上 下
12 / 29

第12話

しおりを挟む

次に気がつくとオレはベッドの上だった。

窓の外は明るい。
朝…かな。
カラダを起こす。
疲労感も痛みもいくらかはラクになっている。
まだダルイけど。
おでこに冷えピタが貼ってある。

ベッドの下では中田が大きなカラダを小さく丸めて眠っていた。

頭がぼーっとする。
オレ…。


「真島…起きたか」

中田が目を覚ました。

「ああ」

オレの顔を心配そうに見つめて言う。

「大丈夫か」

何がだろう。

「覚えてないか?オマエ、気を失って倒れたんだ」

倒れた?頭が回んない。

「病院に連れて行こうかもと思ったけど、オマエ、何度か目を開けては、その度に大丈夫って言ってきかねえし」

オレ、そんなこと言ったっけ?
言った気もする。

「…水、飲むか?」

声出すのめんどくさい。オレはうなずく。


「ほら」

中田が差し出してくれたグラスの水を飲む。
うまい。カラダの隅々に染みこんでいくようだ。
ぷはぁ~。一気に飲み干して息を吐く。

「ん」

中田が手を出すから、グラスを渡す。

「大丈夫そうか?」
「……うん」

ぼーっとする。

あれ、オレ、こんなカッコだったっけ。
新しいTシャツにスウェット。
オレの視線に気がついたんだろう、中田が言う。

「ワリぃ、カラダふいて着替えさせた。覚えてないか」

そういえば、誰かにそんなことされたような気もする。
細切れの記憶が浮かんでは消える。

「勝手に悪かった」

すまなそうな顔。

「…いいよ。なんであやまんだよ。汚いことさせて悪かった。ありがとう」
「いや…オマエ…本当に大丈夫か」
「何が?」
「何がって…」

その時、腹がグーっと鳴った。猛烈な空腹感。

「腹へったぁ~」

あれ?オレ、最後にメシ食ったのっていつだっけ。
つうか今日っていつ?

「真島」
「あ?」
「シャワー浴びてこいよ。その間にメシ、なんか用意しとくから」
「…ああ。うん。頼む」



風呂場で服を脱ぐ。
洗面台の鏡にオレの上半身が映る。

首筋、胸にそれはある。
腕の内側。腹。
視線を落とせば太もも。ふくらはぎ。
カラダをひねって背中を映せば背にも腰にも尻にも。
どこもかしこもまるで想いを封じこめるように、オレのカラダ中に灰谷がつけた〈しるし〉がある。


「痛っ」

肩口に水が染みる。灰谷に噛まれたところだ。
オレはシャワーを浴びながら、カラダに残る一つ一つの〈しるし〉を撫でた。

灰谷。灰谷。灰谷。
はやく会いたいよ灰谷。
顔、見てえ。
触りてえ。
キスしてえ。
オマエの目に見つめられたい。
そして、オレにつけたこの〈しるし〉をオマエにもう一度なぞって欲しい。


風呂場の中は湯気がこもって暑い。
下着とスウェットだけ身につけ、首からタオルをかけて風呂場を出る。
ぬれた髪をタオルでガシガシとふく。

台所で目玉焼きを焼いていた中田がオレの上半身を見てギョっとした顔をする。
何か言いたそうにも見えたが、ただこう言った。

「メシ、できるよ」
「ありがとう」

なんとなくまた新しいTシャツを出して着る。
テレビをつける。
つまらない朝の情報番組。
日常が流れはじめた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

俺☆彼 [♡♡俺の彼氏が突然エロ玩具のレビューの仕事持ってきて、散々実験台にされまくる件♡♡]

ピンクくらげ
BL
ドエッチな短編エロストーリーが約200話! ヘタレイケメンマサト(隠れドS)と押弱真面目青年ユウヤ(隠れドM)がおりなすラブイチャドエロコメディ♡ 売れないwebライターのマサトがある日、エロ玩具レビューの仕事を受けおってきて、、。押しに弱い敏感ボディのユウヤ君が実験台にされて、どんどんエッチな体験をしちゃいます☆ その他にも、、妄想、凌辱、コスプレ、玩具、媚薬など、全ての性癖を網羅したストーリーが盛り沢山! **** 攻め、天然へたれイケメン 受け、しっかりものだが、押しに弱いかわいこちゃん な成人済みカップル♡ ストーリー無いんで、頭すっからかんにしてお読み下さい♡ 性癖全開でエロをどんどん量産していきます♡ 手軽に何度も読みたくなる、愛あるドエロを目指してます☆ pixivランクイン小説が盛り沢山♡ よろしくお願いします。

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

ショタ18禁読み切り詰め合わせ

ichiko
BL
今まで書きためたショタ物の小説です。フェチ全開で欲望のままに書いているので閲覧注意です。スポーツユニフォーム姿の少年にあんな事やこんな事をみたいな内容が多いです。

タイは若いうちに行け

フロイライン
BL
修学旅行でタイを訪れた高校生の酒井翔太は、信じられないような災難に巻き込まれ、絶望の淵に叩き落とされる…

身体検査が恥ずかしすぎる

Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。 しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。 ※注意:エロです

処理中です...