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第二章 精霊イベント

60.NPC、性格が変わる

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 声をかけてきたのは子どもの中でも、比較的大きな女の子だ。

 きっと彼女が小さな子達を気にかけていたのだろう。

「誘拐っていつから?」

「ここにきたのは二週間ほど前です。私は近くのセカンド町に住んでました」

 二週間程度ってことは、勇者達が町にいる時期と同じぐらいだろう。

 それにしてもセカンド町とは隣町のことを言うのだろうか。

 俺の住んでいる町すら、名前を聞いたことがないため、どこの町なのかも分かりづらい。

――ぐぅー!

 そんな中、どこかからお腹の音が鳴っていた。

 きっと今まであまり食べさせてもらえなかったのだろう。

 身なりもボロボロだし、ところどころ出血している箇所もある。

「ちょっと集まってきて」

 俺の言葉に警戒しながらも、子ども達は集まってきた。

 回復魔法をかけて傷を治した。

 その後、解体師スキルで汚れを落としていく。

 綺麗になっていく自分達の姿に、みんな喜んでいる。

「しぃー! 静かにしないとバレるからね」

 俺の言葉に子ども達は小さく頷く。

 みんな良い子のようだ。

 それに種族もバラバラなのに仲が良さそう。

「それじゃあ、お家に帰ろうか」

 このままアジトのボスを捕まえるのが一番良いのだろう。ただ、子ども達を危険な目に遭わすほどのことではない。

 俺は警察官でもないからな。

 モットーは〝いのちだいじに〟だ!

 子ども達の命を守るのが、今の俺の役目だ。

 ただ、そのままやつらを見逃すのも嫌な俺は、使ったことのない呪術師スキルを使うことにした。

「ひひひ」

「おおお兄さん!?」

 突然の変化に子ども達は戸惑っている。

 俺は静かにするように伝えると、ボスがいる部屋まで向かった。


「ははは、これだけ金と子どもがいたらこの町には用はないだろう」

「ボス、次はどこの町に行きますか?」

「この際、王都まで行くのはどうでしょう? 奴隷商人にも会わないといけませんし」

 王都……?

 それは東京都みたいなところだろうか。

 同じようなニュアンスを感じる。

「ああ、そうだな」

 どうやらあの子ども達は奴隷商人に売られる予定らしい。

 この世界には奴隷がいるのだろう。

 俺を助けてくれたのがバビットで良かったと改めて思う。

 俺はスキルを発動させた。

「なっ……なんだ!?」

 突然、男達が震えだした。

 このスキルが何かはわからないが、前にジェイドが呪術師のスキルは呪う対象をずっとマーキングすることができると言っていた。

 ええ、俺はエリックにマーキングされているらしい。

 俺が近づくと裏エリックだった場合、逃げていくのはそういう仕組みのようだ。

 よく一緒にいるジェイドだから、その変化に気づいたのだろう。

 急に目の前にHUDシステムが現れて、地図と名前が表示された。

 きっとあいつらの名前なんだろう。

 これで俺の役目も終わりだ。

 俺は急いで子ども達の元へ戻る。


――ガチャ!

「お兄さん?」

「ふへへへ」

「ヒイイィィィ!」

 どうやら呪術師の感覚が抜けなかったのだろう。

 子ども達を驚かせてしまった。

 強制的に意識を戻し、問題ないかのように微笑む。

「こっ……怖いよ……」

 あれ……?

 呪術師の顔はとっくに投げ捨てたはずだが、そんなに俺の顔が怖いのか。

「本当にお兄さんですよね?」

「ああ、俺だぞ?」

 どうやら急に人が変わったような感じがして怖かったのだろう。

 狂戦士と呪術師は性格や行動が全く別人格のように変わるからな。

 戦いの場面を見たら、もっと引かれそうな気がする。

「急いで帰るぞ!」

 俺は子ども達を抱きかかえて、悪党のアジトを後にした。

 子ども達は全員合わせて五人。

 肩車するのに一人。

 両脇に抱える二人。

 そして、残りの二人は縄で体の前後に結びつけて移動する。

 少し走っていると、突然HUDシステムが反応した。

「保育士……?」

 どうやら子ども達と遊ぶと一般職である保育士のデイリークエストが出現したようだ。

 呪術師同様、師匠に指導されずに出てくるデイリークエストに驚きだが、色々な才能があるのだろう。

 まぁ、俺自身子どもは好きな方だったからな。

 そんなことを思いながら、俺は隣町に向かった。
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