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第七章 天空の覇者編
EP200 天空の覇者 <☆>
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「あ、あの・・・雷夜・・・なのか?」
<はい。あなた様の忠実な僕、雷夜です。
・・・ご用件は何でしょうか?何なりとお申し付け下さい。>
その美しい白竜は、確かに自分を雷夜だと言った。
征夜と彼女は面識が有るので良いが、他の二人は突如現れた巨大な竜に身構えている。
「二人とも大丈夫だよ!彼女は味方だ!」
「そ、そうなんですね・・・。」
「ビビったぁ・・・新手かと思ったぜ・・・。」
<別に、あなたの味方だとは言ってませんが。>
「は?」
シンは彼女の言葉を警戒して即座に銃を構えたが、征夜はそれを制して雷夜との会話を続ける。
「雷夜!アイツを!あの竜を倒してくれ!!!」
<御意。速やかに撃破いたします。
・・・もう少し、下がって頂けますか?近くに居ると危険です。>
「分かった!」
征夜たちは雷夜の言葉に従って、岩陰に退避した。
彼らが十分に後ろへ下がった事を確認した彼女は、上空を旋回する巨竜を見上げて睨み付ける。
<花様を傷付けた罪・・・死を以って償いなさい・・・!>
彼女はそれだけ言うと勢いよく上昇し、竜に向けて立ち向かう――。
「嘘だろ・・・あの竜が・・・手も足も・・・!」
雷夜は強かった。圧倒的に強かった。
轟雷竜の放つ稲妻を紙一重で避けながら、自分の口から放つ稲妻は確実に直撃させる。
轟雷竜に比べても遥かに巨大な体なのに、一挙一動が凄まじい速さだ。
彼女の体がうねるたびに、雲海を消し飛ばすほどの疾風が吹き荒れる。
<これで終わりです・・・!>
雷夜は頭頂部に生えた角を金色に光らせながら、咆哮と共に巨大な稲妻を口から発射した。
轟雷竜もまた、それに対抗して全身全霊の雷撃を放った。
だが、空中でぶつかり合った両者の攻撃は、雷夜の方が遥かに威力が高かった――。
ギュオォォォンッッッ!!!!!
「す、凄い・・・!」
手も足も出せずに蹂躙された轟雷竜は、驚くほど呆気なく死んだ。
自分の専売特許である”稲妻”を、上から叩き潰されたのだ。まさに、”完全敗北”と言って良いだろう。
<征夜様、ご命令を遂行致しました。次はどうすれば?>
「う~ん・・・今は良いかな。助かったよ!ありがとう!」
<こちらこそ、呼んで頂けて嬉しかったです。
また何かご用が有れば、何なりとお申し付けください。・・・それでは、失礼いたします。>
雷夜はどこか嬉しそうに会釈すると、遥か天空に向けて勢いよく飛び立った。
「雷夜!危ないッ!!!」
<え?>
「きゃあぁッ!?」
青空を優雅に飛んでいた雷夜は、突如として”紫の網”に引っ掛かった。
何らかの魔法が掛けられたのだろう。竜への変身が解けた雷夜は、若い女性の姿になってしまう。
「女の人!?・・・ヤバい!あのままじゃ落下死する!」
「急げ!受け止めないと死ぬぞ!!!」
「ま、魔法で受け止めないと!間に合わないです!!!」
三人は、不意打ちで撃墜された雷夜を受け止めようと、慌てふためいた。
だが慌てているだけでは、彼女を救える筈もない。
「きゃあぁぁぁッッッ!!!!!」
絶叫と共に落下を続ける雷夜は、谷の向こう側に消えた。
結局、彼女が落下するまでに、三人の助けは間に合わなかった――。
「早く病院に連れて行かなきゃ!!!」
「クソッ!しょうがねぇな!」
「待ってください!あんな場所に網が有るなんて、何かが変です!きっと、近くに敵が!!!」
パチパチパチパチパチ・・・!
「誰だ!?」
征夜たちの背後から、まばらな拍手が聞こえて来る。
振り向いた彼の瞳に飛び込んできたのは、あの男だった――。
「”ラドックス”!!!・・・と?」
そこにはラドックスが居た。だが、彼の他にもう一人、端正な顔立ちをした男が居る。
年齢は20代後半だろうか。透き通るような目をしており、どこか浮世離れした風貌だ。
「君たちが”最新の勇者”か。・・・なるほど、能力頼りだった”他の雑魚ども”とは違うらしいな。その少女には、特に光る物を感じる。」
「アンタ・・・誰だ?」
征夜は本能的に察する。この男は普通の人間ではない。
立ち振る舞いや雰囲気もそうだが、何より征夜たちの事を”勇者”だと知っている事が異常だ。
その口ぶりから察するに、”以前の勇者たち”の事も知っているようにも思える。
征夜の問いかけに対して、男はゆっくりと口を開いた――。
「申し遅れた。我が名はグランディエル2世・・・君たち人間が、”魔王”と呼ぶ存在だ。」
<はい。あなた様の忠実な僕、雷夜です。
・・・ご用件は何でしょうか?何なりとお申し付け下さい。>
その美しい白竜は、確かに自分を雷夜だと言った。
征夜と彼女は面識が有るので良いが、他の二人は突如現れた巨大な竜に身構えている。
「二人とも大丈夫だよ!彼女は味方だ!」
「そ、そうなんですね・・・。」
「ビビったぁ・・・新手かと思ったぜ・・・。」
<別に、あなたの味方だとは言ってませんが。>
「は?」
シンは彼女の言葉を警戒して即座に銃を構えたが、征夜はそれを制して雷夜との会話を続ける。
「雷夜!アイツを!あの竜を倒してくれ!!!」
<御意。速やかに撃破いたします。
・・・もう少し、下がって頂けますか?近くに居ると危険です。>
「分かった!」
征夜たちは雷夜の言葉に従って、岩陰に退避した。
彼らが十分に後ろへ下がった事を確認した彼女は、上空を旋回する巨竜を見上げて睨み付ける。
<花様を傷付けた罪・・・死を以って償いなさい・・・!>
彼女はそれだけ言うと勢いよく上昇し、竜に向けて立ち向かう――。
「嘘だろ・・・あの竜が・・・手も足も・・・!」
雷夜は強かった。圧倒的に強かった。
轟雷竜の放つ稲妻を紙一重で避けながら、自分の口から放つ稲妻は確実に直撃させる。
轟雷竜に比べても遥かに巨大な体なのに、一挙一動が凄まじい速さだ。
彼女の体がうねるたびに、雲海を消し飛ばすほどの疾風が吹き荒れる。
<これで終わりです・・・!>
雷夜は頭頂部に生えた角を金色に光らせながら、咆哮と共に巨大な稲妻を口から発射した。
轟雷竜もまた、それに対抗して全身全霊の雷撃を放った。
だが、空中でぶつかり合った両者の攻撃は、雷夜の方が遥かに威力が高かった――。
ギュオォォォンッッッ!!!!!
「す、凄い・・・!」
手も足も出せずに蹂躙された轟雷竜は、驚くほど呆気なく死んだ。
自分の専売特許である”稲妻”を、上から叩き潰されたのだ。まさに、”完全敗北”と言って良いだろう。
<征夜様、ご命令を遂行致しました。次はどうすれば?>
「う~ん・・・今は良いかな。助かったよ!ありがとう!」
<こちらこそ、呼んで頂けて嬉しかったです。
また何かご用が有れば、何なりとお申し付けください。・・・それでは、失礼いたします。>
雷夜はどこか嬉しそうに会釈すると、遥か天空に向けて勢いよく飛び立った。
「雷夜!危ないッ!!!」
<え?>
「きゃあぁッ!?」
青空を優雅に飛んでいた雷夜は、突如として”紫の網”に引っ掛かった。
何らかの魔法が掛けられたのだろう。竜への変身が解けた雷夜は、若い女性の姿になってしまう。
「女の人!?・・・ヤバい!あのままじゃ落下死する!」
「急げ!受け止めないと死ぬぞ!!!」
「ま、魔法で受け止めないと!間に合わないです!!!」
三人は、不意打ちで撃墜された雷夜を受け止めようと、慌てふためいた。
だが慌てているだけでは、彼女を救える筈もない。
「きゃあぁぁぁッッッ!!!!!」
絶叫と共に落下を続ける雷夜は、谷の向こう側に消えた。
結局、彼女が落下するまでに、三人の助けは間に合わなかった――。
「早く病院に連れて行かなきゃ!!!」
「クソッ!しょうがねぇな!」
「待ってください!あんな場所に網が有るなんて、何かが変です!きっと、近くに敵が!!!」
パチパチパチパチパチ・・・!
「誰だ!?」
征夜たちの背後から、まばらな拍手が聞こえて来る。
振り向いた彼の瞳に飛び込んできたのは、あの男だった――。
「”ラドックス”!!!・・・と?」
そこにはラドックスが居た。だが、彼の他にもう一人、端正な顔立ちをした男が居る。
年齢は20代後半だろうか。透き通るような目をしており、どこか浮世離れした風貌だ。
「君たちが”最新の勇者”か。・・・なるほど、能力頼りだった”他の雑魚ども”とは違うらしいな。その少女には、特に光る物を感じる。」
「アンタ・・・誰だ?」
征夜は本能的に察する。この男は普通の人間ではない。
立ち振る舞いや雰囲気もそうだが、何より征夜たちの事を”勇者”だと知っている事が異常だ。
その口ぶりから察するに、”以前の勇者たち”の事も知っているようにも思える。
征夜の問いかけに対して、男はゆっくりと口を開いた――。
「申し遅れた。我が名はグランディエル2世・・・君たち人間が、”魔王”と呼ぶ存在だ。」
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