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第四章 マリオネット教団編(花視点)
EP110 マリオネット教団
しおりを挟む「・・・ミサラの言った通りならこの辺りに・・・あったぞ!こっちだ!」
鬱蒼と茂る森の中で、シンは何かを見つけたようだ。そして、すぐに花を呼ぶ。
「本当に、こんな場所に入口が・・・?」
花は疑問を口にしながらシンの方へ走って来る。
「間違いない。これ、よく見たら地下室への扉だな。草が茂って見えなかったみたいだ。」
近くまで寄った花に、自分の足元にある、低草に隠された蓋状の扉を見せる。
「確かに、この下には何かありそうね・・・じゃあ、私が先に入るわ。」
花は臆する事なく、勇敢に言い切った。この先が危険だと、あまり考えていない。
「お、おう・・・お前そこそこな勇者だな。てか、俺ら全員が勇者なのか。」
シンは今さら、当然の事を再確認した。
そんな気が全くしないが、彼らの名前は天界の名簿には確かに"勇者"と記載されているのだ。
「よいしよっと!・・・・・・大丈夫よ!」
開けられた蓋状の扉に、梯子すら使わずに勢いよく飛び込んだ花。
どうやら、怪我をするほどの高さは無いらしい。
「俺は梯子で降りよ・・・。」
シンはトントンと小刻みに音を立てながら、ゆっくりと扉の中へ降りて行った。
~~~~~~~~~~~~
「暗っ!ま、まぁ、一応見えるか・・・でも、こんな所に秘密結社が隠れてるのか?」
「私に聞かれても困るわよ・・・この情報を持って来たのは、あなたなんだから。」
「それもそうだな・・・・・・誰か来る!隠れろ!」
シンの合図で、二人は近くにあった木箱の裏に身を隠した。
すると、暗闇の向こうから数人の人影がやって来る。
「おい聞いたかよ?脱走した新開発兵器のマスターブレイズ、勝手に死んだらしいぞ?」
「俺は殺されたって聞いたぞ?何か、あいつが死んだ後に猛烈な吹雪が起こっただろ?あれと関係があるんじゃ無いか?」
「海の向こうから押し寄せて来た、炎の波とは無関係なのか?」
「この島の山頂に陣取った奴が、どうやって大陸からここまでを燃やすんだ?流石に無いだろ。」
「"魔王"が何を考えてるのか分からないが、あんな物を作るのはどうかしてるよな?」
「アイツも、我ら"マリオネット教団"に必要な存在なんだろう。
それにしても、アイツを運んでた奴らは始末されるんだろうなぁ・・・機密情報を外に漏らした上に、教団に損害を齎したんだし・・・。」
「つっても、殆どの奴は死んだって聞いたけどな・・・。」
「そう言えば、ここにやって来たフリーズ大佐って奴知ってるか?人手不足とは言え、24で大佐だぜ?バケモンだろ!?」
「羨ましいよなぁ・・・噂じゃあ、生き残りの一人を庇ってるって聞いたぞ。」
「でも妙な格好だよな、男なのに妙に丈の長い服を着てるし、変な形の剣を持ってるしよ。」
「カットラスに似てたけど、違いそうだしなぁ・・・。あれ、何だろうな?」
聞いてもいない情報を、ペラペラとよく喋る連中である。
警戒心が全く無い。もちろん、背後も隙だらけである。
「おらよぉっ!!!」
ガキィーンッ!!
背後から忍び寄ったシンは、男たちの後頭部を希望のバットで殴り付けた。金属がクリーンヒットした小気味良い音が鳴る。
死には至らなかったが、数人の男が即座に昏倒した。
「うわぁっ!な、何だお前!?」
「チッ!逃すかよ!」
バットで倒し損ねた男のみぞおちに、勢いよく蹴りを喰らわせ、次々と仕留めていく。
最早バットは必要ない。喧嘩はシンの独壇場である。
「うごぁっ!」
「ごふっ!」
「げふっ!お、おえっ・・・。」
鈍い叫びを上げながら、男たちはバタバタと倒れ込んでいく。
シンは僅か1分で、その場を制圧した。
「す、凄いね・・・。」
流石の花でも、称賛せずにいられない手際である。
「すぐに、そいつらの服を羽織れ!隠れるぞ!」
「えっ?う、うわぁっ!」
花はシンが脱がした男たちの上着を押し付けられると、手を引かれてその場から逃走した。
~~~~~~~~~~~
「ちょ、ちょっと!出口に戻るんじゃ!?」
シンは、出入り口のある通路よりも先の地下道を、ガムシャラに走り続けた。
「何言ってんだ!魔王について知るチャンスだろ!?
ここの名前はマリオネット教団、きっと魔王直属の組織だ!」
シンは興奮したように叫ぶが、花はあまり乗り気で無い。
「そ、そうかもだけど・・・まずいわ!向こうから誰か来る!」
「今度は隠れる場所が無いか・・・いや、この部屋に入るぞ!」
シンは左手にある豪華な扉を指さした。
「でも、鍵が掛かってるんじゃ・・・うん、そうだったね。」
最早、花は反応するのに疲れたが、シンは既に金貨で鍵を作っていた。
「よし開いた!入れ!」
「うん!」
花とシンは勢いよく扉を開けると、その中になだれ込んだ。
~~~~~~~~~~~~
「ここは・・・書斎・・・?」
花は冷静に部屋を見渡して、すぐにこの部屋が何なのか見出した。
小さな燭台が、埃まみれの部屋を照らしている。
「本棚が多いな。」
「とりあえず、息を潜めていましょうか・・・ついでに、この中を調べちゃいましょう。」
「おう、そうだな!」
シンは既に、書類が積み上げられた机を物色している。
「例えばこの本棚とか・・・!?」
本棚に触れた花は、驚いたように突然身を引いた。片手に何かを持っている。
「どうした?」
「なんか落ちて来た・・・我が崇高なる研究記録・・・?」
目を見合わせた花とシンは、その冊子を開いてみた。
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