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EP3_② <♡>

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「たった3分で……俺が……5回も……!?」

「私の勝ちですね!」

 ただの手コキの筈なのに、その破壊力は凄まじかった。
 根本から精液を掻き出され、抗う事の出来ない潮流が流れ出る感覚。
 射精の快感とは別に、欲望という"毒"を吐き出す治療のような感触だった。

「それじゃ、私とのセックスはお預けです!」

「残念だなぁ……まぁ良いか! 気持ち良かったし! それにしても凄い技だね! 本職は風俗かな?」

「普段は、貴族を相手にした娼婦をさせて頂いてます。」

「高級娼婦か! 確かに君、ただの娼婦には見えないね!」

「お褒めに預かり光栄ですわ。」

 セレアは少し微笑んで、男に対して礼を尽くす。

「ふむふむ……言葉遣いも綺麗だし、割と育ちが良さそうに見える。 小さい頃から教育されて…………あぁ! 君もしかして、"オルゼのアゲハ蝶"か!?」

「あら、ご存知でしたか。」

「ヴィルが娼婦を貰ったとは聞いたが、アンタだったとは!……なるほど、確かに。」

「と言うと?」

「いや、見れば一発で分かるってのは、本当なんだね。
 コバルトブルーの瞳、"両手"でも収まらない爆乳、バックで犯すと最高な尻、そして何より綺麗な紫の長髪。
 なるほど!"世界最高の娼婦"ってのは、本当らしい!」

「ウフフ♡ 最上級の褒め言葉ですね♡」

「自己紹介してなかった。
 俺はヴィルヘルムの兄……と言っても、腹違いだけどね。 "アウレスタ"だ。よろしく。」

「よろしくお願いしますね、アウレスタ様。 セレアティナ=バイオレットです。」

「ヴィルは童貞だからね。 下手だろ? 溜まってるんじゃないか?」

「まだ本番はしてないんです。」

「こんな素敵な体を使わないなんて、勿体無いね。 俺なら毎朝毎晩、抱いてあげるよ?」

「……それは、お誘いですか?」

「そうだ。 俺の奴隷妻にならないか? それなら、もっと気持ち良くしてやれるよ。」

 ヴィルは確かに、かなり奥手だ。
 だがセレアは、そんな彼だからこそ気に入っていた。
 セックスの相手ではなく、謂わば"生徒"のように接しているのだ。

 目の前にいる貴族はハンサムで、確かに魅力的。甘い言葉で誘いながら、自分の物にしようと画策している。

(この人……なんか信用できないわね。)

 だがセレアとしては、申し出を受ける気にはならなかった。女の勘が、娼婦としての経験が、目の前の男を怪しんでいる。

「いえ、私はあの方に借りがあるので。 そのお誘いは、断らせて頂きますわ。」

「……そうか。 もしアイツに愛想を尽かしたら、いつでも俺の元に来で良いよ。」

「えぇ、分かりました。……一つ質問をしても良いですか?」

「何だい?」

「先ほどから言われている単語、奴隷妻とは何ですか?」

「あぁ、ここら一帯の貴族の風習さ。
 縁談が無かったり、貴族の正妻に飽きたり、子供が生まれなかったり。 色んな理由で、貴族以外の女と同居したり、子作りする時がある。」

「ふむふむ。」

「だが、城は貴族の神聖な土地。
 そんな場所に、"下賎な庶民"を住まわせているのだから、女には"代償"を負わせる。 それが、奴隷としての身分と、何らかの魔法誓約なんだ。」

「あぁ、なるほど。」

 話の筋が、少しずつ見えて来た。

「大方、借金を負わされたってとこかな? 庶民で良い女を見つけて、強制的に連れて来る時に良く使う手だよ。
 で、連れて来た女は奴隷な訳さ。 だから主人に逆らえないように、魔法の手枷を付けたりする。」

「だから、自動で体を隠した訳ですね。」

「でも、タダの奴隷って訳でもない。
 君たちは妻として夫に奉仕し、子供を産む身分。 だから、"奴隷&妻"って事で奴隷妻。」

「なるほどぉ。」
(すっごい男尊女卑……!)

 やはり貴族は、未だに根強い前時代的意識に支配されているようだ。
 女性を物としか見ていない者が、大勢居るのだと理解出来る。

 この城は彼女が今いる風呂場と同じ。
 多くの人間が権力と富に満たされた風呂桶に浸かり、どこか狂っている。そんな場所なのだと。

 一般的な考えを持つ庶民を排斥して、無尽蔵に溢れ出る富を享受していれば、こうも成るだろう。
 例え、真っ当な心を持つ"清水"が入り込んでも、シャワーから絶え間なく溢れ続ける"泥水"に握りつぶされて、濁った浴槽の中に消えて行く。

 彼女が居るのは、そんな悪意の浴槽なのだ――。

(貴族の中でも、特に凄い城に来ちゃった……///)

 嫌悪感と興奮が、同時に襲って来た。
 見下され、不当な扱いを受ける嫌悪感と、それすらも快感に変えてしまうマゾヒスティックな興奮。

 自らの肉体に、歪み切った欲情が向けられている事が理解出来る。
 女から全ての自由を奪い、身も心も支配し、孕ませようとする男たちの群れに、自分は紛れ込んでいるのだ。

(それはそれで……興奮しちゃうかも……///)

 ヴィルはそんな男ではないと思うが、やはり城に住む大多数は歪んでいる。
 ドス黒い汚水で満たされた浴槽に、裸で浸かり無防備な姿を晒している。そう考えると、淫魔としての情欲が抑えられなくなる。

「因みに、奴隷妻ではない奴隷と言うのは、この城にいるのですか?」

「まぁ、居ない事もないよ。 男の奴隷は森林の開拓と鉱山に駆り出されてるから、数は少ないけど。」

「では、女は城に居るのですか?」

「あぁ、地下牢に囚われてる。」

「力仕事には使えないと思うのですが、やはりHな奉仕をするんですか?」

「そうだね。 奴隷妻より雑に使えるから、重宝してるさ。 怪我や病気に構わなくて良いから、過激なプレイもしやすい。
 あとは下っ端兵士の性処理とか、その子供を産ませたりしてるね。 ソイツを育てて、次世代の兵士にする。
 乳が出るようになったら搾って、色々と利用させてもらう。」

「子供を産ませて、お乳を搾るなんて、まるで家畜ですね……。」

 搾乳機に繋がれ、乳を噴きながら犯されている自分を想像すると、少しだけ楽しそうだと思ってしまう。

 だが同時に、とても怖く感じる。
 一切の反撃が出来ない状態で一生をそのまま過ごす事になったら、かなり辛いのだろうと、容易に想像できるのだ。

("プレイ"としては悪くないけど、主導権が無いのは怖いわね……。)

 もし自分が人間だったら、今の話を聞いて笑っていられないだろうと思った。
 悪魔としての血脈に裏打ちされた腕力と魔力を以ってこそ、興奮する"余裕"が出来るのだ。

「他にも色々あるが、1番の違いは何だろう?
 う~ん……奴隷妻が体で奉仕するなら、性奴隷は"命"で奉仕する存在って所かな?」

「命で……奉仕……。」

 言葉の響きが、どこまでも不気味だ。
 確かに家畜は、その命を人間に捧げる事を運命付けられた存在。
 だが、それを人間に適用するとなると、急に恐ろしくなる。

「まぁ、成らないに越した事はないと思うよ。」

「警告、感謝いたします……。」

「それじゃ、俺は上がるよ! 抜いてくれてありがとな!」

「いえいえ、こちらこそ約束を守って頂けて良かったです。」

 ここだけの話、セレアは敗北した彼が逆上して襲って来る事も予想していた。
 その為、いつでも彼に反撃する構えを取っていたのだ。

 だが思いの外、素直に負けを認めて風呂から上がってくれたので、正直言って助かった。

(嫌な人だけど、ちょっと身構え過ぎたかな……。)

 今思うと、言葉の節々に棘が有り過ぎた気がして、少し後悔した。
 あからさま過ぎる愛想笑いも、恐らく堪えたのだろう。どこか、寂しそうにしていた気がする。

(ヴィル君……ごめん!)
「アウレスタ様……!」

「ん?なんだい?」

 男が引き戸を潜り抜けようとした時、背後から声がした。
 振り返ると、セレアは右肘を付いて側頭部を支えながら、浴槽のそばにある椅子にて横向きに寝そべっていた。

 どこか妖艶な笑みを浮かべながら、体の前面を男に見せ付けるセレア。
 相変わらず秘所と胸は隠しているとは言え、このポーズが恐ろしい破壊力を持っているのは、想像に難くない。

 括れた腹と、たおやかな尻、程よく肉付いた太腿と、豊かな乳房。その曲線美が全て、横倒しに連鎖しているのだ。

 立って向かい合っただけでは、決して拝む事の出来ない画角。
 その希少性とも呼ぶべき物が、元より豊穣な彼女の体を、どこか神聖に思わせる。

「また勝負しましょうね……ちゅっ♡」

 セレアは、そのまま左手で投げキッスを放った。
 その表情の淫靡さもさる事ながら、彼の目線は顔ではない部分に注がれていた。

 そう、右肘を付いて左手を唇に付けたと言う事は――。

「綺麗なピンク色……舐め回したくなる乳首だ……!」

「やだ、見られちゃった……///」

 偶然を装っているが、勿論ワザとである事は彼にも分かっていた。
 その証拠にセレアは、今もなお自らの乳房を晒している。

 刺し貫くような欲情の視線を浴びせられ、流石のセレアも少し火照ってしまう。

「ウフフ♡ おっぱい見過ぎです……変態なんだから……♡」

「もしかして、誘ってるのかい?」

「残念ですが、私とエッチしたいならゲームに勝たないと。」

「よし!次は俺が勝つよ!」

「頑張ってくださいね、簡単には負けませんよ……!」

 一切の邪魔を受ける事なく、最高級の乳房を拝む事が出来たアウレスタ。
 何はともあれ、プライドの高い女に"自らの体を差し出させる事"に成功したのだ。

 脳裏を包み込む支配欲、征服欲を満たされた事で、彼はかなり気分を良くした。そうして満足げに笑いながら、彼は浴場を後にした。
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