速拙者の上に乗ってください」
「すまんな」
俺はコボルトの肩に乗り移動することになった。
今度は何もしないようにしっかりと耳を掴んでいたが、少し生えていた毛を掴んでみたら簡単に抜けてしまった。
すぐに捨てたら風に乗って、どこかへ飛んでいったからバレていないはずだ。
「じゃあ行きますよ!」
「いけぇー!」
颯爽と走るコボルトの上は心地よい風と、程よいハラハラ感で楽しく癖になりそうだ。
「兄貴着きましたよ」
「えっ? もう?」
「拙者の上で楽しんでましたね」
気づいた時には次の階層へ向かう扉が目の前に現れた。トラップに引っかからないだけでかなりの時間が短縮できたのだ。
ここまで時短ができるのなら、初めからコボルトの上に乗っておけばよかった。
「やっとコボルトちゃんに会えるんですね」
「お前達頑張ってたもんな!」
「ほとんど兄貴のせいですけどね?」
結構ゴブリンは根に持ちやすい性格なんだろう。
似たもの同士が集まるってよく聞く……俺って根に持ちやすいのか?
「じゃあ、行きますよ」
コボルトが扉を開けて中に入ろうとした瞬間、嫌な気配を感じ取った。
入り口の敷居を跨ごうとしてコボルトが足を上げた。
――ガッチャン!
「痛っ!?」
「へっ?」
「えっ?」
「お前のせいで頭ぶつけて……あっ、頭で押してたわ」
誰もドアのすぐ上にトラップのボタンがあるとは思わないだろう。
本当に引っかかる人なんて俺らみたいに肩車しているやつだけだ。
「ボス何やってるんですか?」
「いや、絶対お前のせいだからな」
「ここまで来たのに……」
「いやああああー!」
足元に魔法陣が浮かび上がると気づいた時にはまた入り口に戻されていた。
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