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第二章 精霊イベント
88.NPC、決して俺はバカじゃないぞ?
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「それでヴァイトは何であんな実験をしたんだ?」
「いや、この香水と同じにおいがする人を助けたら、みんな胸か股間が痛くなってね」
「へぇー、香水にそんな作用があるんだな」
ユーマは香水をクルクルと回してみていた。
「俺には普通の香水にしか見えないんだけどな」
「鑑定士スキルでやっと何かわかるぐらいだよ。そこにはそんなことを書いてなかったんだよね」
効果に胸や股間が痛くなるとは書いてなかった。だから、今回ユーマを使って実験をした。
「鑑定だと何て書いてあるんだ?」
「魅惑の香水って名前なんだけど、虫や虫系魔物を呼び寄せるらしいよ」
「それなら経験値稼ぎにはいいな」
ユーマはニヤニヤと笑っている。
きっとどこかに吹きつけて、魔物を引き寄せて戦うつもりなんだろう。
さすがにそんなことをして……いや、虫系の魔物って甲殻が硬い種類もいるから防具の素材には便利だ。
ボギーに持っていくと喜びそうだな。
俺達は二人してニヤニヤとしていた。
「あの二人ってやっぱり似ているね」
「愛する二人は似るって言うからね」
「いや……さすがにそれは違うと思うけど、良いのかな?」
「アルは何か心配なの?」
「だって、町の中はあの香水のにおいで溢れているんだよ? 魔物が襲って――」
アルとラブが話していることに興味が出てきた。
「アル、それはどういうことだ?」
俺はアルに近づいて声をかける。
「うん、ヴァイトさんちょっと近いよ」
ついついいつもの癖で顔を近づけてしまった。
興奮すると周りが見えなくなるからな。
「あー、確かにこれは胸か股間が痛くなるのはわかるわ」
隣にいたラブは何か言っていたが、今はそれどころじゃないだろう。
「それでどういうことだ?」
「いや、初めはヴァイトさんに嫌がらせをしたい人がいるのかと思ったんだけど」
「あー、そうなのか?」
俺は振り向いてユーマに確認する。ただ、ユーマもわからないのか首を横に振っていた。
「いやいや、俺に聞かれてもわからんぞ」
「ユーマはバカだからわからないか」
「いやいや、ヴァイトには言われたくないぞ!」
「ああん、また視聴率が上がるわ」
「うん、君達いい加減静かにしてくれないかな?」
冷たい口調で静かにアルが怒っていた。
一瞬にして空気が冷たくなった。
見た目や普段の性格からしてアルが怒ることは滅多にないから、正直言って怖い。
「アルすまない!」
「ごめんね!」
ユーマとラブはすぐに謝っていた。
アルと仲が良い二人はアルが怒ると怖いことを知っていたようだ。
「うるさくしてごめん」
俺もすぐに謝るとアルはニコリと笑った。
ああ、その笑みもどこか怖さが残っている。
「それで話の続きだけど、ヴァイトに嫌がらせするには良い案かもしれないけど、さすがに自分の身まで危険にする必要はないよね?」
「それってどういうことだ?」
「ユーマは本当にバカだね。だって香水を配れるってことはこの町にいるってことでしょ」
確かにアルの言っていることは合っている。
ユーマはバカだよな。
「ひょっとしてヴァイトさんもわかってないですね? はぁー」
アルに大きなため息を吐かれてしまった。
いやいや、今回の香水で俺を陥れたい人がいるかもしれないってことはわかった。
ただ、自分の身に危険を犯してまでってところがわからない。
「良く考えてみてよ。この町にいるのに、その香水が町の中ですごいにおいを発していたらどうなる?」
「虫達が寄ってくるね?」
「ああ、それは俺でもわかるよ」
「いやいや、それはわかってないのと同じだよ。ヴァイトさんは鑑定士スキルを使って何を言ってた?」
「あー、虫や虫系魔物……」
「そういうことか!」
虫を呼び寄せても何も変わらないが、虫系魔物を呼び寄せたら問題だ。
そんな状況でこの町にいるのは、自ら危険な場所にいるようなもの――。
「ひょっとしたらこの状況ってまずいよね?」
「たぶん虫系魔物が集まって来ると――」
「うわぁ!?」
「ぎゃあ!?」
同じタイミングで俺以外の三人がびっくりしていた。
みんな空中を見ているため、HUDシステムが何かあったのだろう。
「緊急強制クエスト〝虫系魔物から町を救え〟が出てきた」
「それってどういうことだ?」
「虫系魔物が町に襲ってくるってことじゃないか? 制限時間は……1時間!?」
どうやら1時間もしないうちに、虫系の魔物が町を襲ってくるってことだろう。
「俺は急いで冒険者ギルドに伝えてくる」
俺はすぐに情報を伝えるために、冒険者ギルドに向かった。
「それにしてもこれって今回のイベントだよね?」
「たぶんそうだけど、何か問題でもあったか?」
「いや、今回のイベントなら精霊が関わってこない? 他の種族サーバーの話だと、精霊でしか魔物を倒せなかったって……」
「ひょっとしたら本当にこの町の危険じゃないの!? この町が無くなったら推し活できないわよ!」
「気にするところそこなの?」
「今すぐにヴァイトファンクラブに連絡するわ!」
「ついにファンクラブまでできてたのか……」
チラッと振り返ると、俺には会話の内容までは聞こえてないが三人も作戦会議をしているようだ。
「いや、この香水と同じにおいがする人を助けたら、みんな胸か股間が痛くなってね」
「へぇー、香水にそんな作用があるんだな」
ユーマは香水をクルクルと回してみていた。
「俺には普通の香水にしか見えないんだけどな」
「鑑定士スキルでやっと何かわかるぐらいだよ。そこにはそんなことを書いてなかったんだよね」
効果に胸や股間が痛くなるとは書いてなかった。だから、今回ユーマを使って実験をした。
「鑑定だと何て書いてあるんだ?」
「魅惑の香水って名前なんだけど、虫や虫系魔物を呼び寄せるらしいよ」
「それなら経験値稼ぎにはいいな」
ユーマはニヤニヤと笑っている。
きっとどこかに吹きつけて、魔物を引き寄せて戦うつもりなんだろう。
さすがにそんなことをして……いや、虫系の魔物って甲殻が硬い種類もいるから防具の素材には便利だ。
ボギーに持っていくと喜びそうだな。
俺達は二人してニヤニヤとしていた。
「あの二人ってやっぱり似ているね」
「愛する二人は似るって言うからね」
「いや……さすがにそれは違うと思うけど、良いのかな?」
「アルは何か心配なの?」
「だって、町の中はあの香水のにおいで溢れているんだよ? 魔物が襲って――」
アルとラブが話していることに興味が出てきた。
「アル、それはどういうことだ?」
俺はアルに近づいて声をかける。
「うん、ヴァイトさんちょっと近いよ」
ついついいつもの癖で顔を近づけてしまった。
興奮すると周りが見えなくなるからな。
「あー、確かにこれは胸か股間が痛くなるのはわかるわ」
隣にいたラブは何か言っていたが、今はそれどころじゃないだろう。
「それでどういうことだ?」
「いや、初めはヴァイトさんに嫌がらせをしたい人がいるのかと思ったんだけど」
「あー、そうなのか?」
俺は振り向いてユーマに確認する。ただ、ユーマもわからないのか首を横に振っていた。
「いやいや、俺に聞かれてもわからんぞ」
「ユーマはバカだからわからないか」
「いやいや、ヴァイトには言われたくないぞ!」
「ああん、また視聴率が上がるわ」
「うん、君達いい加減静かにしてくれないかな?」
冷たい口調で静かにアルが怒っていた。
一瞬にして空気が冷たくなった。
見た目や普段の性格からしてアルが怒ることは滅多にないから、正直言って怖い。
「アルすまない!」
「ごめんね!」
ユーマとラブはすぐに謝っていた。
アルと仲が良い二人はアルが怒ると怖いことを知っていたようだ。
「うるさくしてごめん」
俺もすぐに謝るとアルはニコリと笑った。
ああ、その笑みもどこか怖さが残っている。
「それで話の続きだけど、ヴァイトに嫌がらせするには良い案かもしれないけど、さすがに自分の身まで危険にする必要はないよね?」
「それってどういうことだ?」
「ユーマは本当にバカだね。だって香水を配れるってことはこの町にいるってことでしょ」
確かにアルの言っていることは合っている。
ユーマはバカだよな。
「ひょっとしてヴァイトさんもわかってないですね? はぁー」
アルに大きなため息を吐かれてしまった。
いやいや、今回の香水で俺を陥れたい人がいるかもしれないってことはわかった。
ただ、自分の身に危険を犯してまでってところがわからない。
「良く考えてみてよ。この町にいるのに、その香水が町の中ですごいにおいを発していたらどうなる?」
「虫達が寄ってくるね?」
「ああ、それは俺でもわかるよ」
「いやいや、それはわかってないのと同じだよ。ヴァイトさんは鑑定士スキルを使って何を言ってた?」
「あー、虫や虫系魔物……」
「そういうことか!」
虫を呼び寄せても何も変わらないが、虫系魔物を呼び寄せたら問題だ。
そんな状況でこの町にいるのは、自ら危険な場所にいるようなもの――。
「ひょっとしたらこの状況ってまずいよね?」
「たぶん虫系魔物が集まって来ると――」
「うわぁ!?」
「ぎゃあ!?」
同じタイミングで俺以外の三人がびっくりしていた。
みんな空中を見ているため、HUDシステムが何かあったのだろう。
「緊急強制クエスト〝虫系魔物から町を救え〟が出てきた」
「それってどういうことだ?」
「虫系魔物が町に襲ってくるってことじゃないか? 制限時間は……1時間!?」
どうやら1時間もしないうちに、虫系の魔物が町を襲ってくるってことだろう。
「俺は急いで冒険者ギルドに伝えてくる」
俺はすぐに情報を伝えるために、冒険者ギルドに向かった。
「それにしてもこれって今回のイベントだよね?」
「たぶんそうだけど、何か問題でもあったか?」
「いや、今回のイベントなら精霊が関わってこない? 他の種族サーバーの話だと、精霊でしか魔物を倒せなかったって……」
「ひょっとしたら本当にこの町の危険じゃないの!? この町が無くなったら推し活できないわよ!」
「気にするところそこなの?」
「今すぐにヴァイトファンクラブに連絡するわ!」
「ついにファンクラブまでできてたのか……」
チラッと振り返ると、俺には会話の内容までは聞こえてないが三人も作戦会議をしているようだ。
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