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第二章 精霊イベント
69.NPC、家族旅行に行く
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後日、バビットを連れて再び隣町に行き、警備隊にヴァイルが家族になることを伝えた。
警備隊側が手続きをして、無事にヴァイルは家族となった。
家畜や捨て子だと思われる子どもの場合、どこの町に滞在するのか、戸籍はどうするのか、様々な審査が必要になる。
ギルドに登録するまで戸籍がないため、誰が保護者になるのかも決める必要があった。
それにバビットが必要で連れてきたのだ。
もちろん俺に抱えられての大移動。
バビットも驚くかと思ったら、意外にもヴァイルのように楽しんでいた。
俺の時も全て知らぬ間にバビットが、手続きをしていた。
すでに俺はギルドに登録しているが、自分が住む町の名前すら知らなかったからな。
今頃はじまりの町と呼ばれていることを知った。
単純にこの国の一番辺境地だから、そう言われているらしい。
それにはじまりの町の裏にある、山を越えて奥に行くと小人族が住む国があると。
まだまだ俺には知らないことがたくさんある。
「今日は店を休みにしているから、この町で遊んでから明日帰ろうか!」
「あしょぶの!?」
バビットの言葉にヴァイルは目を輝かせていた。
そういえば、店を休んだこともなかったし、こうやって家族で出かけることもなかったな。
「どこか家族旅行みたいだね」
「ああ、家族旅行だぞ?」
「へっ!?」
「普通に考えて隣町にこんな短時間で着かないからな」
言われてみたら馬車で半日かかるところを一時間で来ているからね。
しかも、泊まるってなったら、隣の県に旅行に行っている感じなんだろう。
「家族旅行か……いいね!」
俺もみんなで来れて少し楽しくなってきた。
ただ、この間町を色々見て回ったが、あまり変わったものはないイメージだった。
すでに町の中を歩いたからな。
「ここって俺の知らない職業体験はあるのかな?」
「お兄ちゃん……」
「ちゃちく……」
「社畜だな……」
なぜか三人は俺の顔を呆れたような表情で見ていた。
町に来たら新しい職場体験を探す。
これが旅行の醍醐味な気がするが……。
「せっかく旅行に来たら、新しい仕事を――」
「はいはい、お兄ちゃん! 今日は旅行なんだからね?」
「旅行だろ? せっかく新しい体験ができるなら……」
「ちゃちく、きょうはあちょぶの!」
なぜかヴァイルにまで怒られてしまった。
「もうこいつに関しては、根本から染み込んだ社畜になっているから、それすら気づいてないのか」
「ただでさえNPCとして年中無休働いているのにね……」
あれ?
俺って何か間違えているのだろうか。
「とりあえず旅行って言ったら食べ歩きだな!」
「食べ歩き良いですね」
「ごはん!」
俺を置いてバビット達は歩いていく。
旅行って言ったら食べ歩きなのか……。
俺はまた一つ賢くなった気がした。
「まずはこの町と言ったらパンだな!」
「パン?」
「ああ、たくさんのパンが置いてあるのが特徴……」
俺達は一番初めにパン屋に寄ることにした。ただ、目の前にあるのはショーケースに少しずつしかパンが置いてない状況だった。
「パンって朝に食べることが多いから、売り切れているんじゃないのかな?」
「いや、俺達は朝以外にも食べているぞ?」
「あっ、そっか……」
チェリーは基本的に朝しか店でご飯を食べていないため、知らなかったのだろう。
基本的に日本と違ってお米がないため、主食がパンになることが多い。
いつも硬いパンをスープにつけて食べていたからな。
パンが有名ならハード系以外にも、ソフト系のパンもあるのだろう。
ひょっとしてここでパン屋の職場体験ができないか!?
「ちゃちく、かおがこわいよ?」
「ああ、ちょっと考えごとをしていたからね」
あれだけ旅行の時は、職業体験から頭を離そうとしていても自然と考えてしまう。
「いらっしゃい! どのパンを買っていくんだい?」
ついに俺達の番が来たようだ。
いざショーケースに近寄ってよく見ると、ハード系のパンが多そうだ。
「柔らかいパンってないですか?」
「ああ、小麦粉が不足しているからね。加工するのに時間が取れないんだ」
ん?
普通であれば小麦が不足したら、そもそもパンができないって理由ならわかる。
まるで何かの影響で人手が足りないから、小麦粉に加工できないように聞こえてくる。
どこか違和感を感じた。
「何かあったんですか?」
「小麦畑がグリーンリーパーに襲われていて、それに時間がかかってね」
「グリーンリーパー?」
チェリーはHUDシステムで検索をしているようだ。
確か鑑定士の勉強のために読んだ本では、バッタみたいな魔物の絵が描いてあったはず。
「その魔物が小麦畑を荒らすんですか?」
「ああ、そうなんだ。このまま続くとしばらくはパンが食べられなくなるかもしれないねぇ」
どうやら思ったよりも深刻なようだ。
俺が住むはじまりの町も、この町から小麦粉を買っているらしい。
このままだと俺達が住む町まで影響されそう。
「まぁ、そこにも卵を持っている勇者がいるけど、精霊が解決してくれるからね。それまでの辛抱よ」
精霊が何をする存在なのかはわからない。
ただ、魔物のグリーンリーパーを追い払うには、精霊の存在が必要になるのだろう。
「これが精霊イベントなのか……」
チェリーはHUDシステムで、何かを見て頷いていた。
結局、ここに来ても勇者に頼らないといけないのだろう。
俺達って無力だよな……。
「とりあえず小麦畑でも見にいくか?」
「こみゅぎみりゅ!」
パンを買ってから、この町にある小麦畑を見にいくことにした。
警備隊側が手続きをして、無事にヴァイルは家族となった。
家畜や捨て子だと思われる子どもの場合、どこの町に滞在するのか、戸籍はどうするのか、様々な審査が必要になる。
ギルドに登録するまで戸籍がないため、誰が保護者になるのかも決める必要があった。
それにバビットが必要で連れてきたのだ。
もちろん俺に抱えられての大移動。
バビットも驚くかと思ったら、意外にもヴァイルのように楽しんでいた。
俺の時も全て知らぬ間にバビットが、手続きをしていた。
すでに俺はギルドに登録しているが、自分が住む町の名前すら知らなかったからな。
今頃はじまりの町と呼ばれていることを知った。
単純にこの国の一番辺境地だから、そう言われているらしい。
それにはじまりの町の裏にある、山を越えて奥に行くと小人族が住む国があると。
まだまだ俺には知らないことがたくさんある。
「今日は店を休みにしているから、この町で遊んでから明日帰ろうか!」
「あしょぶの!?」
バビットの言葉にヴァイルは目を輝かせていた。
そういえば、店を休んだこともなかったし、こうやって家族で出かけることもなかったな。
「どこか家族旅行みたいだね」
「ああ、家族旅行だぞ?」
「へっ!?」
「普通に考えて隣町にこんな短時間で着かないからな」
言われてみたら馬車で半日かかるところを一時間で来ているからね。
しかも、泊まるってなったら、隣の県に旅行に行っている感じなんだろう。
「家族旅行か……いいね!」
俺もみんなで来れて少し楽しくなってきた。
ただ、この間町を色々見て回ったが、あまり変わったものはないイメージだった。
すでに町の中を歩いたからな。
「ここって俺の知らない職業体験はあるのかな?」
「お兄ちゃん……」
「ちゃちく……」
「社畜だな……」
なぜか三人は俺の顔を呆れたような表情で見ていた。
町に来たら新しい職場体験を探す。
これが旅行の醍醐味な気がするが……。
「せっかく旅行に来たら、新しい仕事を――」
「はいはい、お兄ちゃん! 今日は旅行なんだからね?」
「旅行だろ? せっかく新しい体験ができるなら……」
「ちゃちく、きょうはあちょぶの!」
なぜかヴァイルにまで怒られてしまった。
「もうこいつに関しては、根本から染み込んだ社畜になっているから、それすら気づいてないのか」
「ただでさえNPCとして年中無休働いているのにね……」
あれ?
俺って何か間違えているのだろうか。
「とりあえず旅行って言ったら食べ歩きだな!」
「食べ歩き良いですね」
「ごはん!」
俺を置いてバビット達は歩いていく。
旅行って言ったら食べ歩きなのか……。
俺はまた一つ賢くなった気がした。
「まずはこの町と言ったらパンだな!」
「パン?」
「ああ、たくさんのパンが置いてあるのが特徴……」
俺達は一番初めにパン屋に寄ることにした。ただ、目の前にあるのはショーケースに少しずつしかパンが置いてない状況だった。
「パンって朝に食べることが多いから、売り切れているんじゃないのかな?」
「いや、俺達は朝以外にも食べているぞ?」
「あっ、そっか……」
チェリーは基本的に朝しか店でご飯を食べていないため、知らなかったのだろう。
基本的に日本と違ってお米がないため、主食がパンになることが多い。
いつも硬いパンをスープにつけて食べていたからな。
パンが有名ならハード系以外にも、ソフト系のパンもあるのだろう。
ひょっとしてここでパン屋の職場体験ができないか!?
「ちゃちく、かおがこわいよ?」
「ああ、ちょっと考えごとをしていたからね」
あれだけ旅行の時は、職業体験から頭を離そうとしていても自然と考えてしまう。
「いらっしゃい! どのパンを買っていくんだい?」
ついに俺達の番が来たようだ。
いざショーケースに近寄ってよく見ると、ハード系のパンが多そうだ。
「柔らかいパンってないですか?」
「ああ、小麦粉が不足しているからね。加工するのに時間が取れないんだ」
ん?
普通であれば小麦が不足したら、そもそもパンができないって理由ならわかる。
まるで何かの影響で人手が足りないから、小麦粉に加工できないように聞こえてくる。
どこか違和感を感じた。
「何かあったんですか?」
「小麦畑がグリーンリーパーに襲われていて、それに時間がかかってね」
「グリーンリーパー?」
チェリーはHUDシステムで検索をしているようだ。
確か鑑定士の勉強のために読んだ本では、バッタみたいな魔物の絵が描いてあったはず。
「その魔物が小麦畑を荒らすんですか?」
「ああ、そうなんだ。このまま続くとしばらくはパンが食べられなくなるかもしれないねぇ」
どうやら思ったよりも深刻なようだ。
俺が住むはじまりの町も、この町から小麦粉を買っているらしい。
このままだと俺達が住む町まで影響されそう。
「まぁ、そこにも卵を持っている勇者がいるけど、精霊が解決してくれるからね。それまでの辛抱よ」
精霊が何をする存在なのかはわからない。
ただ、魔物のグリーンリーパーを追い払うには、精霊の存在が必要になるのだろう。
「これが精霊イベントなのか……」
チェリーはHUDシステムで、何かを見て頷いていた。
結局、ここに来ても勇者に頼らないといけないのだろう。
俺達って無力だよな……。
「とりあえず小麦畑でも見にいくか?」
「こみゅぎみりゅ!」
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