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第二章<歪む世界と闇の国の王の執着>

現れた負の存在

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捕らわれたグレゴール達と、まだ面会は許されていなかった。
まさか拷問されたりしていないよな。
ゲルトラウトがそこまでするとは思えないけど、側近をあんな目にあわせるくらいだから心配になる。
ヴァルターもどうしているのか気がかりだ。

ゲルトラウトに直接聞いても、はぐらかされるだけだし。
あまり刺激するような事を言っても危険だと思うから、大人しく従うしかないんだけど、もどかしい。

俺はゲルトラウトとの婚姻の儀の為、純白の衣装に臣下達によって着替えさせられ、祭壇の前に進み出ると、ゲルトラウトが隣に並ぶ。

黒い衣装なのは同じだけど、質素で宝石の類いも胸元に飾られているだけだ。
臣下の二人に見守られ、指輪を交換する。
誓いの言葉はない。

見た目通りの、形ばかりの儀式なのだ。
それでもゲルトラウトに望まれれば、受け入れる。

ゲルトラウトが安心してくれるなら……。


昨夜、ベッドの中でこう聞かれた。

「お前は誰を想う?」
「誰をって?」

覆い被さってくるゲルトラウトの背中に腕を回して、肌を弄り合う。
俺の身体は術のせいで敏感になりすぎて、指でなぞられるだけで、甘えるような声をおさえられない。

自分が誰かを好きなのかっていう意味なら――答えは出なかった。

顔を振って「わからない」と呟くと、頭を撫でられてキスをされる。
その仕草はまるで、自分を選べと言われているようで……。

そっと手を握られ、婚姻の儀を行うと一方的に宣言された。
いつもより小さい声に、こっちが恥ずかしくなってしまった。

いいよ、と返事を返して今に至る。

指輪の交換か……どの世界でも、指輪って誓いの証なんだなあ。
と感慨深げに、左手の薬指にはめられた指輪を見つめていると、肩を掴まれて引き寄せられ、唇を奪われた。

誓いのキス……。

「んむう」

――どうして、彼は俺を求めるのだろう。

ゲルトラウトが俺をどう思っているのか、少し気になった。
俺をどう思っているんだって聞いたら、どんな答えが戻ってるのか興味はあるのだ。


婚姻の儀は滞りなく終わり、寝室に抱き抱えられて連れて行かれる。

今夜も身体を繋げるのだ。
でも、ちょっとだけ特別な気分でもある。

そう意識しているのが分かってしまい、もう頬が熱くなっていて困った。

ベッドに降ろされた時、ゲルトラウトが頭を手で押さえて呻き始める。
俺は狼狽えてベッドから飛び出ると、その背中をさすった。

「どうしたんだよ! 大丈夫か?」
「……く、うう……」

小刻みに震える四肢、苦しそうな声。
背中に触れている手の平から伝わる体温は、やけに熱くて焦った。

「ゲルトラウト!」
「う、ぐ、ナオキ逃げ……」

言葉が途切れて少しの間の後、ゲルトラウトはゆっくりと俺に向き直った。

虚ろな目が、俺を見据えている。
その濁った瞳を見て、確信した。

これは、ゲルトラウトじゃない。

「まさか、邪神?」

そう呟いた俺に、ゲルトラウトの顔をした男は、口端を吊り上げたかと思えば嗤い始める。

その声は、脳内に直接響くよう不快な声で、俺は両手で耳を塞いで震えた。

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