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第17話

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ピンポーン。

チャイムの音に目覚めると朝になっていてオレはまた一人ぼっちだった。

ピンポーン。ピンポーン。

遠慮がちにチャイムが続けて鳴らされた。

ピンポーン。


オレはベッドから起き上がり、ベッド脇に落ちていた制服のシャツとズボンを身につけて、ノロノロと立ち上がり玄関のドアを開けた。

制服姿の中田が立っている。

「おはよう」

たんたんとした、いつもの中田の顔だ。

「学校行こうぜ。迎えに来た」

学校…また…朝が来た…。

「メシ食った?」
「…まだ」
「食おうぜ」

中田がコンビニのレジ袋を差し出す。

「メロンパン。オマエ好きだろ」



台所で中田がコーヒーをいれている。
ベッドのフチに腰掛けて見るともなく眺める。

「眠れた?」
「うん」
「食えよ。メロンパン」
「…ああ」

メロンパン。メロンパンね。
袋を開けて一口かじる。
ジャリッ砂糖が甘い。
モソモソモソモソ。
口の中でモソモソする。

メロンパンは灰谷が好きなんだ。
だからオレも好きになった。


「・・・・・・れば」

え?なんか聞こえた?
顔を上げれば中田がオレを見ている。
オレも中田の顔を見つめる。

「シャワー浴びればって言ったの」
「ああ…」
「それ食べれねえなら、学校に持って行こうぜ」
「え?」

ふた口ぐらいかじったメロンパン。

「ちょうだい」
「ああ」

中田はメロンパンの袋をオレから受け取ると口を輪ゴムで縛り、レジ袋に戻した。

「シャワー浴びれば?スッキリするよ」
「うん」

返事はしたものの、立ち上がる気力がわかない。

「ズボン置いてけよ」

へ?ズボン?

勝手知ったるって感じで中田が押入れからアイロンとアイロン台を取り出す。

「アイロンかけてやるよ」

アイロン?見れば制服のズボンにはクシャクシャにシワがついていた。

「時間ねえぞ」

しょうがなくオレは立ち上がり、ズボンを脱いで中田に渡す。

「ワリぃ」
「いいって」

中田が手際よくアイロンをかけはじめる。

「…オカン」
「やめろ」

間髪入れずに返ってきた。
中田。いいヤツだ。


洗面台の鏡の中に疲れたオレの顔が映る。
首筋にある灰谷の指の痕は少し薄くなったように見えた。
シャツを脱ぐ。
カラダについていた〈しるし〉も、みなかなり薄くなっていた。

不安がこみ上げる。
このままもう灰谷には会えなくなる不安。予感。
つうか…オレが見ている灰谷は…。

考えるな。
考えてもどこにも行けない。
オレは頭をふった。

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