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第二章 精霊イベント
85.NPC、嫌な予感がする
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「なぜワッシばかりこんな目に合わないといけないんだ……」
項垂れているオジサンを俺は知らないふりして紐を引っ張る。
ズルズルと擦られていても、全く気にしないほど落ち込んでいるようだ。
別にオジサンだけに好かれているわけではない。
さっきまで女性達ににおいを嗅がれていたからな。
起きなかったオジサンが悪いだけだ。
それを伝えて面倒なことになるのも嫌だしな。
絶対また臭い消しを浴びてアピールしに行くだろう。
「またたくさん作らないといけなくなったから、レモンを買って帰るぞ」
「ワッシに今度こそモテモテになる臭い消しを作ってくれ!」
「あー、色々試してみないといけないな」
正直モテモテになる臭い消しなんて作れないと思う。
今だってそんなにオジサンが臭いわけではないからね。
ただ、せっかく調香師の職業体験ができるなら、香水が今後も作れるようになったら良いな。
師匠がいるわけではないため、手探りになるだろう。
俺はこの時、臭い消しがとんでもないことになるとは思いもしなかった。
翌日、新しく作った臭い消しを持って冒険者ギルドに行くと、すでにレモンのにおいがそこら中からしていた。
「あっ、ヴァイトくんおはよう」
「おはようございます。風邪ですか?」
冒険者ギルドの職員は布を口元に巻いて、マスクのようにしていた。
「いや、冒険者達が臭い消しをたくさん使っていてね」
「臭い消しですか?」
「ヴァイトくんがみんなに配ったんじゃないの? それでみんな喜んでつけていたわよ?」
「いや、まだ誰にも渡していないですよ。だから、ここに持ってきたんです」
俺は臭い消しをまだ誰にも渡してはいない。
作った時点で量も減っていないため、家族の誰かが渡したわけでもない。
渡すつもりで持ってきた臭い消しをテーブルの上に置く。
「これが臭い消しですか?」
容器に入れたものを職員がにおいを嗅いでいた。
「昨日と同じにおいがしますね」
俺の作った臭い消しは、ふんわりとレモンのにおいが香る程度だ。
「オジサンもそこまでに臭くないですよ?」
オジサンがそこに浸かって体を洗っても、こんなににおいがキツく出ることはないだろう。
「なぁ!? ワッシは臭く……ふわあああああ!」
女性はオジサンに鼻を近づけてにおいを嗅ぐ。
急に顔が近づいてきて、オジサンはその場でオドオドとしていた。
昨日は今よりもすごい状況になっていたとは言えない。
寝ていてよかったと心から思った。
確実にあの世に昇天していたからな。
実際に昨日と同じように作っているが、今日は少しつけて馴染ませてた程度だからレモンのにおいはあまりしない。
本当に臭い消し程度で使っている。
「おっ、ヴァイト来たか!」
訓練場からジェイドがやってきた。
朝活を始めるようになってから、他の冒険者達も朝早くから行動するようになった。
だが、今までこんなに朝早いことはなかった。
何か理由があるのだろうか。
「ジェイド……さん!?」
ただ、それよりも気になることがあった。
「どうしたんだ?」
「すごい虫が寄ってきてないですか?」
周囲にはハエとハチを混ぜたような虫が飛んでいた。
ジェイドも邪魔なのか手で払っている。
「ああ、臭い消しをつけてから虫が寄ってきてな。俺は違う人が寄ってきて欲しいんだがな」
そう言って冒険者ギルドにいる女性に目を向けていた。
冒険者ギルドの職員に気になる人がいるのだろう。
ただ、俺は本当のことを告げないといけない。
「きっとその臭い消しは俺が作ったやつじゃないですよ?」
「へっ……?」
「だって俺が持ってきたのはこれですからね」
俺は持ってきた臭い消しを渡すと、においを嗅いでいた。
「俺のやつと比べてそんなにおいがしないな」
やはり俺の作った臭い消しと違うものをジェイドは持っているようだ。
別に何を使おうが、俺には問題ではない。
ただ、俺には嫌な予感がしていた。
臭い消しは全て俺が作ったやつってなっているからな。
それに周囲から虫達が集まってきている。
さっきから他の冒険者達も姿を見せるが、みんな周囲に虫が飛んでいる。
まるで花になっているような感じだ。
「これをお渡しするので、代わりにその臭い消しをもらって良いですか?」
「ああ、良いぞ!」
俺は臭い消しを交換して、別の人が作ったと思われる臭い消しを手に入れた。
項垂れているオジサンを俺は知らないふりして紐を引っ張る。
ズルズルと擦られていても、全く気にしないほど落ち込んでいるようだ。
別にオジサンだけに好かれているわけではない。
さっきまで女性達ににおいを嗅がれていたからな。
起きなかったオジサンが悪いだけだ。
それを伝えて面倒なことになるのも嫌だしな。
絶対また臭い消しを浴びてアピールしに行くだろう。
「またたくさん作らないといけなくなったから、レモンを買って帰るぞ」
「ワッシに今度こそモテモテになる臭い消しを作ってくれ!」
「あー、色々試してみないといけないな」
正直モテモテになる臭い消しなんて作れないと思う。
今だってそんなにオジサンが臭いわけではないからね。
ただ、せっかく調香師の職業体験ができるなら、香水が今後も作れるようになったら良いな。
師匠がいるわけではないため、手探りになるだろう。
俺はこの時、臭い消しがとんでもないことになるとは思いもしなかった。
翌日、新しく作った臭い消しを持って冒険者ギルドに行くと、すでにレモンのにおいがそこら中からしていた。
「あっ、ヴァイトくんおはよう」
「おはようございます。風邪ですか?」
冒険者ギルドの職員は布を口元に巻いて、マスクのようにしていた。
「いや、冒険者達が臭い消しをたくさん使っていてね」
「臭い消しですか?」
「ヴァイトくんがみんなに配ったんじゃないの? それでみんな喜んでつけていたわよ?」
「いや、まだ誰にも渡していないですよ。だから、ここに持ってきたんです」
俺は臭い消しをまだ誰にも渡してはいない。
作った時点で量も減っていないため、家族の誰かが渡したわけでもない。
渡すつもりで持ってきた臭い消しをテーブルの上に置く。
「これが臭い消しですか?」
容器に入れたものを職員がにおいを嗅いでいた。
「昨日と同じにおいがしますね」
俺の作った臭い消しは、ふんわりとレモンのにおいが香る程度だ。
「オジサンもそこまでに臭くないですよ?」
オジサンがそこに浸かって体を洗っても、こんなににおいがキツく出ることはないだろう。
「なぁ!? ワッシは臭く……ふわあああああ!」
女性はオジサンに鼻を近づけてにおいを嗅ぐ。
急に顔が近づいてきて、オジサンはその場でオドオドとしていた。
昨日は今よりもすごい状況になっていたとは言えない。
寝ていてよかったと心から思った。
確実にあの世に昇天していたからな。
実際に昨日と同じように作っているが、今日は少しつけて馴染ませてた程度だからレモンのにおいはあまりしない。
本当に臭い消し程度で使っている。
「おっ、ヴァイト来たか!」
訓練場からジェイドがやってきた。
朝活を始めるようになってから、他の冒険者達も朝早くから行動するようになった。
だが、今までこんなに朝早いことはなかった。
何か理由があるのだろうか。
「ジェイド……さん!?」
ただ、それよりも気になることがあった。
「どうしたんだ?」
「すごい虫が寄ってきてないですか?」
周囲にはハエとハチを混ぜたような虫が飛んでいた。
ジェイドも邪魔なのか手で払っている。
「ああ、臭い消しをつけてから虫が寄ってきてな。俺は違う人が寄ってきて欲しいんだがな」
そう言って冒険者ギルドにいる女性に目を向けていた。
冒険者ギルドの職員に気になる人がいるのだろう。
ただ、俺は本当のことを告げないといけない。
「きっとその臭い消しは俺が作ったやつじゃないですよ?」
「へっ……?」
「だって俺が持ってきたのはこれですからね」
俺は持ってきた臭い消しを渡すと、においを嗅いでいた。
「俺のやつと比べてそんなにおいがしないな」
やはり俺の作った臭い消しと違うものをジェイドは持っているようだ。
別に何を使おうが、俺には問題ではない。
ただ、俺には嫌な予感がしていた。
臭い消しは全て俺が作ったやつってなっているからな。
それに周囲から虫達が集まってきている。
さっきから他の冒険者達も姿を見せるが、みんな周囲に虫が飛んでいる。
まるで花になっているような感じだ。
「これをお渡しするので、代わりにその臭い消しをもらって良いですか?」
「ああ、良いぞ!」
俺は臭い消しを交換して、別の人が作ったと思われる臭い消しを手に入れた。
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