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第3部 変人令嬢のお陰で辺境編成は大激変! 周辺に生息しているメルヘンなもふもふたちよりも可愛いがすぎる新妻に、辺境伯の偏愛が大変です!

うちのこと離さんといて

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 ……くそ……。自分で招いたとはいえ、私はなんと愚かなことをしたのだ。



「アビス様、それやったら、球根とちゃいますやろか……」

「あっ、そうそう、これだ! ほら、見て下さい、この植物図鑑にも載ってますね」

「ほんまや。デェマルカンムリスイセン言うんどすなぁ。うちはまだ見たことあらしまへん」

「春間近の雪山でよく見かけますよ。群生しているとそれは見事で」

「うわぁ、早よ会いたい」

「くすっ、マーガレット様は本当に自然がお好きなんですねぇ」

「へえ。アビス様、珍しい図鑑を見せてくらはっておおきに」

「たまたま遠縁のおじが道楽で自分で図鑑を出すほど植物が好きでして。まあ、このデェマル山脈の植物に限った事なんですけどね」

「うちが知らんかった植物が全部載っとりましたなぁ。ほんますごいお人どす」

「ふふっ、会ったこともないおじとはいえ、褒められると嬉しいものですね。よろしかったら、これはマーガレット様に進呈致します」

「ええんどすか?」

「はい、お近づきのしるしに」

「おおきに!」



 それ以上近づかなくていい! いや近づくな!

 喜んでいるマーガレットの手前口には出せぬが、私の怒気にいよいよアビスが気が付いたようだ。

 へらっと笑い、戦意のないところを示すのはいいが、正直、私よりマーガレットと話が合っているのが、本当に腹立たしい……!

 どうしてアビスがいる席にマーガレットを呼んでしまったのだ、私は!

 こうなることが予想できたろうに。



「だんさん、うち、こないな素晴らし図鑑貰うてしもうた」

「よかったな、マーガレット……」

「だんさん、アビス様を紹介してくれはって、ほんまおおきに!」



 き、君がそういうのなら、やぶさかではない……。

 大事そうに図鑑を抱きしめる君も、可愛いな……。



「ほんならうち、お邪魔にならへんようこれで下がらせてもらいます。

 アビス様ほんまにおおきに。ゆっくりしていってぉくれやす」

「お言葉に甘えさせて頂きます」



 マーガレットが丁寧な仕草で礼をして部屋を後にしていった。

 すかさずアビスが口を開いた。



「そう睨まないでくれよ、クリスチャン。君たちの間に水を差すつもりは……」



 アビスはここからほど近い海沿いの平地を領とするオコナー男爵の第一令息。

 魔物討伐の際から何かと顔をあわせることが多く、年若く性格もさっぱりとして気さくなので、貴族では数少ない心やすい友人となっている。



「それで、なんの用なんだ! 私の前で散々私の妻の関心を奪っておいて」

「うぅ……、き、厳しいなぁ。植物図鑑はたまたまおじが……」

「遠洋海峡のように広く波打ち際のように浅い縁でも遠縁と言うのだな、貴族の世界では」

「ク、クリスチャン……、これ以上いじめないでくれ。俺の立場も考えてくれよ……」



 アビスが言う事には……。

 西側の辺境タルカット連邦を治めるクラークネス辺境伯が、警備兵団の派遣を要請している。

 これまでも何度か派遣しているが、出れば叩くという対処しかできておらず、抜本的な解決までに至っていない。

 我がデコラム領の魔物鎮圧が成功したので、その力を貸して欲しいということのようだ。

 クラークネス伯爵はデコラム家と違い、長い間西の辺境地を守ってきた一族。

 その権威と誇りがあるにもかかわらず、兵士上がりの私に協力を仰がなくてはならないことが面白くない。

 それでわざわざ仲介にアビスを立て、どうにか体裁を保ちつつ丸く収まるように話を進めたいのだろう。

 しかし……、デコラム領の魔物発生要因が川の流れを変えてしまったことであるならば、タルカット連邦でも同じようなことが起こっているとも考えられる。

 もしそうなら、むやみに魔物を切り捨てることも、兵士たちを疲弊させることもせずに、タルカット連邦を沈静化できるかもしれない。

 だが、それには、マーガレットの力がいる……。



「クリスチャン、どうか俺の顔を立ててくれよ。これまでのよしみで」

「少し考えさせてくれ」

「ク、クリスゥ……」

「考えると言っている。そんな間抜けた声を出すな!」

「……あっ、そ、そうだった! うまい酒を持ってきたんだった、忘れてたよ!」

「はあ……。わかった、泊まっていけ。ただし、すぐに答えが出るとは思わないでくれ」

「わ、わかったよ……」



 まったく、クラークネス辺境伯がそうしてくれと、ただ普通にと言ってくれれば、私もアビスも面倒なやりとりをせずにすむのだが。

 まあ、それが権威社会のしがらみか。

 窓の外から声がして、私は席を立った。

 窓の向こうで、マーガレットが図鑑を手にリントと植物を見ていた。

 ぬう……、リントのやつ、距離が近すぎるのではないか……?



「若奥様、これですよね? 本当だ図鑑に載ってますねぇ」

「デェマル山脈の植物がぎょうさん載ってるんや。こないに詳しい本は初めてや」

「へぇ~、どれどれ……」



 リント……ッ!!

 図鑑を開いているマーガレットにリントが顔を寄せたところで、私は一も二もなく窓を開け放っていた。

 私の視線に気づいたリントが慌てて身を引いた。



「あっ、だんさん。もうお話すんだんどすか?」

「ああ、私もその図鑑とやらを見せてらおうかな」

「ほんま? うち嬉しい!」



 ふっ……! これまでは仕事が忙しいせいもあってマーガレットの趣味にあまりつき合ってやることができなかったが、これからはリントに代わって私が植物採集に付き合うとしよう。

 窓辺から離れてアビスを見た。



「一応聞くが、お前も来るか?」



 すかさず首を横に振るアビス。



「俺のことはお構いなく。……まだ死にたくないし……」



 お互いそれが賢明だな、アビス。

 私も殺したくない。

 今日はだんさんとぎょうさん過ごせて嬉しかったわぁ。

 うちの好いとることに興味もってくれはるから、ほんま優しいなぁ……。

 ……だんさん。

 大好きや……。

 そやけど、お客はんが来とったのに、放っといてよかったんやろか……。

 節々になんや考えこんどった様子やったし……。

 大事な仕事のこと考えてるんやろな……。

 今夜はきっとアビス様とお酒をお召しになるはずや。

 邪魔にならへんうちに、お休みの挨拶しとこか。



「うちどす。入ってもええどすか?」



 だんさんの部屋を訪ねたら、すでにシャツを着崩してくつろいではった。

 お酒が回ってほんのり色づいてはる。

 大人っぽいわぁ……。



「おくつろぎのとこ申し訳あらしまへん。お休みの挨拶だけさしてもらいに来たんやけど」

「マーガレット……。ちょうどよかった。少し話があるんだ。部屋で待っていてくれないか?」

「へえ……」



 一旦部屋に戻ってしばらくすると、きちんと服を整えただんさんがうちの部屋へやってきた。

 えらい顔赤いなあ。お水でも差し上げたほうがええやろか……。

 水差しからコップに注いで、だんさんに手渡した。



「ありがとう……」

「それでお話ってなんどすやろか」



 だんさんがしばらくじっとコップを見つめた後、うちを見た。



「アビスに……、君の力の話をしても、構わないだろうか?」



 え……っ?

 だ、だんさん、なに言うて……。



「実は今日アビスが来たのは――……」



 ……だんさんが……、言うてること、は、わかる……。

 そ、そやけど、うち……。

 だんさんやから、話ししよ思うたのに……。

 そやのに、そない……、そない簡単に……。

 ……はあ、あかん……!

 気ついたら、涙で、前が……。

 なんも、なんも見えへん……!



「マ、マーガレット……!」



 うち、つらいわ……!

 思わず、部屋を飛び出した。

 後ろからだんさんの声聞こえたけど、よう振り向けへん。

 わき目もふらずに屋敷を飛び出して、暗い森の中に駆けこんだ。

 うちの気持ち、伝わらへんのやろか……。

 だんさんだけが特別言う気持ち……。

 思ってるんうちだけやったんやろか……?



「マーガレット、待ちや!」



 声がして振り向いたら赤はんやった。



「なんで泣いてんねん。なにがあったんや」

「赤はん……」

「こないなとき、うちは役に立てへんのや。待っとき、今黒はん呼んだるさかい」



 赤はんが呼んでくれたお陰で、黒はんがすぐに来てくれた。

 うちはすぐさま黒はんに抱きついて、……縋り付いてしもうた。



「ううっ、黒はん……っ」

「どないしたんや。おまえ泣かしたんは誰や。クリスチャンは何してんねん!」

「ほんましばくで! そやさかい赤はんには任せられへんねん!」

「なんや、白はん、来とったんか」



 気が付くと、白はんが隣に立っていた。

 うちの袖を口でつかんで、ぐいぐい引っ張ってくる……。



「今からでも遅ないから、こっち来なはれ。こないに泣かす知っとったら、是が非でもわい納得せーへんかったで」

「身勝手はよしてくれやす。マーガレットはもうクリスチャンの嫁なんや」

「だぁほが! そのチャンチャラチャンとやらはどこにおんねん! こんな可愛らしい妻放っといてどこでなにしくさってんねん!」

「ほんま口が悪おすなぁ。口悪いのんは頭悪いからやて知らんのかいな」

「言うたな、煌々と輝くこの雲をも貫く一角で、一思いに串刺しにしたろか!」

「やれるもんならやってみなはれ。その瞬間あんさん液状化やのうて蒸散しますえ!」

「そのへんにしとかんかい。本人来よったで」

「――マーガレット!」



 声の方を振り向いたら、だんさんがランプ片手に走ってくるんが見えた。

 白はんを見て驚いてはる……。



「ま、まさか……、ユ、ユニコーン……!」

「チントンシャンに呼び捨てされる覚えあらへんわ! マーガレット泣かすてなにしてくれてんねん!

 返答によっては今すぐわいの白角がチンチロリンの血で真っ赤に染まることになるで。よう覚悟決めてから答えんかい!」



 白はんがだんさんに向かってドスドスて蹄を鳴らしてる。怖い顔して耳後ろにぴったり伏せてはった。

 あかん、えらい怒ってはる……。

 だんさん……。

 うちのこと心配そうな顔してこと見てはる。



「……マーガレット……。すまなかった……。君をこんなに悲しませるなんて思わなかったんだ……」

「このスカポンタンのキンコンカンがぁ! 何しよったんじゃあ!」

「やかましぃてかなわんなぁ、黙らな溶かしますえ!」

「白はん、赤はん、話し聞こうや。ためにならんで」



 だんさん……。

 まだ、うちのこと大事思うてくれるんやろか……。



「話をしたいんだ……。そっちへ行ってもいいだろうか……?」



 うちかて、そばに行きたい……。

 だんさんのそばにおりたいんや……。



「……うちは……。うちはだんさんやから話しましたんや……」

「……ああ」

「だんさんやったら他の誰にも話さへん思うたさかい……。約束守ってくれる思うたさかい……」

「マーガレット……」

「だんさんがこのこと、誰かに話してしもうたら、うち、もうここにはいられまへんのや」

「えっ……!?」

「せや。わしら、そういう約束やねん」



 驚いて目を見張るだんさんに、黒はんが続きを話してくれた。



「約束したんは、わしの森でマーガレット助けたときや。わしらんことは、誰にも話さへん。話してもうたら、こっちの世界に来てもらうで言うてな」

「そやから、うち、ここへ嫁ぐことなって、だんさんのこといっちゃん好きやさかい、みんなに聞いたんや。

 だんさんにだけは知って欲しいから、話してええかて……。ほんで……」

「ほんでそれも知らんと、このアンポンタンのコンコンチキが喋りくさったんかいな! 串刺しや!」

「ちょい待ちや。クリスチャン、もう誰ぞ話してもうたんか? 

 あんさん、ちゃんと約束守うてくれたさかい、串刺し言うんはちょい可哀想思うわ」

「いや、ついさっき話してもいいかとマーガレットに尋ねたところで……。

 ……そうだったのか。

 マーガレット、すまなかった……。

 知らなかったこととはいえ、君をこんなに動揺させて傷つけてしまった……。

 私を許してほしい……」

「今さら何言うとんねん、このトンチンカンのピンポンパンがぁ!」

「ほんまやかましぃな! トンチンカンはあんさんやで! 愚弄してるつもりかも知らへんけど、言うてること半分違うとりますえ!」

「はあぁ? なんやてぇ!? どれが間違うてるんや、言うてみい!」

「ああしんど! あほに言うたかて意味ないわ!」

「あほ言うほうがあほや言うこと知らんのか! このどあほ!」

「あんさんみたいなんを、セッセッセのヨイヨイヨイ言うんや!」

「ばっ……! ばかにしくさってからに! 今日こそは許さんでぇ!」

「うわ、意味わかってへん。ほんま正真正銘のあほや!」




 ――ぶふっ! て、噴き出す声が聞こえた思うたら、だんさんが顔背けて肩震わしてはる……。

 あ、あかん……。うちも何言おうとしとったんか忘れてしもうた……。

 と、とりあえず、白はん大人しゅう宥めとこか……。




「白はん……、うちのためにそない言うてくれはっておおきにな。お陰で、うち涙止まったわ」

「そ、そうか……。ほんなら、まあ、ええわ……!」



 白はんがうちに顔を頬をすりすりとこすりつけてきた。こないして大人しゅうしてたら、白はんも可愛らしゅうおますのになぁ。

 白はんの鼻筋をなでなでしていたら、黒はんが話を戻してくれはった。



「とにかく、まだ話してへん言うことやったし、今回はええんちゃう? クリスチャンも大事や思うから、こうしてマーガレットんこと追いかけて来たんやろ?」

「ああ。……マーガレット、黒はん、それに赤はん、白はん。理由も知らずに勝手なことを言ってしまってすまなかった。

 私はこの秘密を守っていくと誓う。だから、マーガレットを連れて行かないでくれ。

 マーガレット、君がいない人生なんて、私にはもう考えられないんだ。

 君の信頼を取り戻せるなら、どんなことだってする。だからどうか、私を許してもらえないだろうか?」



 だんさん……!

 うちもや……!

 駆けだして、だんさんの腕の中に飛び込んだ。

 温ったかい、だんさんの手、大好きや……!

 だんさんがすかさず、ぎゅう、してくれはった……。

 うち……、うち、だんさんが大好きや!



「なんでデコラム家やねん。わいんとこかてクラークネス家言うんがあるんやで。わいが先マーガレットを欲しい言うたやんか」

「そらよう話おうて全員納得済みやろ。二人見てみ。蒸し返すなんて野暮やで。白はんも赤はんも、もう言いっこなしや」

「……マーガレット不幸にしたら、一族もろとも滅ぼしたるさかい、覚悟しとき」

「うちのなわばりに手出したら許しまへんえ。

 ユニコーンの処女好きは、ほんま気色悪うてかなわんわ。このご時世や言うんに、思考が完全にオッサンや。

 ああくさいくさい」

「はあ!? わいのどこが臭いんや? いつでも全身おしゃれなフローラルの香りやで!」



 ――ぶはっ! て、だんさんがまた肩震わしとる。

 なんや、だんさんが笑ろうてると、うちも明るい気分になる……。


 心、軽うなる気ぃするなぁ……。



「……帰ってもしばらく思い出し笑いしそうだ」

「なんでチョンチョロリンは笑うとるんや。

 せやけど、事あるごとにほんま思い出さなあかんで。わいらとの約束は絶対なんやで」

「そんこと関してはうちも同意見や。約束言うんは必ず守らなあかん。それが《信頼》や」

「せやで。《信頼》は違えたらあかんもんや。せやけど《信頼》さえあったら、種が違うてもわしらとマーガレットみたいに心と心で繋がれるんや。クリスチャンとマーガレットもそうならなあかんいうこっちゃ」



 黒はん……。そやな、うち、だんさんのこと心から《信頼》する。

 そう決めた。

 だんさんが、真剣な目して、うちの手を取らはった。



「君が駆け出して行ってしまったとき、本当にショックだった。君を失うかと思うと辛くて、胸が苦しくてたまらなかった。

 今度何かあったときには、ためらわず私に話してほしい。どんなことも、一緒に解決しよう。

 私は君と、君との約束を生涯守り続けるから」

「へえ……、うちもだんさんのこと、ずっとずっと信じる。ずっとずっと、そばにおる」

「……ああ……! 一緒に帰ろう……」

「へえ、うち帰る。もう絶対、うちのことを離さんといて」

「……ああ!」



 だんさんが、優しゅう、ぎゅうぅて、抱きしめてくれはった。

 嬉しい……。ほんま嬉しい……!

 言葉と言葉で確かめて、心と心で繋がるて、ほんま泣きたいくらい嬉しいわぁ……!



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