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蹂躙されても想いは捨てきれず

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 ルナンは性奴隷として娼館の大きな部屋を与えられ、毎日身体を目当てにやって来る男達を相手に弄ばれて身も心も疲弊していた。
 それでも快楽に溺れた頭は常にぼんやりとして、欲望の目に晒されても心臓は高鳴り求めてしまうのだ。

 魔族のみならず、人間の姿もあって絶望よりも期待が大きい。
 舌なめずりをする男達は、息づかい荒くルナンを見据える。

「金払えば、王子様とヤれるんだもんなあ」
「魔族は金払わなくてもヤれるんだろ?」
「当然だ! 我らは勝者だからな!」
「だよなあ。ハハハッ」

 人間と魔族が仲よさそうに談笑をするなんて珍しい光景だが、この館では驚くような事ではない。 
 種族関係なく目的が同じだと、意気投合する輩が多いのだ。

 ルナンはどうでもいいとなげやりな気持ちで、今日も朝から男達の相手をするべく、足を開く。
 罵声を浴びせながらペニスをルナンに突き出し、口や尻穴に突っこんで乱暴に突き上げたり、全身にザーメンを浴びせて嗤う男達は実に愉しそうで、そんな獣達に玩具にされているルナンの耳に、突然轟音が轟く。

「エルレイルはどこだあああ!!」
「うわあああああ!!」
「なんだあの男は!?」

 ――この声?
 
 
 ルナンを蹂躙していた男達も次々と逃げ出し、開け放たれた扉の先に、見知った男の姿が見えて声をあげた。

「トルステン!」
「ルナン王子か! エルレイルを知らないか!?」

 トルステンは相変わらずエルレイルに執着しているらしい。
 ザーメンまみれのルナンを気にもとめず、しきりにエルレイルの居場所を問い続けてくる。
 この館にいるのだが、生憎会わせてくれることはほとんどなく、今彼がどうしているのかは分からなかった。
 それでも騒ぎを聞きつけた主人が姿を現したので、トルステンの意識は主人へと向けられる。

「おいおいおい! これじゃあ商売ができねえじゃねえか!」
「お前!! エルレイルをどうしたんだ!?」
「やだなあトルステン様、そんなに暴れてどうしちゃったんですか?」

 主人のヴォルフに付いてきたらしい、イスベルが小首を傾げてわざとらしい口調で煽るので、トルステンはさらに興奮した様子で声を荒げた。

「この館にいるという事は知ってるんだ!! あいつはどこだ!?」
「呪術師様、申し訳ないが彼はこの館でも目玉商品なんだ。たとえ大金を積まれても渡すわけにはいかないなあ」

 ヴォルフは、その丸太のような肉体を揺らして、馬鹿にしたように嗤っている。
 隣で腕を組んで佇むイスベルも同じように嗤って、主人の傍によりそうように歩み寄った。
 部屋の前で繰り広げられる無意味な争いに、ルナンはため息をついてそっぽを向くと、寝台の上に仰向けになって身を預けた。

 もうどうでも良かった。
 愛したあの人はいま頃、恋人と甘い日々を過ごしているだろう。
 人々は自分に失望して鬱々と暮らしている。
 この世は魔族のものとなったのだ。
 ならば、いっそ人間は滅んだ方がマシなのではないか。

 そんな不穏な考えばかりが脳内を駆け巡っている。

 やがて静かになったかと思うと、トルステンがエルレイルの傍にいる為に、自らの力を封印したという話しを、イスベルから聞いて驚愕した。

「どうしてそこまで」
「さあ? よほど好きって事じゃない? 王子が魔王を愛してるみたいにさ」
「そ、それは……」
「そうえいば、明日魔王が君の様子を見にやってくるって」
「え!?」
「もちろん恋人と一緒にね」
「……どうして」

 もちろん、暇つぶしでしょ。
 そう言い捨ててイスベルはルナンの腕を掴むと、強引に風呂へと連れ出した。
 ルナンの世話役はいるのだが、たまに気が向いたイスベルがこうして、何故か世話役を買って出るのだ。

 ふと、ヴェルターやラントはどうしているのかと考えるが、思考を止めた。
 以前聞いた話では、ヴェルターは件のオークに、ラントはゴブリンに差し出されたと聞いたので、想像すれば悪い光景しか浮かばず、顔を振って唇を噛みしめた。

 風呂場へ向かう途中、魔族に蹂躙されている人間の男達が、獣のような声で喘ぐのを聞いて、股間が反応するのをイスベルに笑われた。

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