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第二章<歪む世界と闇の国の王の執着>
聖者の乱心
しおりを挟む部屋を飛び出して我に反る。
服は乱れ、全裸ではないが下半身が丸見えの半裸状態で、はたから見ると変態だった。
風呂場行ってから地下牢だな。
こんな格好でグレゴールの前に出たら、どんな反応をされるか……想像すると冷や汗が背中を伝った。
さっと身体を綺麗にして、改めて地下牢へと早足で向かう。
すでに解放されたロベルト王子と団長が、腕を回したりして文句を言っていたり、グレゴールが背筋を伸ばしてヴァルターと会話を交わしていた。
俺はそっとグレゴールの元へ歩みよる。
視線が会うと微笑みかけられた。
「やあ、ナオキ」
「グレゴール、解放されて良かった」
「うん。そうだね」
朗らかな笑顔がなんだがまぶしく感じるのは、やっと自由にされた喜びが伝わってくるからかな。
両肩を掴まれてぎゅうっと抱きしめられる。
……グレゴールの身体、あったかい。
俺も背中に腕を回してそのぬくもりを感じる。
こうして身体をくっつけてるいる時も、視線を床に巡らせていたのだが、指輪落ちてないな。
誰かに拾われたのかも知れない。
まさか、グレゴールに聞くわけにもいかないしな。
「もう放さないよ」
「え?」
低い声で何事が囁いたのが聞こえたけど、なんて言われたのか分からなかった。
グレゴールから離れようと身を引くと、腰を力強く抱かれてしまい、自由がきかない。
なんか怒ってるぞ!
「ちょ、放せよ!」
「放さない。だってこんなの見つけちゃったんだ」
「あ……それは」
金色の光る指輪。まごうことなき俺とゲルトラウトの結婚の証だ。
まさかグレゴールが拾っていただなんて。
牢獄に入れられて疲労している筈なのに、その目はギラギラと輝きを放ち、俺は足が震えているのに気付いた。
俺、グレゴールが怖いんだ。
身体がそう言ってる。
「闇の王の側近よ! 王を広間に呼び出してくれ!」
*
グレゴールはゲルトラウトを呼び出し、二人は城の大広間で対峙した。
俺はグレゴールの術で手首を鎖で拘束されてしまい、身動きができず、壁に背を押しつけて見守る事しかできない。
「お前、ナオキの事となると性格が変わるな、少しは落ち着いたらどうだ?」
「黙れ! 勝手な真似をしたくせに!」
ゲルトラウトから口を開くと説得を試みたが、無駄に終わる。
グレゴールから金色の光が溢れ出すのが見えた。
こんな魔術を見た事がない。詠唱もなく、ただ意志だけで解き放たれる強力な波動。
誰が見ても、危険極まりないものなのは分かるだろう。
「に、逃げろゲルトラウト!」
「――!」
光がゲルトラウトを包み込み、音もなく金色の光の塊ができあがり、それはグレゴールの元へ戻ると彼は口か
ら吸い込む。
ゲルトラウトは呆然とした様子でグレゴールを見据えて、ふらつく足を地にこすりつけてこらえた。
「お前、今のは」
ゲルトラウトの震える声に、グレゴールは微笑を浮かべて答える。
「お前の魔力を貰ったよ、ナオキもこの国も僕のモノだ」
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