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第二章 精霊イベント

56.NPC、卵の存在を知る

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 チェリーが社畜に転職すると、俺は再びゆったりとした時間を過ごしていた。

 以前のようにデイリークエストのクリア数が縛られているわけでもないため、社畜となったチェリーを俺は手伝うことはない。

 あれでも立派な一人前の社畜だ。

 今日も必死に冒険者ギルドに朝から行っていた。

 朝活は社畜にとってボーナスタイムみたいなものだからな。

 寝る時間を削って、朝早く起きればさらに時間がたくさんある。

「なぁ、ヴァイト?」

「どうしました?」

 ボーッと外を眺めている俺にバビットが声をかけてきた。

「最近勇者達が卵を持っているが何かわかるか?」

 少しずつ隣町に行っていた勇者達が帰ってきた。

 その手には何か大きな卵を持っている。

「目玉焼きでも作るんですかね?」

「さすがに……いや、あれだけ大きいとうまいのか?」

 俺達はあの卵をどうやって調理するか考えていた。

 それだけ仕込みが終わったら暇になってしまう。

 そんな中、店の扉が開いた。

「ヴァイト! 帰ってきたぜー!」

 そこにはユーマ達の姿があった。

 隣町に出かけて、二週間程度しか経っていないが、どこか強くなったように感じる。

「そんなに急いでどこに……あっ……」

「二人とも歩くのが――」

「アルはこっち!」

 続いてラブとアルも帰ってきていたが、ラブはアルの手を取り店の外に隠れた。

 側から見てたら、店の中を隠れて覗く怪しい奴らにしか見えないだろう。

「おお、おかえり!」

「なっ、俺が帰ってきたのに反応薄っ!?」

 反応が薄いって言われても、ついこの間離れたばかりだしな。

 俺は弟子兼妹であるチェリーの転職クエストのクリアのことで頭いっぱいになっていた。

 ユーマ達の存在自体、頭の片隅にもなかったのが本音だ。

「この間はあんなにうえんうえんしていたのに――」

「それ以上言ったら怒るぞ?」

 俺はすぐにユーマの口を手で塞ぐ。

「きゃああああ! そこは唇で塞ぐのが鉄板でしょ!」

「ラブ……さすがにそれは運営が許さないよ? BLゲームじゃないからね?」

「もうこの際力づくでBLにしちぇばいいのよ!」

 ラブとアルは外で楽しくはしゃいでいるようだ。

 それにしてもBLってなんだ?

 また勇者達しか知らない言葉だろうか。

 俺が二人の会話を聞いていると、ユーマが俺の腕を何回も叩いていた。

 どこか顔色がおかしい気がする。

 手を離すと、ユーマは大きく息を吸った。

「俺を殺す気か!?」

 どうやら口を塞いだときに、一緒に鼻も押さえて息ができなかったようだ。だが、その目はどこかキラキラとしていた。

 ああ、これがドMってやつだろう。

 苦しいことを喜ぶ奴が一定数いるって聞いたことがある。

 看護師同士の話を聞いている時に、ドMの彼氏に困っているという相談話を聞いたことがある。

「なあなあ、この間よりも強くなってないか? 近づいてくるところ見えなかったぞ!」

 ああ、こいつはドMじゃなくて、ただのバカだった。

 きっと戦うことしか考えてないのだろう。

「そういえば、お前達も卵をもらったのか?」

「卵……? ああ、これのことだろ?」

 ユーマはインベントリから卵を取り出した。

 赤色の卵で、どことなくユーマっぽい色をしている。

「ラブとアルももらったの?」

 外にいたラブとアルも店に入ってきて、卵を見せてくれた。

 ラブは紫色、アルは黄色の卵だ。

 人によって色の違いがあるのだろうか。

「俺達のパートナーになる精霊が生まれる卵なんだ」

「精霊?」

「ああ、隣町でもらえたんだ」

 隣町で精霊の卵が貰える。

 その情報は俺にとって有益だった。

 卵から生まれてくることも不思議だが、そんな特売みたいな感じで手に入るものなんだろうか。

 それなら俺も卵が欲しいな。

 俺はバビットの方を見ると頷いていた。

 これはもらいに行っても良いってことだろう。

「ちょっと出かけてくる!」

 俺は急いで隣町に行くことにした。

 このままだと俺だけ仲間はずれになっちゃうからな。

「あっ、精霊の卵は勇者にしか……」

「行っちゃったね」

「せっかく帰ってきたのに、ヴァイトがいなかったら撮影できないじゃん」

「ラブは何のためにゲームをやってるの?」

「推し活!」

 急いで店を出た俺は、何を話していたのか聞いていなかった。


 門に向かっていると、ちょうど生産街から帰ってきたチェリーがいた。

「あっ、お兄ちゃん……」

「隣町で精霊の卵が貰えるらしいぞ!」

「精霊の卵……? あっ、イベントのやつですか?」

「イベントなんてやっているのか? それならすぐに行かないともらえなくなっちゃうな」

 チェリーはどこでやっているのか知っているらしい。

 俺はチェリーをその場で抱える。

 せっかくなら二人で行って、二つもらってきた方が良いからな。

「私、前より足が速くなったんだけど……」

「俺よりは遅いだろ?」

「あっ……はい」

 チェリーは諦めがついたのか、俺にそのまま運ばれる形で隣町に行くことになった。

 まだ見ぬ精霊に俺はウキウキとしていた。

───────────────────
【あとがき】

 今日もたくさん更新しますよおおお!

 コメントお待ちしております(*´꒳`*)

 今日の投稿はここまでです。

 明日から話数を少なめに調整していきます!

 ホトランは少し残念でしたが、引き続き読んで頂けると嬉しいです!
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