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4章 王都
船旅
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アメイジングノービス_119
無事に終えたダンジョンの調査から数ヶ月、あの後、ダンジョンの呼び名が『イオリの大穴ダンジョン』とか呼ばれるようになったり、クーリアおばさんが一時『白兎亭』を知人に任せ、パトリックさんを|持って(・・・)ダンジョンに突撃してしまい昇降機で行ける45階層より下の50階層のフロアボスを倒したことで、それ以降の階層存在が明らかとなったりと、イロイロあったが俺は今ダンジョンやフェルスホルストの街を離れ船上の人となっている。
それというのも、領主のジークフリード様のご息女である、コリンナ様が王都にある魔法学院に入学する事になったので、その護衛依頼と言う事でアリーセ、エーリカ、ワトスン達と来ているのである。
王都へ向かうには陸路でおおよそ30日、海路利用しておおよそ20日と、より早くより安全に王都に向かう為、海路が使われている。
海路でも天候や潮の流れなどで時間がかかってしまうこともあるが、陸路を行けば当然他の領主が治める場所も幾つか通る必要が出てきて、貴族ともなればその都度歓待を受けたり贈り物をしたりと面倒くさい為、ジークフリード様の非常に強い進めで海路で行くこととなったのである。
お貴族様の護衛に冒険者が付くというのもおかしな話ではあるが、向かっている魔法学院と言うのは、数代前の王が広くその才能を集めるという名目で身分を問わず入学する事が出来ると定め、学園内では身分に差をつけないとしたので、護衛や身の回りの世話をする人員に制限がかけられているのである。
実際は貴族同士の見栄合戦で「うちは子供の為にこれだけしてやるんだぞ」という分かり易いバロメーターとして、やたらと護衛や使用人を増やしてくる貴族が後を絶たず、次第にエスカレートしていき収集がつかなくなった為に設けられた制度であるらしい。
護衛や使用人の人数制限が設けられると、それはそれで、実際の身の安全の心配をする必要が出てきたので、抜け道として冒険者を雇うという方法を取るようになったという経緯のようだ。
それはそれで、今度は雇う冒険者の数で競われそうではあるが、子供の護衛を任せるほど信用と信頼がもてる冒険者がそんなに沢山居るはずもなく、今のところ大きな問題は起きていないそうだ。
そんなわけで、船で移動中なわけである。
船は木造の帆船で、それほど大きくはない。 まあ、大きくはないというのは元の世界でフェリーとか客船を知っているからこそそう言えるだけで、この世界の人達からすれば十分すぎるほど大きい船ではあるのだが、木造のこんな船で外洋を航海するとなると金属の大きな船を知っている身としては頼りなさを感じてしまうのは仕方がないだろう。
元の世界の帆船と違うことといえば、自然任せではなく、魔法で風を吹かせて進む事ができるので、風の無い凪の時でも船を動かすことが出来るという点だろうか?
船上では食事の時間以外は、ぶっちゃけやることがないので、コリンナ様からのお願いで魔法の講義をすることになった。
「よく言われる属性というのは、イメージがしやすいというだけのもので、火が得意だから水が苦手になるという法則はありません。 ただの思いこみです。 風属性、つまり気体である水素と酸素を、火属性で燃焼させると、水属性というか水そのものが出来ますので、この属性という考え方はあくまでもイメージがしやすいので広まったとだけ頭の片隅に入れておけば良いでしょう。 現に違う解釈で魔法を行うエーリカも炎魔法が得意ではありますが、他の魔法もそつなく使用できます」
「ということは、すべての魔法は無属性ということなのでしょうか?」
「コリンナ様の場合、魔法のイメージが納得の行く現象でないと魔法が発動しませんので、無属性という分類も、すでに属性にとらわれているわけですから属性という考え自体を改めてしまった方が良いでしょう。 そうですね、一般に言う属性魔法は、便宜上『物理魔法』とでも言っておけば良いんじゃないでしょうか?」
この世界の魔法は、コツさえ掴めば結構大雑把なイメージでも、よくわからない不思議物質だかなんだかが働いて発動するのだが、コリンナ様は魔法の才能があるにも関わらずずっと魔法が使えなかった。
なぜ?なんで?という気持ちが強いのだろう、この世界の魔法使い達が教える精霊がどうのとか属性がどうのという曖昧なイメージの持ち方ではコリンナ様はうまく魔法を発動させられなかったようだ。
実際に『火属性の魔石』という『~属性の魔石』なんてもの存在しているので、属性というものにとらわれがちであるが、それがあるから火がつくわけでも無ければ、風が吹く訳でもないし、電池のような使い方が主なためイメージが出来ないドツボにハマってしまったのだろう。
その点において、科学の実験というのは、誰がやっても同じ手順ならば概ね同じ結果になるというものなので、自分がやっても同じ結果だったということで理解がしやすかったようだ。
まあ、流石に「位置エネルギー」等の話までは理解が追いついていないが、原子は分子については、物を燃やすと燃えた分だけ軽くなるということを見せた後に、スチールウールを燃やして、燃やす前より酸素が結合することで重くなるという実験をやってみせただけなのだが、大雑把にではあるが理解が出来ているようだ。
ペットボトルロケットや空気砲を作って遊んだりもしたが、コリンナ様は物覚えと理解が早いので、こちらとしても教え甲斐がある。
それと同時にコリンナ様に講義の時に同席して一緒に話を聞いていたエーリカは、体の中での魔力の扱い方や集中方法など、俺の知らない不思議パワーや不思議物質の扱い方を講義して貰っている。
たまに襲ってくる海のモンスターは、ほぼ全てエーリカによって一掃されているが、俺の講義の後にぶっ放した魔法に関しては魔力の効率が良くなっただとか、威力が上がったとか物騒な感謝の報告を受ける事も良くあるが、俺も不思議パワーの使い方を教えてもらっているので、言わばWINWINの関係だ。
ちなみにワトスンは、俺がスクリューを教えたせいで船室にこもって試作品の作成を行っている。
ジェットパックの推進力を使えばスクリューがなくとも進みそうだが、あまりスピードが出ないようで、実用化出来ていないそうでスクリューに対して「これは革命だー」とか叫んでいた。
アリーセは手持ち無沙汰なのか、船員の手伝いを行っているようだ。
とくにアイテムボックスに真水を取り込む術をマスターしたので、そういうスキルだということにして海水から真水を作り、海上では貴重な水の節約が出来るため、船員達に随分と重宝されているようだ。
海水だから水だけでなく塩も直にアイテムボックスに収納出来るとアリーセに教えたら。 眉間にシワが寄って「水だけでいっぱいいっぱいよ」と、詳しい説明を拒否されてしまった。
そんなわけで、何事もなく航海は順調に進んでいる。
「海賊船だ!!」
たった今、航海が順調では無くなったようだ。
無事に終えたダンジョンの調査から数ヶ月、あの後、ダンジョンの呼び名が『イオリの大穴ダンジョン』とか呼ばれるようになったり、クーリアおばさんが一時『白兎亭』を知人に任せ、パトリックさんを|持って(・・・)ダンジョンに突撃してしまい昇降機で行ける45階層より下の50階層のフロアボスを倒したことで、それ以降の階層存在が明らかとなったりと、イロイロあったが俺は今ダンジョンやフェルスホルストの街を離れ船上の人となっている。
それというのも、領主のジークフリード様のご息女である、コリンナ様が王都にある魔法学院に入学する事になったので、その護衛依頼と言う事でアリーセ、エーリカ、ワトスン達と来ているのである。
王都へ向かうには陸路でおおよそ30日、海路利用しておおよそ20日と、より早くより安全に王都に向かう為、海路が使われている。
海路でも天候や潮の流れなどで時間がかかってしまうこともあるが、陸路を行けば当然他の領主が治める場所も幾つか通る必要が出てきて、貴族ともなればその都度歓待を受けたり贈り物をしたりと面倒くさい為、ジークフリード様の非常に強い進めで海路で行くこととなったのである。
お貴族様の護衛に冒険者が付くというのもおかしな話ではあるが、向かっている魔法学院と言うのは、数代前の王が広くその才能を集めるという名目で身分を問わず入学する事が出来ると定め、学園内では身分に差をつけないとしたので、護衛や身の回りの世話をする人員に制限がかけられているのである。
実際は貴族同士の見栄合戦で「うちは子供の為にこれだけしてやるんだぞ」という分かり易いバロメーターとして、やたらと護衛や使用人を増やしてくる貴族が後を絶たず、次第にエスカレートしていき収集がつかなくなった為に設けられた制度であるらしい。
護衛や使用人の人数制限が設けられると、それはそれで、実際の身の安全の心配をする必要が出てきたので、抜け道として冒険者を雇うという方法を取るようになったという経緯のようだ。
それはそれで、今度は雇う冒険者の数で競われそうではあるが、子供の護衛を任せるほど信用と信頼がもてる冒険者がそんなに沢山居るはずもなく、今のところ大きな問題は起きていないそうだ。
そんなわけで、船で移動中なわけである。
船は木造の帆船で、それほど大きくはない。 まあ、大きくはないというのは元の世界でフェリーとか客船を知っているからこそそう言えるだけで、この世界の人達からすれば十分すぎるほど大きい船ではあるのだが、木造のこんな船で外洋を航海するとなると金属の大きな船を知っている身としては頼りなさを感じてしまうのは仕方がないだろう。
元の世界の帆船と違うことといえば、自然任せではなく、魔法で風を吹かせて進む事ができるので、風の無い凪の時でも船を動かすことが出来るという点だろうか?
船上では食事の時間以外は、ぶっちゃけやることがないので、コリンナ様からのお願いで魔法の講義をすることになった。
「よく言われる属性というのは、イメージがしやすいというだけのもので、火が得意だから水が苦手になるという法則はありません。 ただの思いこみです。 風属性、つまり気体である水素と酸素を、火属性で燃焼させると、水属性というか水そのものが出来ますので、この属性という考え方はあくまでもイメージがしやすいので広まったとだけ頭の片隅に入れておけば良いでしょう。 現に違う解釈で魔法を行うエーリカも炎魔法が得意ではありますが、他の魔法もそつなく使用できます」
「ということは、すべての魔法は無属性ということなのでしょうか?」
「コリンナ様の場合、魔法のイメージが納得の行く現象でないと魔法が発動しませんので、無属性という分類も、すでに属性にとらわれているわけですから属性という考え自体を改めてしまった方が良いでしょう。 そうですね、一般に言う属性魔法は、便宜上『物理魔法』とでも言っておけば良いんじゃないでしょうか?」
この世界の魔法は、コツさえ掴めば結構大雑把なイメージでも、よくわからない不思議物質だかなんだかが働いて発動するのだが、コリンナ様は魔法の才能があるにも関わらずずっと魔法が使えなかった。
なぜ?なんで?という気持ちが強いのだろう、この世界の魔法使い達が教える精霊がどうのとか属性がどうのという曖昧なイメージの持ち方ではコリンナ様はうまく魔法を発動させられなかったようだ。
実際に『火属性の魔石』という『~属性の魔石』なんてもの存在しているので、属性というものにとらわれがちであるが、それがあるから火がつくわけでも無ければ、風が吹く訳でもないし、電池のような使い方が主なためイメージが出来ないドツボにハマってしまったのだろう。
その点において、科学の実験というのは、誰がやっても同じ手順ならば概ね同じ結果になるというものなので、自分がやっても同じ結果だったということで理解がしやすかったようだ。
まあ、流石に「位置エネルギー」等の話までは理解が追いついていないが、原子は分子については、物を燃やすと燃えた分だけ軽くなるということを見せた後に、スチールウールを燃やして、燃やす前より酸素が結合することで重くなるという実験をやってみせただけなのだが、大雑把にではあるが理解が出来ているようだ。
ペットボトルロケットや空気砲を作って遊んだりもしたが、コリンナ様は物覚えと理解が早いので、こちらとしても教え甲斐がある。
それと同時にコリンナ様に講義の時に同席して一緒に話を聞いていたエーリカは、体の中での魔力の扱い方や集中方法など、俺の知らない不思議パワーや不思議物質の扱い方を講義して貰っている。
たまに襲ってくる海のモンスターは、ほぼ全てエーリカによって一掃されているが、俺の講義の後にぶっ放した魔法に関しては魔力の効率が良くなっただとか、威力が上がったとか物騒な感謝の報告を受ける事も良くあるが、俺も不思議パワーの使い方を教えてもらっているので、言わばWINWINの関係だ。
ちなみにワトスンは、俺がスクリューを教えたせいで船室にこもって試作品の作成を行っている。
ジェットパックの推進力を使えばスクリューがなくとも進みそうだが、あまりスピードが出ないようで、実用化出来ていないそうでスクリューに対して「これは革命だー」とか叫んでいた。
アリーセは手持ち無沙汰なのか、船員の手伝いを行っているようだ。
とくにアイテムボックスに真水を取り込む術をマスターしたので、そういうスキルだということにして海水から真水を作り、海上では貴重な水の節約が出来るため、船員達に随分と重宝されているようだ。
海水だから水だけでなく塩も直にアイテムボックスに収納出来るとアリーセに教えたら。 眉間にシワが寄って「水だけでいっぱいいっぱいよ」と、詳しい説明を拒否されてしまった。
そんなわけで、何事もなく航海は順調に進んでいる。
「海賊船だ!!」
たった今、航海が順調では無くなったようだ。
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