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第二章 精霊イベント
65.NPC、虫取り網をもらう
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あれから悪党達は王都に移送されることになった。
そこで犯罪履歴を確認してから、罰せられるらしい。
裁判官のような人が王都にいるのだろう。
いつか王都に行ってみたいと思うが、隣町でも人当たりが冷たいと思った俺が王都に行っても大丈夫なんだろうか。
東京はおっかないと聞くぐらいだ。
きっと王都もおっかないだろう。
しばらくは今の町で楽しく過ごすのが、一番良いような気がする。
「そういえば、卵ってどこでもらえますか?」
町の中で精霊の卵売り場を探したが、どこにも見当たらなかった。
特売品になっているのかと思ったが、そもそも売っていない非売品なんだろうか。
「卵売り場ですか?」
「いえ、精霊の卵なんですが……」
俺の言葉に女性は困ったような顔をしていた。
何か問題でもあったのだろうか。
「すみません。昨日の卵が最後だったんです」
どうやらこの女性は卵を販売している人のようだ。
「もう、入荷はないんですか?」
「はい……」
その言葉を聞いて俺の頭は真っ白になった。
卵をもらうためにこの町に来たのに、俺だけ買えないなんて……。
あの時にチェリーと一緒に買っていれば、こんなことにはならなかっただろう。
あまりのショックに俺はその場でしゃがみ込む。
「きちく……」
獣人の少年が俺の頭を撫でてくれる。
ただ、俺は鬼畜じゃなくて社畜だ。
この際、鬼畜になってこの女性を街頭にぶら下げてやろうか。
いや、そんなことをしたらこの町には二度と来れなくなるだろう。
ひょっとしたら、俺も王都に移送されるかもしれない。
「すみません! そんなに落ち込むとは思わなくて……代わりにこれならあげます」
女性は俺に何かを手渡してきた。
「虫取り網?」
もらったものはどこから見ても虫取り網だ。
小さい時に数回だけ、虫取り網を使って蝉を捕まえに行ったのが懐かしく感じる。
その後に病気が発覚したからな。
「これは精霊を捕まえる時に必要な網なんです」
「うぇ!?」
まさか精霊を捕まえる網が存在しているとは、思いもしなかった。
精霊は全て卵から生まれてくる。だから、卵から育てないとパートナーとして認めてもらえないという認識だ。
それを気にせず精霊を捕まえることができる網って、かなり珍しい気がする。
「本当にもらっても良いのか?」
もしここで返してと言われても、全く返す気はないけどな。
それを感じたのか、女性も苦笑いしている。
「よし、今すぐに精霊を捕まえるぞ!」
「えっ!?」
「きちく! オラもいく!」
どうやら獣人の少年も一緒に虫取りならぬ、妖精取りに行きたいようだ。
せっかく行きたいなら、連れて行くのも良さそうだ。
「一緒に行きたいなら、俺は鬼畜じゃなくて社畜だ!」
「ちゃちく……?」
どこか違うが、今は〝ちゃちく〟でも問題ない。
俺が頷くと獣人の少年は大きく手を伸ばした。
「ちゃちく! オラも行く!」
「よし、行くか!」
どこか弟っぽい少年を肩車して、俺は森に向かうことにした。
「あっ……妖精は半年に一回の満月の日にしか……」
女性は何かを言っていたが、俺は妖精取りにウキウキして何も聞こえなかった。
「そういえば、精霊ってどんな見た目をしている知っているか?」
「しぇいれい? んー、ピカピカドガーン!」
「ピカピカドガーン? それは雷じゃないか?」
「きゃみなりやっ!」
動物は雷が苦手って言うぐらいだから、獣人も雷が嫌いなんだろう。
雷の話をしたら、ベッタリと頭にしがみついてきた。
俺は優しく獣人の背中を撫でる。
「へへへ」
どうやら嬉しいのだろう。
そういえば、まだこの子の名前を聞いていなかったな。
「君の名前は?」
「きゃちく!」
「きゃちく?」
「うん! かっちく!」
何度か名前を聞いていたら、嫌な予感がしてきた。
〝きゃちく〟でも〝かっちく〟でもない。
ある言葉を思い浮かべた。
「家畜なのか……?」
家畜って人間に飼育された動物のことを言うはずだ。
この子は獣人だけど、動物扱いなんだろうか。
人間に育てられたからか?
頭の中で考えても、全く答えが出てこない。
「うん! オラは売られるために生まれたの!」
どういうことだろうか。
俺の中で知っている言葉が違うのかもしれない。
今は精霊を捕まえているところではないだろう。
俺は急いで町に戻って、この子について話を聞くことにした。
そこで犯罪履歴を確認してから、罰せられるらしい。
裁判官のような人が王都にいるのだろう。
いつか王都に行ってみたいと思うが、隣町でも人当たりが冷たいと思った俺が王都に行っても大丈夫なんだろうか。
東京はおっかないと聞くぐらいだ。
きっと王都もおっかないだろう。
しばらくは今の町で楽しく過ごすのが、一番良いような気がする。
「そういえば、卵ってどこでもらえますか?」
町の中で精霊の卵売り場を探したが、どこにも見当たらなかった。
特売品になっているのかと思ったが、そもそも売っていない非売品なんだろうか。
「卵売り場ですか?」
「いえ、精霊の卵なんですが……」
俺の言葉に女性は困ったような顔をしていた。
何か問題でもあったのだろうか。
「すみません。昨日の卵が最後だったんです」
どうやらこの女性は卵を販売している人のようだ。
「もう、入荷はないんですか?」
「はい……」
その言葉を聞いて俺の頭は真っ白になった。
卵をもらうためにこの町に来たのに、俺だけ買えないなんて……。
あの時にチェリーと一緒に買っていれば、こんなことにはならなかっただろう。
あまりのショックに俺はその場でしゃがみ込む。
「きちく……」
獣人の少年が俺の頭を撫でてくれる。
ただ、俺は鬼畜じゃなくて社畜だ。
この際、鬼畜になってこの女性を街頭にぶら下げてやろうか。
いや、そんなことをしたらこの町には二度と来れなくなるだろう。
ひょっとしたら、俺も王都に移送されるかもしれない。
「すみません! そんなに落ち込むとは思わなくて……代わりにこれならあげます」
女性は俺に何かを手渡してきた。
「虫取り網?」
もらったものはどこから見ても虫取り網だ。
小さい時に数回だけ、虫取り網を使って蝉を捕まえに行ったのが懐かしく感じる。
その後に病気が発覚したからな。
「これは精霊を捕まえる時に必要な網なんです」
「うぇ!?」
まさか精霊を捕まえる網が存在しているとは、思いもしなかった。
精霊は全て卵から生まれてくる。だから、卵から育てないとパートナーとして認めてもらえないという認識だ。
それを気にせず精霊を捕まえることができる網って、かなり珍しい気がする。
「本当にもらっても良いのか?」
もしここで返してと言われても、全く返す気はないけどな。
それを感じたのか、女性も苦笑いしている。
「よし、今すぐに精霊を捕まえるぞ!」
「えっ!?」
「きちく! オラもいく!」
どうやら獣人の少年も一緒に虫取りならぬ、妖精取りに行きたいようだ。
せっかく行きたいなら、連れて行くのも良さそうだ。
「一緒に行きたいなら、俺は鬼畜じゃなくて社畜だ!」
「ちゃちく……?」
どこか違うが、今は〝ちゃちく〟でも問題ない。
俺が頷くと獣人の少年は大きく手を伸ばした。
「ちゃちく! オラも行く!」
「よし、行くか!」
どこか弟っぽい少年を肩車して、俺は森に向かうことにした。
「あっ……妖精は半年に一回の満月の日にしか……」
女性は何かを言っていたが、俺は妖精取りにウキウキして何も聞こえなかった。
「そういえば、精霊ってどんな見た目をしている知っているか?」
「しぇいれい? んー、ピカピカドガーン!」
「ピカピカドガーン? それは雷じゃないか?」
「きゃみなりやっ!」
動物は雷が苦手って言うぐらいだから、獣人も雷が嫌いなんだろう。
雷の話をしたら、ベッタリと頭にしがみついてきた。
俺は優しく獣人の背中を撫でる。
「へへへ」
どうやら嬉しいのだろう。
そういえば、まだこの子の名前を聞いていなかったな。
「君の名前は?」
「きゃちく!」
「きゃちく?」
「うん! かっちく!」
何度か名前を聞いていたら、嫌な予感がしてきた。
〝きゃちく〟でも〝かっちく〟でもない。
ある言葉を思い浮かべた。
「家畜なのか……?」
家畜って人間に飼育された動物のことを言うはずだ。
この子は獣人だけど、動物扱いなんだろうか。
人間に育てられたからか?
頭の中で考えても、全く答えが出てこない。
「うん! オラは売られるために生まれたの!」
どういうことだろうか。
俺の中で知っている言葉が違うのかもしれない。
今は精霊を捕まえているところではないだろう。
俺は急いで町に戻って、この子について話を聞くことにした。
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