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無慈悲な運命

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「お前がルアに化けていたというのか!?」

ガッと首を掴まれて背中を壁に押しつけられた。
アダルは盛大に咽せながらも口を開く。

「お、おちついて、下さい」
「貴様、俺の命を狙うために踊り子に化けていたのか! 卑劣な男だ!」
「は、話をどうか、きいてください……お、おゆるしを……」

全裸で壁に押しつけられて許しを請う。
我ながらなんて無様な姿だ。

首を掴むシルヴィオの手に、更に力が込められていく。

息が上手くできない。

「お前の言葉には、なんの価値もない!」
「――っ」

さらにきつく首を締め上げられ、アダルは死を予感する。

――わたしが、死ねば、償いになりますか……?

アダルが意識を沈めるその時"失敗しちゃったね"という声がした。

その後アダルは地下牢へ幽閉された。

日が差し込まない為、時間の感覚がわからず、食事が運ばれてくる感覚で計るとすると、恐らく二日経つ。
薄地の衣服を雑に着せられており、寒さに震えていた。

監視役の兵士達に話かけても応じる者はおらず、普段の態度を反省しつつ焦ってしまう。

――せめて、あの鏡があれば……。

陛下の部屋に落としたのであれば、見つかって調べられている可能性がある。

「出ろ」

考え込んでいると牢屋の扉が開かれた。
外に出るように促され、力の入らない足で兵士に腕を引っ張られ
、階段をゆっくりと上っていく。
連れてこられた先は王間であった。
拷問を覚悟して王の前に膝をつくと、顔を上げるように命令されてそっと上げた。

王は玉座に腰を落ち着けており、周囲に臣下の姿はない。
強いて言うならば、壁際で傭兵上がりの屈強な兵士達が、こちらを伺っているのが見える。

アダルは異様な状況に疑問を抱く。

――罪人を裁く際は、少なくとも神官は見届ける筈だ。

何故、王と兵士しかいないのだろう。

シルヴィオが玉座から立ち上がると、一歩、前に進み出て口を開いた。

「お前には聞きたい事が山ほどある。まずは、どうやってルアに化けたのか、お前がルアの時に傍にいたあのアダルは誰なのか。そして何故、俺の命を狙ったのかあらいざらい話せ!」

陛下の声音はいつもよりも大きい程度だが、怒声にしか聞こえない。
アダルは唇を引き結ぶ。

――フェリクスの存在は伝えてはならない、処刑されてしまう。

脳裏に茶髪青目の青年を思い浮かべる。
その彼が今、どんな仕打ちを受けているのかと考えると、胸がずきりと痛んだ。

アダルは意を決して言葉を発する。

「全てお話致します……全ては、陛下を手に入れようとした私が一人で行った事です」
「……本当にお前一人でか」
「はい」

アダルは頭を垂れて淡々と説明をする。

偶然手に入れた秘薬を使い、若返った事。
金で雇った民に協力してもらい、魔具で自分の姿に変身してもらっていた事。
元に戻る前に、陛下と共に無理心中をしようとした――そして、最近城内に入り込んだ不審者や、鳥の襲撃は、その秘薬と魔具を狙った盗賊の仕業である事を伝えた。

アダルは、徹底してフェリクスと、その主人らしいジェイムの存在を隠す事にしたのだ。
もっとも鏡と短剣の毒を調べられれば、無意味な行為になる可能性は高いが、今はこうするしかない。

――フェリクスの処刑だけは避けたい。

あの青年は、自分と同類なのだと感じていた。

「協力者はどうした」
「逃がしました」
「その秘薬と魔具はどうした」
「すでに破棄いたしました」
「では、短剣はどうした」
「……っ」
「隠し持っているなら、他にも使用した魔具があるなら白状しろ」
「……短剣は処分しました、他にはもうございません」
「ほう?」

シルヴィオの言葉からすると、短剣も鏡も、奴が魔術を行使したのか、すでに回収したようだった。

しばしの沈黙が流れた後、シルヴィオがふいに声をもらす。

「ふふ」
「?」

その声は笑い声であり、だんだんと声は大きくなっていき、やがて爆笑に変わる。

「はははっはははははっ」
「へ、陛下?」
「まさか俺が、お前の若い頃の姿に虜になるとはな!」
「……っ」
「とんだ茶番だな! なあ、アダル?」

ずんずんと前に歩いてきたシルヴィオが、アダルの顔を乱暴につかむ。
するどい痛みが頬に走る。
交わる視線に心臓が跳ねた。

緑の瞳が細められ、その口元がつり上がる。

「へ、へいか?」
「お前と出会って十年くらいか。俺を想い続けて適わない恋心に気が狂ったか? もっとも俺はお前に告白などされた事はないがな」
「……っ」

残酷な言葉に、アダルの胸は切なく痛いほどに締め付けられた。
呼吸が乱れるのがわかる。
乱暴に手を離され、その勢いで前のめりに倒れた。

「うぐっ」
「お前に最大の屈辱を味わわせてやろう。それくらいしなければ、俺の気が済まん」

玉座に座し直したシルヴィオが、足元に用意されていた酒瓶を手にすると、それを掲げた。
アダルは上半身を起こして様子を伺っていたのだが、いつの間にか兵士達に囲まれていたのに気付いて、思わず小さな悲鳴をあげる。

「ひっ」

彼らはそれぞれ性器をさらけ出し、アダルにつきつけていたのだ。

「シルヴィオ様、こ、これは一体!?」
「俺を愛しているなら、他の者に感じる筈はないよな? ルアはなかなかの淫乱だったからなあ、無理だろうが」
「そういうわけでアダル様」
「俺ら五人でたっぷり可愛がってあげますよ」
「「「ひひひひひっ」」」

「存分に可愛がって貰え」

シルヴィオのこの言葉が合図となり、アダルは体格のいい兵士達五人に輪姦された。

――まさか、こんな仕打ちを受けるとは。
――こんな私に、勃つ輩がいるとは。

そんな冷静な思考はすぐに飛んでしまった。

性交用スライムで尻孔を掃除された後、四つん這いで尻と口の両方にぶっといイチモツを突き入れられ、串刺しで前後に激しく犯される。
突かれる度にアダルのペニスがぶるんぶるんと揺れており、その感覚をアダル自身も感じていた。

――ふ、太すぎるううっ♡ か、かんじたくにゃいのにいいっ♡

「おぶっ! ほぶうっ♡ ぐぶう! おごっ♡ おごおおっ♡」
「肌すべすべじゃん、さすが陛下の為に手入れしてたんだなあ」
「おおおっ! イイしめつけえっ性欲処理にはうってつけだな!」
「ぶぶぼおおっ♡」

――あ、あしょこにいいっっ♡ こ、こすられてえっつきあげられりゅううっ♡

感じる場所を執拗に巨根でなぶられて、アダルは意図せず絶頂に導かれ、気付けば盛大に射精をしていた。

ぶびゅるるるるるるるるっ!!

「ひぐうううううっ♡」
「うほ、イったイったあ!」
「ぶじゅるうううううっ♡」

兵士のペニスをしゃぶりながら、尻の奥に挿入されたイチモツを強くしめつけてイき狂う姿を嗤われる。
涙を我慢できず、涎と共に垂れ流しながら内心で愛する王に赦しを請う。

――お、おゆるしくださいいいっあ、あなたのまえで、これ以上、痴態をさらしたくないのですううっ!!

「うお、も、もう出る!」
「俺もだ!」

身体を貫く二人の兵士のペニスが更に膨張し、アダルの中で爆ぜて大量の精液を注ぐ。

「うぶっ!! んぶうううううっっ♡」

完全に理性を失ったアダルは、兵士五人に好きなようになぶられ、最後には目隠しをされて尻孔と口を蹂躙された。

目隠しをされて犯されている最中、相手は無言だった所為か、アダルは喘ぎ泣きながら言葉を零していた。

「わたし、は、へいかの、傍にいられれば、それでよか、ったのです……も、うしわけ、ありませ……んぶううっ」

唇を塞がれて舌を絡められて激しい口づけをされる。
ぬちゃぬちゃと絡まり合う感触と熱さに、アダルはもう何度目かも分からない絶頂をして射精していた。



意識が朦朧とする中、目隠しをしたまま放置されていたアダルの元に何者かがやってきて、一言告げる。

「陛下の命令だ、城を出て行け」
「……っ」

それは、二度と陛下と会うことができないという宣告と同じだった。

――シルヴィオ、様……。

アダルは泥の中に沈むような感覚に陥り、意識を手放した。



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