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共通ルート

EP4_③

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「セレア殿、エミリー殿。 先ほどは、見苦しい物を見せて大変申し訳ない。」

「あ、いえ! お気になさらないでください!」

「けほっけほっ……え? 何か……話していたのですか……?」

 セレアは別に気にしていない。
 エミリーは、本当に聞こえていなかったようだ。病弱な事もあって、耳もあまり良くないらしい。

「やぁヴィル! 久しぶりっ!」

「ゼスト兄さん! 帰ってたんだ! 前回の試合も凄かったよ!」

「だろ~? 流石は俺様って感じだよな!」

「特に、オーバーヘッドが凄かった!」

「だろだろ~!?」

(なるほど、この二人は仲が良いのね!)

 ヴィルの自信無さげな態度が、ゼストの前では和らいでいる。
 イケメンサッカー選手と、ブサメンコミュ障。対照的な兄弟だが、仲は良いようだ。

「ヴィル、ゼストの試合を見るのは止めないが、サッカーよりも映像授業の感想を聞きたい物だな。」

「あ、はい……すいません……。」

「謝らなくて良い。 すぐに謝るのは、お前の悪い癖だ。 セレア殿からも、何とか言ってやりなさい。」

「えっ?良いんですか?奴隷妻の身分で?」

「私は、君を奴隷妻だと思った事は一度も無い。
 それに、妻ならば夫と対等なのが普通だ。 何も遠慮は要らない。」

(やだ!めっちゃ紳士!)
「分かりました。……ねぇヴィル君、謝ってばかりだと、人生損するわよ? もっと大胆に生きてみましょ?」

「う、うん……分かった……!」

 ヴィルは少し大袈裟に首を振ると、セレアの助言に同調した。

「ヴィル、今日の講義はどうだった?」

「はい! 転生者の特別講師、"トーシン=バンカー"さんの特別授業でした! とても分かりやすかったです!」

「えッッッ!!!???」

 セレアは、思わず絶句した。
 トーシン=バンカー、本名・"金入俊彦"は他でもない、セレアの元カレである。
 数日前に劇的に別れたばかりで、その名前を忘れようと思っていた矢先、再び名前が出た。驚かない筈がない。

「どうされましたか? セレア殿。」

「あ、いえ……何でも……。」
(シン……そんなバイトしてたんだ……。)

 先ほども、風呂場で未練が噴出したばかりなのに、再び恋慕の記憶が蘇ってきた。

(シン……今何してるかな……私の事……覚えてるかな……。)

 好きだった恋人の、知らなかった一面。
 それを突然に知らされた彼女は、空になった皿を見つめながら、思いを馳せる事しか出来なかった。





 一方、その頃シンは――。





「あっ♡ あっ♡ あっあっあんっ♡ 気持ち良いっ!♡」

「そんな格好で踊るとか、ビッチにも程があるだろ……!」

「んんぅっ!♡ だ、だってぇ……♡ 踊り子だからぁ……♡」

「嘘つけ!この格好、違法な露出度だろ! イヤラしい乳で、男を誘惑するのが好きなくせに……!」

「あぁんっ♡ ごめんなさぁいっ♡
 Fカップおっぱいで、お客さんを誘ってましたぁっ!♡ 
 踊ってる時も揉み揉みされてっ!♡ みんなの前で、エッチもしてるのぉっ!♡」

「公然猥褻じゃねえか! 反省しろ!」

「ご、ごめんなさぁいっ!♡」

パンッパンッパンッ!
くちゅっ……くちゅくちゅ……!

 薄暗いテントの中、肉と肉がぶつかり合う音と、絡み合う粘液の水音だけが響く。
 激しく交わり合う一組の男女は、自分達だけの世界に居た。

 だが、そんな二人を邪魔するように、外から"凄まじい怒号"が響いて来る――。

「よくも……よくも花を! 辱めてくれたなぁッ!!! 絶対に許さんぞ貴様ぁッ!!!」

「えっ?な、なにっ!?誰の声!?」

(くっそ、征夜の野郎うるっせぇな。)
「気にすんな。 ただの喧嘩さ。」

「あっあっあっんっ♡ はぁんっ♡ わ、分かりましたぁっ♡」

 外で仲間が、宿敵と死闘を繰り広げている中、彼はテントで巨乳の踊り子と交わっていた――。

~~~~~~~~~~

「わざわざ映像授業を視聴するなんて、勉強熱心なんですね……!」

「い、いや……そんな事ないよ……バカだし……。」

「少しは自信を持ちなさい。
 セレア殿、自慢にはなるが、実はコイツも君と同じ中央大出身でな。 "帝王学部"だ。」

「えぇっ!? すごいじゃないですか! 全然バカじゃないですよ!」

「う、裏口入学だよ……。」

 ヴィルは恥ずかしそうに顔を赤らめながら、俯いてしまった。しかしセレアは、そんな事を気にしない。

「それでも、卒業できた事が凄いわ!」

「そうかな……!」

「えぇ! いっぱい勉強出来たなら、それで十分よ!」

「……うん!」

 驚くべき事実だが、ヴィルはセレアと同じ大学。中央大学の帝王学部を卒業していた。
 淑女教養学部と共に、"学園の華"とされる学部。男は立派な王に、女は立派な淑女に。それが学園のモットーなのだ。

 帝王学部は男子のみ、淑女教養学部は当然ながら女子のみ。どちらも偏差値は75で、世界最高レベル。
 裏口入学とは言え、入った事で得られる物は多い。その事を、セレアは知っていた。

「ほらな! セレア義姉さんは、ヴィルとお似合いだった! 俺の言った通りだ!」

「お前は、もう少し学問を頑張りなさい。」

「やーだねっ! そんな暇があるなら、必殺シュートでも開発するぜ!」

「ウフフ♡ ゼスト様らしいですね♡」

 やはりゼストは、あまり学力は高くないらしい。
 ステータスを身体能力と顔、コミュ力に全振りしているようだ。
 その代わり、サッカーの天才になったのだから、それはそれで良いのだろう。

「まぁ良い。 ゼストはもっと謙虚に、ヴィルは胸を張って、鍛錬を続けるように。」

「おうよ!」
「はい!」

(フフッ♡ どっちも可愛い……♡)

 二人は仲良く、息を合わせて返事した。
 容姿はだいぶ違うが、やはり兄弟なのだと実感させられる。

「それにしても、兄貴はまだ来ねえのか?」

「用事が……けほけほっ……あるそうなので……。」

「それじゃ仕方ねぇな。……よし! 俺はもう寝るぜ! 明日からは、またリーグだしな!」

「それでは、私もお暇させて頂きます……けほっ……お夕食は……けほけほ……私がアウレスタ様に……。」

「あぁ、頼んだ。……それでは、私も寝るとしよう。」

 そう言うと3人は、それぞれ別の扉から出て行った。
 残されたヴィルは、一人で食事を続けている。セレアは椅子を動かして、彼の真横に座った。

「ほら……お口開けて……♡」

「え?……こう?」

「はい、あ~ん……♡」

「ッ!?……あ~。」

 突然、食事を口に運び始めたセレアに対し、ヴィルは驚きを隠せなかった。
 しかしすぐに、彼女の求めに応じて口を開く。

 食べている物は変わらない筈。
 それなのに、セレアが食べさせてくれるだけで、何倍も美味しく思えるのは何故だろうか――。

「ちょっと恥ずかしいよ……。」

「やめてほしい?」

「……続けてほしい。」

「素直でよろしい……!」

 セレアはそう言うと、再びフォークで食事を掬い、ヴィルの口へと運んだ。
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