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第三章 シャノン大海戦編

EP63 魔能

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「お、おい!誰か知らないのか?」

 漁師達は慌てた様に顔を見合わせるが、全員が困惑の顔を浮かべるだけだ。
 誰一人として、答えを知る者はいない。

「おい、嘘だろ・・・。」

 シンは頭を抱えた。魔法を覚えるのを簡単だとは思っていなかった。
 しかしまさか、覚え方すら知らないとは思っていなかったのだ。
 こうなって来ると、自然な形で一つの可能性が頭の中に浮かんでくる。

(もしかして、魔法って生まれつきの才能なのか・・・!?)

 もし、この仮説が正しいとすれば、計画の破綻は必至だと思った。
 並の海竜と戦うだけでも、サーペント本部に頭を下げて海中兵を借りるしかない。
 しかしシンには、それが無理な気がしてならなかった。

(勝手に支部作っちまったしなぁ・・・。)

 今はまだ情報が伝わっていないとだろう。
 もしメンバーですらない男が、本部の許可なく支部を作ったとなれば、争いが起こるのは自明の理だ。

「と、とりあえず本だ!本を読むしかない!」

 シンが焦っていることは、誰の目にも明らかだった。
 しかし、その程度の事では漁師たちの信頼は揺るがない。

「誰か魔法についての本持ってないのか?」
「そもそも字が読めないんだけど・・・。」
「この町って図書館なくね?」

 漁師達は魔法を習得する気概は十分といった雰囲気で、計画の先行きを疑問視する様子は少しもない。
 シンはそういった様子を見て、今後の展望に関して少しだけ安心した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「魔法の使い方は、サーペントのメンバーしか知らないし、
 覚え方は、教えてもらえなかったのか!?」

 シンは数分の話し合いの後に、少し憤慨しながら聞き返した。

「あ、ああ。俺らの仲間で特に才能があるって言われた奴も、ギルドかサーペントに引き抜かれて行っちまった。
 元気にはしてるし、たまに帰っては来るが魔法については一切教えてくれないんだ。」

「企業秘密・・・というより、コンツェルン・・・・・・の域に片足を突っ込んでやがるな。」

 シンは苦々しげに笑いながら言った。
 この事が意味するのは、二つの友好組織が魔法という人知を超えた力を、半ば独占しているという事だ。

「汚い話だ・・・。海中兵のギャラも、ただの傭兵のくせにバカ高いんだ。時給3ファルシだぜ!!
 海竜と戦うのが危険なのは承知してるが、やり方が気にいらねえ!!!」

「だけど、一体どうすんだ?この町に図書館はないし、独占体制を布いてるなら図書館にあるとは思えないんだが・・・。」
(時給30000円を要求してる組織が、そこをぬかってるようには思えないんだよな・・・。)

 シンは状況が分かってくると、更に頭を抱えた。



 そんな中、酒場全体に絶望感が漂い始めた頃、出入り口に掛けられた入店の鈴が鳴った――。

「ごめんくださーい!リヴァイアサン本部ってここかな・・・?」

 出入り口の方から、まだ小学生ほどと思わしき少年の声が聞こえる。

「いらっしゃい!入団希望者?それとも協力者かしら?」

 議論に加わる事が出来ずに、手持無沙汰な状態で出入り口に立っていた花。
 そんな彼女は、来訪者の少年に優しく笑いかけた。

「かっ、可愛い・・・じゃない!間違えました!入団希望者です!!」

 少年は口の端から溢れ出た本音をかき消すように、元気よく大声で叫んだ。
 幸いなことに花には伝わらなかった。

「歓迎するぜ坊主!」

 俊彦・・はかつての新一・・と同じような調子で、少年に声をかけた。
 よく見ると、少年は右手に分厚くて白い綺麗な本を持っている。

「そいつは何だ?」

 シンは少し訝しむ様に聞いた。

「これ魔導書・・・!表で”黒い服を着た男の人”にもらった!」

 舌足らずな言葉づかいで、少年は説明する。

「そうか、魔導書か・・・って、えぇぇぇッッッ!!!???」

 シンが驚きで声を上げると、周囲の漁師もワンテンポ遅れて騒ぎ出した。
 まだ年端もいかない少年が、右手に抱えてきた物。それは、入手はあり得ないと思っていた本だった。

「誰だ!誰にもらっ・・・。」

 シンはそこまで言うと強烈な目まいに襲われ、膝をついて倒れ込んでしまった。
 そして、数秒の後に起き上がると何事もなかったかのように、少年の持つ魔導書に手を伸ばした。

「これ、読んでもいいか?」

 シンは威圧感を与えないように気を付けながら、かつての新一を思い出しながら笑いかけた。

「はい!あげる!」

 少年はまだ小さい背を必死に伸ばして、シンに白い魔導書を手渡した。
 彼は渡された魔導書の目次を読むと、すぐに重要なページをピックアップした。

ーーーーーーーーーー

☆属性魔法習得の基礎

 一般的に、魔法使いや魔女と呼ばれる者たちは、使えない者と区別される風潮にある。
 しかし、魔力の根源である魔能まのうは誰の魂にも宿っているのだ。

 ある程度実力のある魔法使い(※以後は魔女表記を割愛する)の魔能と、非魔法使いの魔能が接触し、魔力の最低ラインに到達した場合に非魔法使いは魔法使いとなる。

 この魔法習得の根幹となる原理を魔能加法の法則・・・・・・・と呼び、新たな魔法使いの魔能は習得元(これを魔親ましんと呼ぶ)と、習得先(魔子まし)に受け継がれた魔能の合計で決まる。

 計算式=魔親の魔能×0.5+魔子の魔能



☆魔能の系統

 一般的な系統は、
 火炎
 水流
 自然
 冷却
 空気
 大地
 雷撃
 宇宙
 に分かれており、下に行けば行くほど習得が難しくなり、魔能保有量も少なくなっていく。
 魔能はどの系統も全ての人に存在するが、その保有数には偏りがあり、それがそのまま各系統の才能へと直結していく。

 また、これらの魔能が特殊な使い方をされることで魔法ではなく、特殊能力として発現することあるが原理は魔法と同様である。



☆転生者の魔能について

 魔能はすべての宇宙に適応される不偏の法則である。
 よって、人間の転生者が転生時に行う特殊能力の授与にも、魔能加法の法則は適応される。

 ただし、一つだけ例外がある。
 それは魔能とは全く異なる原理で、宇宙の力・・・・に起因する能力である。



 その名を神能しんのうと呼ぶ。
 これは誕生時にはどんな生物の魂にも宿っていない。いわば、完全に後天的な能力である。
 この能力を持つ者は、その名の通りと呼ぶのにふさわしい力を持っている。

 神能が発現する条件には様々なものがあるが、
 能力授与とは別に、天界に住む神を名乗る人間・・・・・・・から能力を貸与された場合も、低い確率ではあるが発現する。

 特筆すべき点として、神能を得た者は魔能を一切持たなくなる。
 もう一つ特筆すべき点として、神能を持った人間は全ての魔能を自在に操ることが可能になる。
 天界で暮らす人間は、この能力をもって自分たちを神と名乗っているが、厳密には違う。
 彼らは天界という神能で満ち溢れた場所で暮らしているため、その力を享受できているだけである。



 神能の真理は、宇宙を成り立たせている力・コスモエイジ・・・・・・に存在する。

 もしも、コスモエイジに選ばれた人間がいたのなら、その者は宇宙を支配する者・・・・・・・・として、真の神・・・を掴み取る事となるだろう・・・。

――――――――――
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