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2章 冒険者としての生活

貧乏領主

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可能な限り毎日更新をしていく予定ですが、
申し訳ありませんが明日から時間は不定期とさせて頂きます。
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「おっと、伝えるのを忘れて居たがコリンナの魔法の家庭教師として次回よりイオリにも来て貰う事になった」

「えっ? わ、私に何か不備がありましたか?」

 エーリカが焦ってジークフリード様に問いかける。
 あーいきなりそう言われたら、クビかと思っちゃうよな。

「いや、そうではない。エーリカの働きには大変満足している。そこのイオリは事故により記憶が一部欠落しているが、私が知るどの流派ともかけ離れた理を持って魔法を行使するのだ。コリンナにその理を教えて貰おうと思っている」

「な、なるほど、そういうことですのね。私も他流の方の理には興味がありますし、コリンナ様の学習にも何か影響が出ないとも限りませんから私も同席させて頂いても宜しいでしょうか?」

 おう、なんだか微妙に睨まれてる気がするが、そっちの領分を侵す気はないし、俺が決めたわけじゃないので勘弁して欲しい。

「よろしくお願いします。理? については憶えていますが、魔法の発動に関しては綺麗サッパリ憶えて居ないので随分と頼ってしまうかと思います。こんな私がコリンナ様に魔法について語るなど恐縮するばかりですが、凄腕のマジックユーザーに観ていて頂けるならば非常に心強いです」

 何よりきっちり魔法について聞いておきたいからな。
 アリーセの見せ技や俺のスキルにも驚いた様子が無かったし、Bランク冒険者と言ったら相当な手練な筈だ。相当魔法について増資が深いに違いない。

「そ、そうですの。こちらこそよろしくお願いしますわ」

 なんか、意表を突かれたような顔をしているが、突っかかってくるとでも思ったのだろうか?

「うむ、なかなか有意義であった。ではコリンナ邪魔をしてしまったが私達はこれで失礼しよう、しっかりと励むのだぞ?」

「はい、お父様」

 ここを立ち去る流れの様なので、退出するジークフリード様に着いて行くヴァルターさんに着いて行く。
 このまま次に来ればいい日時だけ聞いて、もとの服に着替えたら帰してくれるだろうか?

 ジークフリード様はヴァルターさんについて行っている我々を一瞥すると歩きながら口を開いた。

「さて、そなた等がドラゴンを倒したという事は十分信憑性があると判断をさせてもらった。故に最後に少々確認したい事がある」

 まだ終わらんのか、着替えたりあっち行ったりこっち行ったりと、随分と振り回すものだな。
 これまた着替えるとかじゃないだろうな?

「ヴァルター、結界の間を使う。先に行って準備をしてきてくれ」

「承知いたしました、では失礼いたします」

 結界の間って何だろうか?
 ヴァルターさんがそう言って一礼すると、走っている様子は全くないのにスーっと先に進んで行って、あっという間に見えなくなった。
 足音もしないし、ヴァルターさんのあれは何かのスキルなんだろうか?

「イオリとアリーセは、そのままで構わんから私に着いて来てくれ」

「あ、はい承知しました」

「わかりま……じゃなかった、承知しました」

 アリーセの言い間違いも特に咎められることなくジークフリード様はズンズンと進んで行く。

「アリーセ、結界の間って何だ?」

「さあ、解らないわ」

 小声でアリーセに聞いてみたが知らないらしい。

「ふっ、着いたら説明しよう」

「あ、申し訳ありません」

「よい、気になるのも当然だ」

 おおう、聞かれてた。 でもさっきから無作法でも眉を潜める事すらしないで、気安い感じだな。

「私としては、もっと気軽に話して貰って構わないのだがな、そんな程度でも何処からともなく話が漏れて、他の貴族に舐められてな。無理難題をふっかけられたり、不良案件を押し付けられたりしてしまうんだ」

 ヴァルターさんもちょろっとそんな事言ってたが、貴族は貴族でむしろ面倒くさいもんだな。

「我が領地は主だった産業も無く、殆どを関税による収入で賄っているが、ここを通る街道は他と比べると遠回りでな、関税を随分と安くしたり、素通りも出来る様に街の外にも施設を作ってそこの売り上げから税を徴収をするようにもしているが、犯罪の温床にならないようそこで働くものはすべて貧民街から身辺調査をして多少教育を施してから領で雇上げをしているので人件費を差し引くと僅かしか残らない。 といった具合いでな……」

 うわ、ヴァルターさんが居なくなったら、急に饒舌になったぞ。
 街の外の酒場とかの施設って、公共施設だったのか。
 そこから、いくつか愚痴などを聞きながら歩いていると、最初苦労知らずのキラキラしたイケメン貴族という印象はガラリと変わっていた。

「そういうわけで使用人も最小限にして家令も置かず、執事のヴァルターに財務まで任せてしまっているほどには貧乏をしている」

「え? び貧乏!?」

 アリーセが素っ頓狂な声を上げた。アリーセの想像する貧乏とあまりにもかけ離れて居たからだろう。

「アリーセ、華やかに見えても実は借金まみれなんていう貴族は結構居たりするんだ。 それに金額多くても、入って来るお金と出て行くお金で出て行くお金が多ければ結局自由に使えるお金は無くなってしまうんだよ」

「え、でも……え?」

 混乱していると言うより理解が追いつかないと言った感じか。

「そもそも、集めた税金というのは別にジークフリード様の懐に入ってるわけじゃないんだ。道を整備したり守衛を雇って街の安全を確保したり、城壁を管理維持したりと領地の運営に使われているんだよ」

「おお、良く分かっているではないか、守衛からの報告にもあったがイオリはそれなりに身分が高いのではないのか?」

 守衛ってスコットのおっさんの事か、そう言えばこの街に来た初日に、報告をしとくとか言っていたな。

「なんとも言えませんが、平民であったという記憶はありますよ」

「そうか、では没落したという線もあり得るか」

 無いと思います。

「それでも貧乏って言ったら、なんていうか……」

 ポーションで落ち着いてしまうせいか、ジークフリード様に緊張する事も無くアリーセが疑問をぶつける。

「そうだな、冒険者ギルドの施設は大きいし依頼から収益を上げているだろ? でもそれって全部ギルドマスターの私物か?」

「うーん私物では無いわね」

「そう、だからギルドマスターが領主、ギルドがこの街で、マスタールームがここの領主館、冒険者が街に住む人達って考えたら分かりやすいんじゃないかな? ジークフリード様が言う貧乏って言うのは食べ物も住む所も無いって言う個人の貧乏じゃなくて、依頼が少なくて経営が苦しくなって経費を切り詰めてギルドマスター自ら走り回っているような状態っていう貧乏なんだよ」

「な、なるほど、良く分かったわ」

 すごく良く分かったから、もう説明も解説も要らないと力説された。
 ここからお金の流れや経済の仕組みを補足説明しようと思っていたのに残念だ。

「ふむ、イオリよ、3区画ほど任せるのでそちらで雇われて見る気はないか?」

 すみません、調子に乗りました。勘弁してください。




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