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第二章 精霊イベント
62.NPC、悪党を捕獲する
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「本当に頑固だな!」
「それを言ったらお兄ちゃんもでしょ!」
俺達はしばらく兄妹喧嘩をしていた。
「もう何というのか……」
「似たもの同士だね……」
お互い言いたいことを言ったらスッキリした。
チェリーと初めて喧嘩をしたが、初めてのような気がしなかった。
どこか前世の妹である咲良と言い合いをしている時と似ていたような気がする。
咲良も俺と似て頑固だったし、言いたいことを言ったら、お互いにスッキリして忘れるような子だ。
妹との喧嘩ってほとんどがこんな感じなんだろうか。
「ってかお兄ちゃん……?」
「なに?」
「悪党達がいないんだけど……」
「へっ!?」
気づいた時には悪党のボスが倒れており、その他にいた人達はアジトから消えていた。
HUDシステムに映るマーキングを見ると、どこかへ逃げているのがわかる。
「まだ森の入り口だけどどうする?」
「捕まえた方が良いんじゃないかな」
「じゃあ、行こうか」
俺はボスを紐で縛り上げて、洞窟前にいた男達と一緒に回収した。
「助けてくれええええ!」
再び目を覚ましたハッヤイーナは暴れていた。
「よっ、また起きたんだな」
「お前……ボスに何をしたんだ!」
「何をしたって……何かしたか?」
「いや、私も覚えてないから……」
俺達はいつボスを倒したのかわからない。
ひょっとしたら呪術師のスキルと関係しているのだろうか。
とりあえず、ボスを含めて男三人をハッヤイーナの隣に吊し上げる。
「おい、ボス起きてくれ!」
ハッヤイーナは隣で気絶しているボスを必死に起こそうとするが、全く起きる様子はないようだ。
これで準備は整った。
「よし、残りの奴らも追いかけるぞ」
「また鬼ごっこなの!?」
「よーい、ドン!」
俺達は逃げ出した残りの残党を追いかける。
久しぶりにチェリーと鬼ごっこをしてみたが、VITの必要性がわかっている影響かだいぶ速くなっていた。
チェリーは他の勇者と違って、魔物を倒しても職業のレベルが上がらないらしい。
その辺は社畜の特徴なのかもしれない。
敵を倒して社畜レベルが上がるとも思わないからな。
「おっ、あそこにいたぞ!」
「私が先に捕まえるんだからね」
そう言ってチェリーはさらにスピードを上げた。
♢
俺達は全てがうまくいくと思っていた。
あんな化け物がこんな辺境地にいるとは思わない。
初めは何か震えがする。
ひょっとしたら風邪を引いたのかと思う程度だった。だが、しばらくすると見知らぬ男と女がアジトの中で喧嘩をしていた。
あいつらはバカなのかと思ったが、いつの間にか入ってくるような強者だ。
いつから来たのかわからないほど、こいつらは音がしなかった。
盗賊スキルでも感知できないほど、奴らは隠密行動に長けている。
その後は一瞬だった。
ボスは一撃でやられるし、逃げたら外には仲間達が吊し上げられていた。
助ける時間もなく、俺は急いで逃げだした。
「うわあああああ!」
どこからか仲間の叫び声が聞こえてくる。
俺達はバラバラに分かれて、はじまりの町で集合することにしていた。だが、聞こえてくるのは仲間達の悲鳴ばかり。
ひょっとしたら俺だけしか逃げ切れていないのかもしれない。
そんなことを思っていたら、足音……いや、タイガー型の魔物の足音がした。
人間であれば土を蹴るような音がする。だが、タイガー型の魔物は浮いている時間が長いような走りをする。
俺は短剣を構えて逃げる隙間を見つける。
あいつらに足の速さで勝てるはずがないからな。
だが、追いかけてきたのはタイガー型の魔物ではなかった。
「みぃーつけた」
隣にはニヤリと笑うあの男がいた。
「うわあああああ!」
きっと仲間達が捕まった時の叫び声ではなく、いきなり人間が出てきた時の叫び声だった。
俺は驚きながらも短剣を突き出す。
「おっと!」
男は簡単に避けると、俺の腕を捕まえようとする。
「お兄ちゃん! 私の方が先だからね!」
気づいた時には俺の背後に女がいた。
後ろから骨が折れるような力でタッチされた。
どうやら俺は捕まった……いや、骨折したようだ。
こいつらは俺らを使って何をやっているのだろうか……。
ああ、頭で意識が薄れてきた。
「それを言ったらお兄ちゃんもでしょ!」
俺達はしばらく兄妹喧嘩をしていた。
「もう何というのか……」
「似たもの同士だね……」
お互い言いたいことを言ったらスッキリした。
チェリーと初めて喧嘩をしたが、初めてのような気がしなかった。
どこか前世の妹である咲良と言い合いをしている時と似ていたような気がする。
咲良も俺と似て頑固だったし、言いたいことを言ったら、お互いにスッキリして忘れるような子だ。
妹との喧嘩ってほとんどがこんな感じなんだろうか。
「ってかお兄ちゃん……?」
「なに?」
「悪党達がいないんだけど……」
「へっ!?」
気づいた時には悪党のボスが倒れており、その他にいた人達はアジトから消えていた。
HUDシステムに映るマーキングを見ると、どこかへ逃げているのがわかる。
「まだ森の入り口だけどどうする?」
「捕まえた方が良いんじゃないかな」
「じゃあ、行こうか」
俺はボスを紐で縛り上げて、洞窟前にいた男達と一緒に回収した。
「助けてくれええええ!」
再び目を覚ましたハッヤイーナは暴れていた。
「よっ、また起きたんだな」
「お前……ボスに何をしたんだ!」
「何をしたって……何かしたか?」
「いや、私も覚えてないから……」
俺達はいつボスを倒したのかわからない。
ひょっとしたら呪術師のスキルと関係しているのだろうか。
とりあえず、ボスを含めて男三人をハッヤイーナの隣に吊し上げる。
「おい、ボス起きてくれ!」
ハッヤイーナは隣で気絶しているボスを必死に起こそうとするが、全く起きる様子はないようだ。
これで準備は整った。
「よし、残りの奴らも追いかけるぞ」
「また鬼ごっこなの!?」
「よーい、ドン!」
俺達は逃げ出した残りの残党を追いかける。
久しぶりにチェリーと鬼ごっこをしてみたが、VITの必要性がわかっている影響かだいぶ速くなっていた。
チェリーは他の勇者と違って、魔物を倒しても職業のレベルが上がらないらしい。
その辺は社畜の特徴なのかもしれない。
敵を倒して社畜レベルが上がるとも思わないからな。
「おっ、あそこにいたぞ!」
「私が先に捕まえるんだからね」
そう言ってチェリーはさらにスピードを上げた。
♢
俺達は全てがうまくいくと思っていた。
あんな化け物がこんな辺境地にいるとは思わない。
初めは何か震えがする。
ひょっとしたら風邪を引いたのかと思う程度だった。だが、しばらくすると見知らぬ男と女がアジトの中で喧嘩をしていた。
あいつらはバカなのかと思ったが、いつの間にか入ってくるような強者だ。
いつから来たのかわからないほど、こいつらは音がしなかった。
盗賊スキルでも感知できないほど、奴らは隠密行動に長けている。
その後は一瞬だった。
ボスは一撃でやられるし、逃げたら外には仲間達が吊し上げられていた。
助ける時間もなく、俺は急いで逃げだした。
「うわあああああ!」
どこからか仲間の叫び声が聞こえてくる。
俺達はバラバラに分かれて、はじまりの町で集合することにしていた。だが、聞こえてくるのは仲間達の悲鳴ばかり。
ひょっとしたら俺だけしか逃げ切れていないのかもしれない。
そんなことを思っていたら、足音……いや、タイガー型の魔物の足音がした。
人間であれば土を蹴るような音がする。だが、タイガー型の魔物は浮いている時間が長いような走りをする。
俺は短剣を構えて逃げる隙間を見つける。
あいつらに足の速さで勝てるはずがないからな。
だが、追いかけてきたのはタイガー型の魔物ではなかった。
「みぃーつけた」
隣にはニヤリと笑うあの男がいた。
「うわあああああ!」
きっと仲間達が捕まった時の叫び声ではなく、いきなり人間が出てきた時の叫び声だった。
俺は驚きながらも短剣を突き出す。
「おっと!」
男は簡単に避けると、俺の腕を捕まえようとする。
「お兄ちゃん! 私の方が先だからね!」
気づいた時には俺の背後に女がいた。
後ろから骨が折れるような力でタッチされた。
どうやら俺は捕まった……いや、骨折したようだ。
こいつらは俺らを使って何をやっているのだろうか……。
ああ、頭で意識が薄れてきた。
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