163 / 251
第六章 マリオネット教団編(征夜視点)
EP148 黒き不死鳥
しおりを挟む
ある者は、"憎悪するに足らない仇敵"を見た。
ある者は、"穢れを持たない愚者"を見た。
そして、ある者は"無限に広がる虚無"を見た――。
―――――――――――――――――――――
「ひぃ~・・・ヤバかったぁ~・・・。」
大きくため息を吐いた征夜は、前のめりになって船外へ転がり出た。
そこは目的地の浜辺であったが、どうにも人の気配がない。尤も、現地民に襲われなかっただけマシとも取れるが。
冷たい砂を握りしめながら立ち上がった征夜は、船に備わった望遠鏡を使って、遠方の海洋を眺める事にした。
対岸に存在する、港町と思わしき建物群。その港から放射状に広がっている戦場は、色とりどりの光で飾られている。
「あんなに倒したのに・・・まだ居るのか・・・。」
征夜は正直言って、かなり落胆した。
自分が死力を尽くして討伐した他にも、未だに大量の海竜がこの近海を遊泳しているのだ。
シャノン近海には、この数年ほど人の手が一切加えられなかった。その主な原因は、当然ながら破海竜の存在である。
それまでのシャノン住人は、共存とまでは言えないが、ある程度は海竜の存在を"生態系の一部"として容認していた。
しかし、突如として現れた一頭の破海竜が、その文化さえも破り捨てたのだ。
ここ数年間で、近海に生息する海竜の数は約3倍に増加した。そして、今もなお増え続けていた。
そんな現状は打破するために決行されたのが、此度の掃討作戦なのだ。当然ながら、その最大の討伐目標は破海竜にあった。
そんな中で、征夜は魔法を使えないながらも多大な戦果を上げた。生存したままの討伐数だけで言えば、現在も水中で戦闘を続ける"小さな英雄・サム"よりも多いだろう。
だがそれでも、たった一人の戦果などでは変えられないほどに、この近海は海竜の世界と化していた。だからこそ、今もなお戦闘は続いているのだ。
「みんな・・・頑張ってるんだなぁ・・・。」
これ以上の加勢が出来ない事は、征夜自身が最も良く理解していた。全身の疲労が大きすぎて、船を漕ぐことも不可能だろう。
ただ呆然と遥か遠方を眺めながら、そこで繰り広げられる死闘を夢想することしか出来ない。
そんな事を続けているうちに、戦局に動きがあったーー。
「・・・は?」
思わず、彼は目を疑った。
疲労が理由なのか、それとも溺れたことが理由なのか。どちらにせよ、絶対にあり得ない光景が映り込んで来たのだ。
望遠鏡のレンズには、破海竜が映っていたーー。
「そんな馬鹿な!確実に殺した!食い荒らされた後に、氷漬けにした!生きてるわけがな・・・・・・はぁっ!!!???」
驚愕の連続で、空いた口が塞がらない。
殺したはずの破海竜が生きていた事も、確かに驚愕した。しかし、その光景はそれすらも凌駕していた。
足の生えた破海竜が、港町に上陸したーー。
あの巨大な体を支えるだけの足が、一体どこに仕舞われていたのだろうか。さらに問題なのは、それが一頭でない事である。
「1・・・2・・・嘘だろ・・・破海竜ってのは、繁殖するのか?・・・これはきっと夢だ。忘れよう・・・。」
常識を外れたその状況に対して、征夜は思考を停止した。
~~~~~~~~~~
数分の間、彼の思考は完全に停止していた。
目を傷める事にも構わずに、水平線を眺める。
ふと気がつくと、破海竜が上陸した港町は、踏み鳴らされて消え去っていたーー。
「踏み潰されたのか・・・?いや、これは夢なんだ。気にしても仕方がない。」
もしも町ごと踏み潰されたなら、そこに住む人々は死滅している。
海に出払っていた海兵達を、陸と海で挟み撃ちにして全滅させる事も出来るだろう。
しかし今の征夜には、そこまでの思考を回す余力が無かった。
そしてその結果、悲惨な現状を想像しないために"夢幻"と断じる事にした。
「そろそろ、宿を探そ」
カッシャーンッ!!!
「うわぁっ!!??」
征夜は遠洋を眺めるのを止め、今夜の宿を探すために立ち上がった。
しかしその意思は、突如として背後から響いた盛大な金属音によって遮断された。
その音はもしかしたら、ずっと前から聞こえていたのかも知れない。
征夜が気付かなかっただけで、その二人の死闘は明らかに今始まった物ではない。おそらくだが、得物と得物が衝突する音もまた、戦闘開始時から聞こえていただろう。
望遠鏡を覗くと、そこには"二つの人影"があった。
一人の姿は靄が掛かっており見えず、もう一人の姿は黒いマントに身を包んだ人物だ。その体格からして、男であると推察される。
二人の戦闘領域は、怪物のひしめく海洋の遥か上空。
雲海にも程近いほどの天空にて、宙を舞うようにして展開されていたーー。
心臓の鼓動が鳴り止まず、うるさい程に生命の危機を主張する。
まるで征夜に対して、「こんな所に居てはいけない!」と警告するかのように、その鼓動は加速していく。
しかし彼の意思は肉体の本能さえも無視して、好奇心を優先させた。
「凄い・・・!」
それはまさに、人知を超越した戦闘。
武道の道に入って間もない征夜にも、それは分かっていた。
男は全身に暴風を纏いながら、空中を優雅に飛び回る。
そして、クルクルとスピンをしながら上昇し、遠心力をその身に受けながら、両手の中に黄金と紅蓮のエネルギー弾を生成した。
敵対者の動きもまた、人間をやめていた。
こちらは"飛ぶ"という表現よりも、文字通り"舞って"いた。まるで空中だという事を忘れさせるように、華麗なステップを踏みながら、ヒラヒラと踊っている。
「アレは・・・何だ・・・?」
もはや、理解が追いつかない。その戦闘は明らかに、人の理解を超える速度で展開されていた。
凄まじい速さで飛んでいる男は、空中に黒い残像を残しながらも未だに加速し続けている。放たれた魔弾を避けながら、次々と斬撃を繰り出した。
敵対者は放たれた斬撃を、魔法や手に持った"巨大な鎌"で受け流しながら、相手を挑発しているようだ。
七色に輝く刀と、赤黒い大鎌が衝突するたびに、天地を割り裂くような爆裂音が響き渡り、大地と空気を強振させる。
衝撃により発生したエネルギーは、緋色の稲妻となって直下に広がる海洋に降り注ぐ。
よく見ると、男の残した残像は敵対者の肉体に、確実な傷を与えていた。
周囲を飛びながら繰り出した斬撃は、たとえそれが既に過去の残穢と化していても、現在の助けをしようと奮闘している。
そこには、"質量を持った残像"が存在していたーー。
男が残した残像に敵対者が触れるたびに、青空を汚す鮮血が飛び散る。
しかし、そんな事には興味ないと言わんばかりに、男は更なる攻撃を敵対者に加える。
自分のしている行為、それがいかに驚異的か。彼にとってはどうでも良いのだ。
男は敵対者と距離を取り、右手と左手を脇腹の位置で重ね合わせる。
右手に纏った炎と、左手に纏った稲妻が手中で混ざり合い、橙色の球体となった。
敵対者もそれに対抗するように、ポーズを取り始める。
握りしめた大鎌を体の前でクルクルと高速回転させ、その中心にある自分の手に魔力を貯める。
お互いに発動の準備を整えると、溜め込んだエネルギー波を相手に向けて射出したーー。
<<<雷炎裂空砲>>>
<<< Lődd le!!!>>>
カァァァンッッッ!!!
男の放った"炎を纏った稲妻"と、敵対者の放った赤黒いエネルギー波が空中で激突した。
甲高い炸裂音が近辺に響き渡り、衝突した地点から暴風が吹き荒れる。大気を押し流す勢いで気流が噴出し、征夜は危うく吹き飛ばされそうになった。
エネルギー波の撃ち合いは、完全に互角だった。
お互いが背後に吹き飛ばされ、海面に落下していく。
「どっちが勝った!?」
征夜は既に、戦闘を行なっている者たちの虜となっていた。勝敗が気になって仕方がなく、落下する男に望遠鏡を合わせた。
まるで、死んでしまったかのような様子で、男は自由落下を続けていた。
それは海面に激突しても止まる事はなく、落下の速度を減速する事もなく水中へと沈み込んで行くーー。
「死んだ・・・のか・・・?」
征夜には、どうしても信じられなかった。
見ている者を戦慄させるほどの頂上決戦。その決着が、あれほどにあっさりと着くものだろうか。
答えはNOだ。
「どうしたどうしたぁっ!?怖気付いたかぁッ!!!」
吹き飛ばされた後に体勢を直した敵対者は、嬉々とした声で叫びながら、海面へと突っ込んで行く。
両手に赤黒い稲妻を込めて、それを男の落下地点の海面に向けて発射した。
<<<<< Pop és mix!!!!!>>>>>
放たれた稲妻は、放射状に広がりながら降り注いだ。弾け飛び、混ざり合いながら、シャノン近海全体に広がる。
それはまるで、全身を巡る血管のようにコバルトブルーの海を染めた。
塩水は電流を伝えやすい。
超常的な能力を持ったあの男の命運も、ついに潰えたかと思われたーー。
<<<<< 海捻斬・鳴門>>>>>
突如として、巨大な咆哮が深海から轟いた。
それと同時にシャノン近海の海流が、まるで"鳴門"を描くように流動する。そして、その渦は男の落下地点へと集約した。
集約点を根元として、巨大な水の柱が立ち昇る。そして、その柱は一切の迷いもなく敵対者へと直進した。
その巨大な水流の中には、海面へと降り注いだ稲妻が込められているーー。
「ギャァァァッッッッッ!!!!!・・・なぁんてな!」
断末魔の叫びを上げたかと思えば、まるで演技だったと言わんばかりに、敵対者は余裕のある嘲笑を浮かべる。
自らが放った電流を、そのまま打ち返された。そして、それをまともに喰らったのだ。
普通なら驚愕するか、地団駄を踏むはずなのに、何の動揺も見せない。まるで、"自分には分かっていた"と示すかのようだ。
海底へと墜落した男は死んでなどいなかった。それどころか、その不利な状況さえも攻勢の一手へと変えた。
刃渡りは征夜の刀と大差ないのに、そこに込めたエネルギーが違い過ぎる。一切の魔力を纏う事も無く、腕力と遠心力だけを利用し、刀身の延長線上に広がる海を巻き込んだ。
シャノン近海を包み込んだ渦は、男が空中で放った回転斬りによるものだ。
そして、巻き取った海を渦状に練り上げて、ある程度まで渦の形を整えた彼は、浮遊する敵対者に向けて打ち放った。
男の刀を起点としたうず潮は、敵対者に直撃した水の柱と言う終着点を以って、一本の道となった。
そのため、流れ込む水の柱は留まる事も無く重力に逆らい続いている。
征夜としては、海中に沈み込んだ男がどのように浮上するのか、気になって仕方ない。
海を突き破って登場するのか、空中に瞬間移動するのか。対戦者以上に、その動向を気にしている。
「どうしたどうしたぁ?溺れちまったかぁ!!!???だっせぇ奴だなぁ!!!オラッ!オラオラオラぁッッッ!!!待たせてんじゃねぇよクソがぁッッッ!!!」
いつまでも潜水したままの男に、敵対者はシビレを切らしている。未だに男が潜ったままと思われる地点に向けて、大量の魔法を乱射する。
叫び散らしながら罵詈雑言を放ち、口撃でも相手を責め立てる戦法らしい。自分でも歯止めが利かないほどにヒートアップし、文字に起こすのを憚られる程度の暴言も、無尽蔵に飛び出して来る。
だが狂乱を纏った敵対者とは違い、男は冷静だった。
「待たせたな。」
「・・・ハッ!」
気が付くと、男は背後に回っていた。
いや、正確には”男の通った道”に、自ら背を向けていたのだ。
まるで滝を登る鯉のように、男は自分が生み出した水の柱を遡って来た。
その殺気と、隠しきれない覇気を水の中に隠しながら、凄まじい速度で浮上してきたのだ。
完全に背後を取られた敵対者のうなじに、光速を超える斬撃が放たれるーー。
「ぐげぇあああッッッッッ!!!!!」
「汚らしく叫ぶな。虫唾が走る。」
斬り飛ばされた生首が、鮮血を撒き散らしながら水面へと落下していく。
断末魔の叫びを上げ、抵抗も出来ずに落下する。しかしそれは、海面下へと沈み込む事は無かった。
「ふぅ・・・危なかった・・・!」
波打っている水面に衝突した首は、まるでテニスボールのように放物線を描いた。
そして、わざとらしくため息を吐きながら、再び胴と合体した。
征夜にはその光景が、とてつもなく輝いて見えた。
人間の限界を超えた者同士が、その実力をぶつけ合う頂上決戦。そこに、武人として興奮せざるを得ない。
しかし同時に、悲しい物にも見えたーー。
(僕はきっと・・・100年を費やしても、あれほどに強くはなれない・・・。特に、男の人は格が違う・・・。)
数十頭もの海竜が作り出した渦を以って、ようやく小さなうず潮を作った征夜。
それに引き換え、男はたった一人で海全体をかき混ぜた。その差は圧倒的だ。
彼の夢は、”宇宙最強になってより多くの人を救う”だ。
途方も無く子供じみてはいるが、目指しても損はないほどに壮大な夢。強さの果てに、掴み取れる平和が有ると信じているからこその夢だ。
だがどうだろう。目の前で繰り広げられる光景は、それに矛盾しているでは無いかーー。
(何故、アレほどの力を持ってるのに・・・戦いを求めるんだ・・・。)
征夜はそこに、人と言う存在の”業”を見た気がした。
戦いの果てに強さを手に入れても、何も変わらない。全ては、更なる闘争の下準備に過ぎないのだ。
積み重ねた勝利の先には、結局のところ何も無いーー。
そんな事を、僅かながら悟った気がした。
「お互い、決定力が無いな。」
「不死身同士の死闘だぜ?不毛に決まってるんだよなぁ?」
その言葉が合図となったのだろう。空中で睨み合う両者は、お互いに”決着の一撃”を放つ準備を始めた。
男はフードに隠された耳に右手を当てながら、誰かと交信を取る。
「・・・本気を出すために使役を解除する。急いで、その場から逃げるんだ。」
右手が塞がっている好機を逃すほど、敵対者も甘くはない。
大量のエネルギー弾と稲妻、炎や竜巻と言った飛び道具を放ち、相手の妨害をする。
しかし男は、その全てを左手で構えた刀によって受け流した。
その様子はまるで、刀一本で”絶対領域”を作り出したようにも見える。
「す、凄い・・・!」
氷狼神眼流は”受け”に特化した流派。だからこそ征夜は、防御にも自信があった。
しかし、男の剣捌きは明らかに自分を凌駕している。
冷静に考えれば当然であるが、刀を取り回す速度は征夜の比ではない。それに加えて、まるで未来が見えているかのように精密な動作で、迫りくる物を弾いているのだ。
交信を終えた男は、自らの顔を隠す布を僅かに取り払った。
そして、露出した口元を刀身に近づけ、大きく息を吹きかける。
「ハァァァァァ・・・。」
まるで冬の日に凍える手を温める時のような、深い息吹が七色の刀身を包み込む。
季節は冬だが、この世界は常夏だ。ならば、息は透明のはず。しかし、男の吐息は霧のように白かった。
それは、もはや息ではない。体内の水分を沸騰させた”水蒸気”なのだ。
突如として、男の纏った暴風は更に肥大化した。
頭上に広がる雲海が、文字通り霧散したことがそれを表している。
そしてーー。
<<<<<限無凍殺剣・絶体霊弩>>>>>
<<<<<Én vagyok az igazi ős örököse!!!!!>>>>>
青白い閃光を纏った刀と、赤黒い波導を放射する大鎌が、空中で激突した。
その衝突は、海を真っ二つに裂くほどの衝撃波を生み出した。そして、その衝突点には青白い雪が舞い散りながらも、赤黒い稲妻が炸裂している。
征夜はピリピリとした放電が、自分の元にも伝わって来るのを感じる。それと同時に、周囲の気温が急激に下がった事も悟った。
今度もやはり、先程と同様に互角だった。
大気を凍て付かせるほどの吹雪に晒された敵対者と、大気を震わせるほどの稲妻が直撃した男。
片方は完全に凍り付きながら、片方は全身が丸焦げになりながら、先程と同様に落下していく。
しかし今回は、男の復帰が早かったーー。
「まだまだ・・・行けるぞ!!!」
大きく両手を広げ、再び戦場に向けて飛翔した。
全身の服が発火しながらも、その肉体と闘志は健在なのだ。
太陽の光を背に浴びながら、悠々と天空を舞うその姿。
身に纏わりつく炎を、ものともしない様子。それは正に、”不死鳥”だったーー。
「望むところだぁぁぁッッッ!!!!」
敵対者もまた、生きている。
全身の細胞が凍て付いても尚、死ぬという選択肢は無いのだろう。
こうして二人は、再び上空で睨み合った。
その決闘は、まだしばらくの間は続きそうである。
(凄い・・・!凄すぎる・・・!)
もはや完全に決闘の観衆と化していた男は、心の中で同じことを叫び続けている。
その戦いに秘められた悲しみを見ても尚、武人としての本能が興奮を掻き立ててしまうのだ。
ふと気が付くと、男の顔を覆っていた布が消えている。
おそらく、身に纏った服とは違い防火性が無かったのだろう。だからこそ、焼け落ちてしまったのだ。
(どんな人なんだ・・・!一体、どんな人なんだろう・・・!)
自らの師さえも凌駕する武人。その尊顔を、拝まずにはいられない。
征夜は急いで、顔が見える角度へと移動した。そして、望遠鏡のレンズを向ける。
その時、男は彼の存在に気付いたのだろう。
悠々とした様子で、その視線を彼へと向けたーー。
「あっ!?あがぁっ!?が、がぁっ!!!???ぐあぁぁぁッッッッッ!!!!!ぐぎゃああぁぁぁッッッッッ!!!!!!!!!!」
突如として、征夜は奇声を上げながら卒倒した。
左胸を抑えながら、泡を吹いてのたうち回っている。
目と目があった途端、恐怖が全身を駆け巡った。そして、心臓に激痛が走ったのだ。
その男の眼に、特別な能力があるわけではない。ただ、その覇気だけで、征夜の筋肉を硬直させたのだ。
生物の本能は、強すぎる存在に出会った時に、逃避行動に出る。人間の場合は、それが"恐怖"と言う感情として発露するのだ。
男の眼光は、征夜に"限界を超えた恐怖"を齎した。
決して、睨み付けたわけではない。ただ、観衆に向けて視線を振り向いたに過ぎない。
全身に激痛が走り、呼吸困難に陥っている。神経が麻痺して、痙攣する以外に出来る事がない。
そして、気を失ったーー。
ある者は、"穢れを持たない愚者"を見た。
そして、ある者は"無限に広がる虚無"を見た――。
―――――――――――――――――――――
「ひぃ~・・・ヤバかったぁ~・・・。」
大きくため息を吐いた征夜は、前のめりになって船外へ転がり出た。
そこは目的地の浜辺であったが、どうにも人の気配がない。尤も、現地民に襲われなかっただけマシとも取れるが。
冷たい砂を握りしめながら立ち上がった征夜は、船に備わった望遠鏡を使って、遠方の海洋を眺める事にした。
対岸に存在する、港町と思わしき建物群。その港から放射状に広がっている戦場は、色とりどりの光で飾られている。
「あんなに倒したのに・・・まだ居るのか・・・。」
征夜は正直言って、かなり落胆した。
自分が死力を尽くして討伐した他にも、未だに大量の海竜がこの近海を遊泳しているのだ。
シャノン近海には、この数年ほど人の手が一切加えられなかった。その主な原因は、当然ながら破海竜の存在である。
それまでのシャノン住人は、共存とまでは言えないが、ある程度は海竜の存在を"生態系の一部"として容認していた。
しかし、突如として現れた一頭の破海竜が、その文化さえも破り捨てたのだ。
ここ数年間で、近海に生息する海竜の数は約3倍に増加した。そして、今もなお増え続けていた。
そんな現状は打破するために決行されたのが、此度の掃討作戦なのだ。当然ながら、その最大の討伐目標は破海竜にあった。
そんな中で、征夜は魔法を使えないながらも多大な戦果を上げた。生存したままの討伐数だけで言えば、現在も水中で戦闘を続ける"小さな英雄・サム"よりも多いだろう。
だがそれでも、たった一人の戦果などでは変えられないほどに、この近海は海竜の世界と化していた。だからこそ、今もなお戦闘は続いているのだ。
「みんな・・・頑張ってるんだなぁ・・・。」
これ以上の加勢が出来ない事は、征夜自身が最も良く理解していた。全身の疲労が大きすぎて、船を漕ぐことも不可能だろう。
ただ呆然と遥か遠方を眺めながら、そこで繰り広げられる死闘を夢想することしか出来ない。
そんな事を続けているうちに、戦局に動きがあったーー。
「・・・は?」
思わず、彼は目を疑った。
疲労が理由なのか、それとも溺れたことが理由なのか。どちらにせよ、絶対にあり得ない光景が映り込んで来たのだ。
望遠鏡のレンズには、破海竜が映っていたーー。
「そんな馬鹿な!確実に殺した!食い荒らされた後に、氷漬けにした!生きてるわけがな・・・・・・はぁっ!!!???」
驚愕の連続で、空いた口が塞がらない。
殺したはずの破海竜が生きていた事も、確かに驚愕した。しかし、その光景はそれすらも凌駕していた。
足の生えた破海竜が、港町に上陸したーー。
あの巨大な体を支えるだけの足が、一体どこに仕舞われていたのだろうか。さらに問題なのは、それが一頭でない事である。
「1・・・2・・・嘘だろ・・・破海竜ってのは、繁殖するのか?・・・これはきっと夢だ。忘れよう・・・。」
常識を外れたその状況に対して、征夜は思考を停止した。
~~~~~~~~~~
数分の間、彼の思考は完全に停止していた。
目を傷める事にも構わずに、水平線を眺める。
ふと気がつくと、破海竜が上陸した港町は、踏み鳴らされて消え去っていたーー。
「踏み潰されたのか・・・?いや、これは夢なんだ。気にしても仕方がない。」
もしも町ごと踏み潰されたなら、そこに住む人々は死滅している。
海に出払っていた海兵達を、陸と海で挟み撃ちにして全滅させる事も出来るだろう。
しかし今の征夜には、そこまでの思考を回す余力が無かった。
そしてその結果、悲惨な現状を想像しないために"夢幻"と断じる事にした。
「そろそろ、宿を探そ」
カッシャーンッ!!!
「うわぁっ!!??」
征夜は遠洋を眺めるのを止め、今夜の宿を探すために立ち上がった。
しかしその意思は、突如として背後から響いた盛大な金属音によって遮断された。
その音はもしかしたら、ずっと前から聞こえていたのかも知れない。
征夜が気付かなかっただけで、その二人の死闘は明らかに今始まった物ではない。おそらくだが、得物と得物が衝突する音もまた、戦闘開始時から聞こえていただろう。
望遠鏡を覗くと、そこには"二つの人影"があった。
一人の姿は靄が掛かっており見えず、もう一人の姿は黒いマントに身を包んだ人物だ。その体格からして、男であると推察される。
二人の戦闘領域は、怪物のひしめく海洋の遥か上空。
雲海にも程近いほどの天空にて、宙を舞うようにして展開されていたーー。
心臓の鼓動が鳴り止まず、うるさい程に生命の危機を主張する。
まるで征夜に対して、「こんな所に居てはいけない!」と警告するかのように、その鼓動は加速していく。
しかし彼の意思は肉体の本能さえも無視して、好奇心を優先させた。
「凄い・・・!」
それはまさに、人知を超越した戦闘。
武道の道に入って間もない征夜にも、それは分かっていた。
男は全身に暴風を纏いながら、空中を優雅に飛び回る。
そして、クルクルとスピンをしながら上昇し、遠心力をその身に受けながら、両手の中に黄金と紅蓮のエネルギー弾を生成した。
敵対者の動きもまた、人間をやめていた。
こちらは"飛ぶ"という表現よりも、文字通り"舞って"いた。まるで空中だという事を忘れさせるように、華麗なステップを踏みながら、ヒラヒラと踊っている。
「アレは・・・何だ・・・?」
もはや、理解が追いつかない。その戦闘は明らかに、人の理解を超える速度で展開されていた。
凄まじい速さで飛んでいる男は、空中に黒い残像を残しながらも未だに加速し続けている。放たれた魔弾を避けながら、次々と斬撃を繰り出した。
敵対者は放たれた斬撃を、魔法や手に持った"巨大な鎌"で受け流しながら、相手を挑発しているようだ。
七色に輝く刀と、赤黒い大鎌が衝突するたびに、天地を割り裂くような爆裂音が響き渡り、大地と空気を強振させる。
衝撃により発生したエネルギーは、緋色の稲妻となって直下に広がる海洋に降り注ぐ。
よく見ると、男の残した残像は敵対者の肉体に、確実な傷を与えていた。
周囲を飛びながら繰り出した斬撃は、たとえそれが既に過去の残穢と化していても、現在の助けをしようと奮闘している。
そこには、"質量を持った残像"が存在していたーー。
男が残した残像に敵対者が触れるたびに、青空を汚す鮮血が飛び散る。
しかし、そんな事には興味ないと言わんばかりに、男は更なる攻撃を敵対者に加える。
自分のしている行為、それがいかに驚異的か。彼にとってはどうでも良いのだ。
男は敵対者と距離を取り、右手と左手を脇腹の位置で重ね合わせる。
右手に纏った炎と、左手に纏った稲妻が手中で混ざり合い、橙色の球体となった。
敵対者もそれに対抗するように、ポーズを取り始める。
握りしめた大鎌を体の前でクルクルと高速回転させ、その中心にある自分の手に魔力を貯める。
お互いに発動の準備を整えると、溜め込んだエネルギー波を相手に向けて射出したーー。
<<<雷炎裂空砲>>>
<<< Lődd le!!!>>>
カァァァンッッッ!!!
男の放った"炎を纏った稲妻"と、敵対者の放った赤黒いエネルギー波が空中で激突した。
甲高い炸裂音が近辺に響き渡り、衝突した地点から暴風が吹き荒れる。大気を押し流す勢いで気流が噴出し、征夜は危うく吹き飛ばされそうになった。
エネルギー波の撃ち合いは、完全に互角だった。
お互いが背後に吹き飛ばされ、海面に落下していく。
「どっちが勝った!?」
征夜は既に、戦闘を行なっている者たちの虜となっていた。勝敗が気になって仕方がなく、落下する男に望遠鏡を合わせた。
まるで、死んでしまったかのような様子で、男は自由落下を続けていた。
それは海面に激突しても止まる事はなく、落下の速度を減速する事もなく水中へと沈み込んで行くーー。
「死んだ・・・のか・・・?」
征夜には、どうしても信じられなかった。
見ている者を戦慄させるほどの頂上決戦。その決着が、あれほどにあっさりと着くものだろうか。
答えはNOだ。
「どうしたどうしたぁっ!?怖気付いたかぁッ!!!」
吹き飛ばされた後に体勢を直した敵対者は、嬉々とした声で叫びながら、海面へと突っ込んで行く。
両手に赤黒い稲妻を込めて、それを男の落下地点の海面に向けて発射した。
<<<<< Pop és mix!!!!!>>>>>
放たれた稲妻は、放射状に広がりながら降り注いだ。弾け飛び、混ざり合いながら、シャノン近海全体に広がる。
それはまるで、全身を巡る血管のようにコバルトブルーの海を染めた。
塩水は電流を伝えやすい。
超常的な能力を持ったあの男の命運も、ついに潰えたかと思われたーー。
<<<<< 海捻斬・鳴門>>>>>
突如として、巨大な咆哮が深海から轟いた。
それと同時にシャノン近海の海流が、まるで"鳴門"を描くように流動する。そして、その渦は男の落下地点へと集約した。
集約点を根元として、巨大な水の柱が立ち昇る。そして、その柱は一切の迷いもなく敵対者へと直進した。
その巨大な水流の中には、海面へと降り注いだ稲妻が込められているーー。
「ギャァァァッッッッッ!!!!!・・・なぁんてな!」
断末魔の叫びを上げたかと思えば、まるで演技だったと言わんばかりに、敵対者は余裕のある嘲笑を浮かべる。
自らが放った電流を、そのまま打ち返された。そして、それをまともに喰らったのだ。
普通なら驚愕するか、地団駄を踏むはずなのに、何の動揺も見せない。まるで、"自分には分かっていた"と示すかのようだ。
海底へと墜落した男は死んでなどいなかった。それどころか、その不利な状況さえも攻勢の一手へと変えた。
刃渡りは征夜の刀と大差ないのに、そこに込めたエネルギーが違い過ぎる。一切の魔力を纏う事も無く、腕力と遠心力だけを利用し、刀身の延長線上に広がる海を巻き込んだ。
シャノン近海を包み込んだ渦は、男が空中で放った回転斬りによるものだ。
そして、巻き取った海を渦状に練り上げて、ある程度まで渦の形を整えた彼は、浮遊する敵対者に向けて打ち放った。
男の刀を起点としたうず潮は、敵対者に直撃した水の柱と言う終着点を以って、一本の道となった。
そのため、流れ込む水の柱は留まる事も無く重力に逆らい続いている。
征夜としては、海中に沈み込んだ男がどのように浮上するのか、気になって仕方ない。
海を突き破って登場するのか、空中に瞬間移動するのか。対戦者以上に、その動向を気にしている。
「どうしたどうしたぁ?溺れちまったかぁ!!!???だっせぇ奴だなぁ!!!オラッ!オラオラオラぁッッッ!!!待たせてんじゃねぇよクソがぁッッッ!!!」
いつまでも潜水したままの男に、敵対者はシビレを切らしている。未だに男が潜ったままと思われる地点に向けて、大量の魔法を乱射する。
叫び散らしながら罵詈雑言を放ち、口撃でも相手を責め立てる戦法らしい。自分でも歯止めが利かないほどにヒートアップし、文字に起こすのを憚られる程度の暴言も、無尽蔵に飛び出して来る。
だが狂乱を纏った敵対者とは違い、男は冷静だった。
「待たせたな。」
「・・・ハッ!」
気が付くと、男は背後に回っていた。
いや、正確には”男の通った道”に、自ら背を向けていたのだ。
まるで滝を登る鯉のように、男は自分が生み出した水の柱を遡って来た。
その殺気と、隠しきれない覇気を水の中に隠しながら、凄まじい速度で浮上してきたのだ。
完全に背後を取られた敵対者のうなじに、光速を超える斬撃が放たれるーー。
「ぐげぇあああッッッッッ!!!!!」
「汚らしく叫ぶな。虫唾が走る。」
斬り飛ばされた生首が、鮮血を撒き散らしながら水面へと落下していく。
断末魔の叫びを上げ、抵抗も出来ずに落下する。しかしそれは、海面下へと沈み込む事は無かった。
「ふぅ・・・危なかった・・・!」
波打っている水面に衝突した首は、まるでテニスボールのように放物線を描いた。
そして、わざとらしくため息を吐きながら、再び胴と合体した。
征夜にはその光景が、とてつもなく輝いて見えた。
人間の限界を超えた者同士が、その実力をぶつけ合う頂上決戦。そこに、武人として興奮せざるを得ない。
しかし同時に、悲しい物にも見えたーー。
(僕はきっと・・・100年を費やしても、あれほどに強くはなれない・・・。特に、男の人は格が違う・・・。)
数十頭もの海竜が作り出した渦を以って、ようやく小さなうず潮を作った征夜。
それに引き換え、男はたった一人で海全体をかき混ぜた。その差は圧倒的だ。
彼の夢は、”宇宙最強になってより多くの人を救う”だ。
途方も無く子供じみてはいるが、目指しても損はないほどに壮大な夢。強さの果てに、掴み取れる平和が有ると信じているからこその夢だ。
だがどうだろう。目の前で繰り広げられる光景は、それに矛盾しているでは無いかーー。
(何故、アレほどの力を持ってるのに・・・戦いを求めるんだ・・・。)
征夜はそこに、人と言う存在の”業”を見た気がした。
戦いの果てに強さを手に入れても、何も変わらない。全ては、更なる闘争の下準備に過ぎないのだ。
積み重ねた勝利の先には、結局のところ何も無いーー。
そんな事を、僅かながら悟った気がした。
「お互い、決定力が無いな。」
「不死身同士の死闘だぜ?不毛に決まってるんだよなぁ?」
その言葉が合図となったのだろう。空中で睨み合う両者は、お互いに”決着の一撃”を放つ準備を始めた。
男はフードに隠された耳に右手を当てながら、誰かと交信を取る。
「・・・本気を出すために使役を解除する。急いで、その場から逃げるんだ。」
右手が塞がっている好機を逃すほど、敵対者も甘くはない。
大量のエネルギー弾と稲妻、炎や竜巻と言った飛び道具を放ち、相手の妨害をする。
しかし男は、その全てを左手で構えた刀によって受け流した。
その様子はまるで、刀一本で”絶対領域”を作り出したようにも見える。
「す、凄い・・・!」
氷狼神眼流は”受け”に特化した流派。だからこそ征夜は、防御にも自信があった。
しかし、男の剣捌きは明らかに自分を凌駕している。
冷静に考えれば当然であるが、刀を取り回す速度は征夜の比ではない。それに加えて、まるで未来が見えているかのように精密な動作で、迫りくる物を弾いているのだ。
交信を終えた男は、自らの顔を隠す布を僅かに取り払った。
そして、露出した口元を刀身に近づけ、大きく息を吹きかける。
「ハァァァァァ・・・。」
まるで冬の日に凍える手を温める時のような、深い息吹が七色の刀身を包み込む。
季節は冬だが、この世界は常夏だ。ならば、息は透明のはず。しかし、男の吐息は霧のように白かった。
それは、もはや息ではない。体内の水分を沸騰させた”水蒸気”なのだ。
突如として、男の纏った暴風は更に肥大化した。
頭上に広がる雲海が、文字通り霧散したことがそれを表している。
そしてーー。
<<<<<限無凍殺剣・絶体霊弩>>>>>
<<<<<Én vagyok az igazi ős örököse!!!!!>>>>>
青白い閃光を纏った刀と、赤黒い波導を放射する大鎌が、空中で激突した。
その衝突は、海を真っ二つに裂くほどの衝撃波を生み出した。そして、その衝突点には青白い雪が舞い散りながらも、赤黒い稲妻が炸裂している。
征夜はピリピリとした放電が、自分の元にも伝わって来るのを感じる。それと同時に、周囲の気温が急激に下がった事も悟った。
今度もやはり、先程と同様に互角だった。
大気を凍て付かせるほどの吹雪に晒された敵対者と、大気を震わせるほどの稲妻が直撃した男。
片方は完全に凍り付きながら、片方は全身が丸焦げになりながら、先程と同様に落下していく。
しかし今回は、男の復帰が早かったーー。
「まだまだ・・・行けるぞ!!!」
大きく両手を広げ、再び戦場に向けて飛翔した。
全身の服が発火しながらも、その肉体と闘志は健在なのだ。
太陽の光を背に浴びながら、悠々と天空を舞うその姿。
身に纏わりつく炎を、ものともしない様子。それは正に、”不死鳥”だったーー。
「望むところだぁぁぁッッッ!!!!」
敵対者もまた、生きている。
全身の細胞が凍て付いても尚、死ぬという選択肢は無いのだろう。
こうして二人は、再び上空で睨み合った。
その決闘は、まだしばらくの間は続きそうである。
(凄い・・・!凄すぎる・・・!)
もはや完全に決闘の観衆と化していた男は、心の中で同じことを叫び続けている。
その戦いに秘められた悲しみを見ても尚、武人としての本能が興奮を掻き立ててしまうのだ。
ふと気が付くと、男の顔を覆っていた布が消えている。
おそらく、身に纏った服とは違い防火性が無かったのだろう。だからこそ、焼け落ちてしまったのだ。
(どんな人なんだ・・・!一体、どんな人なんだろう・・・!)
自らの師さえも凌駕する武人。その尊顔を、拝まずにはいられない。
征夜は急いで、顔が見える角度へと移動した。そして、望遠鏡のレンズを向ける。
その時、男は彼の存在に気付いたのだろう。
悠々とした様子で、その視線を彼へと向けたーー。
「あっ!?あがぁっ!?が、がぁっ!!!???ぐあぁぁぁッッッッッ!!!!!ぐぎゃああぁぁぁッッッッッ!!!!!!!!!!」
突如として、征夜は奇声を上げながら卒倒した。
左胸を抑えながら、泡を吹いてのたうち回っている。
目と目があった途端、恐怖が全身を駆け巡った。そして、心臓に激痛が走ったのだ。
その男の眼に、特別な能力があるわけではない。ただ、その覇気だけで、征夜の筋肉を硬直させたのだ。
生物の本能は、強すぎる存在に出会った時に、逃避行動に出る。人間の場合は、それが"恐怖"と言う感情として発露するのだ。
男の眼光は、征夜に"限界を超えた恐怖"を齎した。
決して、睨み付けたわけではない。ただ、観衆に向けて視線を振り向いたに過ぎない。
全身に激痛が走り、呼吸困難に陥っている。神経が麻痺して、痙攣する以外に出来る事がない。
そして、気を失ったーー。
1
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる