33 / 70
ストーカーライフ
33. これでも話せます
しおりを挟む
俺はダンジョンの奥に入っていくと突然どこからか声が聞こえてきた。
『ダンジョンにようこそ!』
どこかその声は明るく元気だった。そもそもダンジョンに話す機能ってあったのだろうか。
初めてのダンジョン攻略に戸惑いが隠せない。
「兄貴! ダンジョンって話すのか?」
「それは拙者も思ったぞ!」
「ムッ、オラが先に言ったんですよ」
「いや、拙者は前から――」
ただ俺からしたらコボルトとゴブリンが話すのならダンジョンが話してもおかしくないと思う。
現に言い合いをしている目の前の二人の方が魔物の存在を超えた不思議な存在だ。
「あー、はいはい。同時だったな。うん、同じだ!」
『ダンジョンも話しますよ!』
「ほら、ダンジョンだって言っていることだし……って会話できるのかよ!」
話せることは別におかしいとは思ってなかったが、まさか会話機能までついていたとは……。
壁に立てかけてある松明に火がつく。
ダンジョンの中への道標なのか、ダンジョンは俺達を中に引き込もうとしている。
『ひひひ! それではダンジョン攻略頑張ってください!』
初めての光景に驚いている俺達とは異なり、ダンジョンはどこか嬉しそうだった。
ダンジョンって思ったよりも感情豊からしい。
「じゃあコボルトが先頭で後ろはゴブリンに任せるぞ!」
「えっ? なぜ拙者が先頭なんですか?」
「いや……単純に危な――」
「コボルトさんが頼りになるからですよ! この中で一番強いのは見てわかるじゃないですか!」
おお、さすがゴブリンくん。俺の気持ちを察するのは早い。
だが、すぐにフォローを入れたはずがコボルトはなぜか俺を見ていた。
「この中で強いのはボスじゃ――」
「いや、強いのはお前だ! 俺なんてこんなヒョロヒョロだしな」
俺は服の袖を捲り腕を見せた。
付与術でいつもカバーしているが、力がないのは事実だ。
「ヒョロヒョロなのは関係――」
「あるぞ! なぁ?」
「そうですよ! 兄貴なんて細すぎてすぐにポキッと折れそうですよ? どうせ心もポキッと折れて……」
どうやらゴブリンを甘やかしすぎたようだ。
俺は振り返ってゴブリンの顔を見てニコリと笑う。
「躾が必要なようだな? 後で覚えておけよ?」
「ひぃ!?」
ゴブリンは俺にビクビクしながらも、そのまま俺達はダンジョンの奥へ進んでいく。
その間もダンジョンは相変わらず笑っていた。
♢
「ダンジョンって普通トラップとか魔物が出てくるはずだよな?」
「コボルトちゃんが出てきませんね?」
「ゴブリンも出てこないです」
俺達は奥に進んでもトラップや魔物一体すら出てこなかった。
思っていたダンジョンと全く違うのだ。
予想していたダンジョンといえば魔物が突然現れて襲ってきたり、床が急に無くなったりすることを期待していた。
それが全くなくただの一本道なのだ。
気づけば俺達は大きな扉の前に立っている。
「これが例のボス部屋ってやつか?」
「ボスのご実家ってここなんですか?」
『ははは、やっぱり君達は面白いのね』
いや、ボスはボスでも俺じゃなくてダンジョンのボスだ。流石に俺の実家がここにあったら俺でも流石に遠慮したい。
コボルトがこんなことを言っているからか、ダンジョンはずっと笑っている。
むしろ途中から自然と会話に入ってくるぐらいだ。
「開けるけど準備はいいか?」
俺の問いかけにコボルトとゴブリンは頷いていた。
大きな扉に手をかけた。ここがいよいよボス部屋だ。
「さぁ、出てこい!」
俺はおもいっきり扉を強く押した。
『パンパカパーン! 無名ダンジョンをクリアしました!』
「えっ?」
意気込んで開けた扉から聞こえたのはダンジョン攻略の合図だった。
『ダンジョンにようこそ!』
どこかその声は明るく元気だった。そもそもダンジョンに話す機能ってあったのだろうか。
初めてのダンジョン攻略に戸惑いが隠せない。
「兄貴! ダンジョンって話すのか?」
「それは拙者も思ったぞ!」
「ムッ、オラが先に言ったんですよ」
「いや、拙者は前から――」
ただ俺からしたらコボルトとゴブリンが話すのならダンジョンが話してもおかしくないと思う。
現に言い合いをしている目の前の二人の方が魔物の存在を超えた不思議な存在だ。
「あー、はいはい。同時だったな。うん、同じだ!」
『ダンジョンも話しますよ!』
「ほら、ダンジョンだって言っていることだし……って会話できるのかよ!」
話せることは別におかしいとは思ってなかったが、まさか会話機能までついていたとは……。
壁に立てかけてある松明に火がつく。
ダンジョンの中への道標なのか、ダンジョンは俺達を中に引き込もうとしている。
『ひひひ! それではダンジョン攻略頑張ってください!』
初めての光景に驚いている俺達とは異なり、ダンジョンはどこか嬉しそうだった。
ダンジョンって思ったよりも感情豊からしい。
「じゃあコボルトが先頭で後ろはゴブリンに任せるぞ!」
「えっ? なぜ拙者が先頭なんですか?」
「いや……単純に危な――」
「コボルトさんが頼りになるからですよ! この中で一番強いのは見てわかるじゃないですか!」
おお、さすがゴブリンくん。俺の気持ちを察するのは早い。
だが、すぐにフォローを入れたはずがコボルトはなぜか俺を見ていた。
「この中で強いのはボスじゃ――」
「いや、強いのはお前だ! 俺なんてこんなヒョロヒョロだしな」
俺は服の袖を捲り腕を見せた。
付与術でいつもカバーしているが、力がないのは事実だ。
「ヒョロヒョロなのは関係――」
「あるぞ! なぁ?」
「そうですよ! 兄貴なんて細すぎてすぐにポキッと折れそうですよ? どうせ心もポキッと折れて……」
どうやらゴブリンを甘やかしすぎたようだ。
俺は振り返ってゴブリンの顔を見てニコリと笑う。
「躾が必要なようだな? 後で覚えておけよ?」
「ひぃ!?」
ゴブリンは俺にビクビクしながらも、そのまま俺達はダンジョンの奥へ進んでいく。
その間もダンジョンは相変わらず笑っていた。
♢
「ダンジョンって普通トラップとか魔物が出てくるはずだよな?」
「コボルトちゃんが出てきませんね?」
「ゴブリンも出てこないです」
俺達は奥に進んでもトラップや魔物一体すら出てこなかった。
思っていたダンジョンと全く違うのだ。
予想していたダンジョンといえば魔物が突然現れて襲ってきたり、床が急に無くなったりすることを期待していた。
それが全くなくただの一本道なのだ。
気づけば俺達は大きな扉の前に立っている。
「これが例のボス部屋ってやつか?」
「ボスのご実家ってここなんですか?」
『ははは、やっぱり君達は面白いのね』
いや、ボスはボスでも俺じゃなくてダンジョンのボスだ。流石に俺の実家がここにあったら俺でも流石に遠慮したい。
コボルトがこんなことを言っているからか、ダンジョンはずっと笑っている。
むしろ途中から自然と会話に入ってくるぐらいだ。
「開けるけど準備はいいか?」
俺の問いかけにコボルトとゴブリンは頷いていた。
大きな扉に手をかけた。ここがいよいよボス部屋だ。
「さぁ、出てこい!」
俺はおもいっきり扉を強く押した。
『パンパカパーン! 無名ダンジョンをクリアしました!』
「えっ?」
意気込んで開けた扉から聞こえたのはダンジョン攻略の合図だった。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます
蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜
誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。
スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。
そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。
「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。
スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。
また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。
転生したらついてましたァァァァァ!!!
夢追子
ファンタジー
「女子力なんてくそ喰らえ・・・・・。」
あざと女に恋人を奪われた沢崎直は、交通事故に遭い異世界へと転生を果たす。
だけど、ちょっと待って⁉何か、変なんですけど・・・・・。何かついてるんですけど⁉
消息不明となっていた辺境伯の三男坊として転生した会社員(♀)二十五歳。モブ女。
イケメンになって人生イージーモードかと思いきや苦難の連続にあっぷあっぷの日々。
そんな中、訪れる運命の出会い。
あれ?女性に食指が動かないって、これって最終的にBL!?
予測不能な異世界転生逆転ファンタジーラブコメディ。
「とりあえずがんばってはみます」
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺わかば
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる