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1章 異世界転移
アイテムボックスの可能性
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「……と言うわけで、純水というのは水素原子2つと酸素原子が1つからなる分子の集合体なわけだ。この状態であれば有機物を含まない状態なので、アイテムボックスに収納が可能になるんだ」
既に日は傾いているが路地裏教室は続いている。
「水はそれなりに強力な水溶液で、食塩等を始め様々な物資を溶かすことができる。この性質で有機物を含んで……」
「も、もういいわ! アイテムボックスに普通の水が入れられるのは信じるから!」
アリーセがギブアップしたようだ。頭痛がするのかコメカミを押さえている。
「それは良かった。それなら理論はバッチリだな明日は早速実践しに行こう!」
出来なかったら、また水について詳しく教えるぞと、爽やかスマイルとポーズでアリーセに告げる。
「あ、ありがとう? そ、そろそろ白兎亭に戻らない?」
「そうだな、昼も勢いで食いそびれたし、帰るか!」
俺としては、まだまだ話したかったが焦った様子のアリーセに促され白兎亭に帰る事にした。
途中の市場によってもらい、着替えに古着を適当に見繕ってもらって、下着類も適当に購入する。
アイテムボックスに全部収納しておくという芸当が出来ないので、生活用品は徐々に揃えていこう。
元素の話をしていて気がついたが、有機化合物をのぞけば気体というのは概ね無機物であるので気体を取り込むこともできるのではないだろうか。
この世界の空気の比率が地球と一緒かどうかはわからないが、空気を取り込んでおけば、水中や酸素の少ない地下等で緊急的に呼吸をしたりできないだろうか?
さらに、川の水を有機物を含まない状態で寄り分けて収納出来たという事は、水から酸素と水素を取り込めるのではないか?
有機物が入らず不便でしかないアイテムボックスだが、気体を収納出来るのであれば応用が利くのではないだろうかと考察し、道すがら空気をアイテムボックスに収納して見ようとしてみる。
水と同じで、目の前の空気を取り込もうとすると収納が出来なかった。おそらく空気中を漂っている菌類や花粉などが邪魔をしているのだろう。
空気という気体のみに意識を向けてみたら、成分まで意識するまでもなく、あっさりと収納が出来た。
とはいえ、水と同じで1スペース64リットル程度では大したことがないかな?と思いつつどんどん取り込んでいくが、どういうわけかなかなかいっぱいにならない。
最終的に、64キログラムまで収納できてしまった。
水1リットルは1キログラムである。ついでに言えば体積は一辺10センチの立方体1000立方センチメートルである。
つまり、水64リットルは64キログラムなので、アイテムボックスの1スペースには体積に関係なく64キログラムまで入るということになる。
それ以上の重さのものを収納しようとしたらどうなるのか、入らないとなったらそれはそれで不便なので、また後で検証した方がよさそうだ。
「……で、したいと思うのよ……ってイオリ聞いてる?」
「え、あ、なに?」
考えに没頭して何も聞いていなかった。
アリーセは腰に手を当て、ため息をつく。
「まったく、四六時中気を張り詰めろとは言わないけど、ボーっとしてると財布スられるわよ?」
「す、すまん、それで何だって?」
ひとまず謝って話を再度聞くと、俺の戦闘訓練をしようということだった。
俺としては、どうせやるならスキルの検証もしたいのであまり人目の付かない所が良いのだが……。
「それなら、昨日の川の少し上流あたりで、私の水特訓しながらモンスターの間引きで感を戻していったらどうかな?」
訓練すっ飛ばして、いきなり実戦を提案してくるとは、なかなかスパルタである。
「そんなに強いモンスターは出ないから大丈夫よ」
そうは言うが、昨日ゴブリンを倒した時を思い出すと気持ち悪さがこみ上げてくるので正直気が進まない。
必要なことなのはわかるが今すぐは無理そうだ。
出来れば、食肉の為の鳥とかの解体あたりから慣らしていきたい。
「まぁ、そんなにモンスターが出るところでもないから、素振りなり私が相手するなりすればいいんじゃない?」
「それなら、大丈夫……かな?」
どうせ、やらなければならないことでもあるので、了承する。
白兎亭に着き部屋にもどって楽な格好になると、ちょっと早いが夕飯をアリーセと食べてることにした。
なんとなく、最初に座った端っこの席に座ってしまうな。
「今日はいつものシチューだけなんだけどかまわないかい?」
クーリアおばさんに注文を頼むとそう言われてしまった。どのみち今日はシチューにするつもりだったので問題はない。
「いやね、今日はじめたばかりなのにホットドッグが評判よくてね、スコットもたくさん頼むもんだから、うちにあるソーセージや肉なんかが全部無くなっちまったんだよ」
どうも、間接的に俺のせいらしい。
でも、たくさん売れたようで、クーリアおばさんがホクホク顔だったのでヨシとしよう。
「この調子でホットドッグが売れちまうと他に手が回らないから、ちょっと困ったね」
「単純な料理なので、すぐに他のところでも真似されて落ち着いてくるんじゃないですか?」
「確かにそうだね。でも、最初のうちは仕方が無いだろ? 売れるうちはあたしとしても売っておきたいから明日は誰かに手伝ってもらおうかねぇ」
そう言い残し厨房の方へと戻っていく。
出てきたシチューは、アリーセがお勧めというだけあって、とてもうまかった。
肉はほろほろになるまで良く煮込まれていて、口の中でとろける。濃厚なソースは一緒に煮込まれた野菜の旨みが溶け出し、深い味わいを出している。
酸味のある黒パンとの相性も最高で、思わず顔が緩む。
アリーセもずっとニコニコしたまま、黙々と食べているようだ。
お腹いっぱい食べて、明日の予定をアリーセと話して部屋に戻った。
部屋に戻って、今日買った鎧を解析ツールでどんな数値なのか見てみることにした。
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レザーキャップ
防御力 267
強度 386
耐久 423/425
品質 B
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ハードレザーアーマー
防御力 364
強度 472
耐久 651/657
品質 B
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レザーグローブ
防御力 124
強度 120
耐久 190/193
品質 B
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スパイクブーツ
防御力 89
強度 120
耐久 180/184
品質 B
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比べてみるとゲームの装備のパラメータの高さがおかしいんだな、と分かる。
多少耐久が減っているのは経年劣化的なものだろうか?
これはこれで、非常に動きやすいし、アリーセが薦めてくれたくらいだから、十分良い物なのだろう。
しばらくは、この装備を使っておいて、どこかでタイミングを見て変えて行こう。
アリーセの言葉ではないが、出し渋っても良いこと無いだろうからな。
元の世界であれば夜はまだこれからという時間であるが、当然といえば当然だが、この世界では朝も早ければ夜も早い。
いろいろ検証したいことはいっぱいあるが、今日はもう体を拭いてそのまま寝てしまおう。
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既に日は傾いているが路地裏教室は続いている。
「水はそれなりに強力な水溶液で、食塩等を始め様々な物資を溶かすことができる。この性質で有機物を含んで……」
「も、もういいわ! アイテムボックスに普通の水が入れられるのは信じるから!」
アリーセがギブアップしたようだ。頭痛がするのかコメカミを押さえている。
「それは良かった。それなら理論はバッチリだな明日は早速実践しに行こう!」
出来なかったら、また水について詳しく教えるぞと、爽やかスマイルとポーズでアリーセに告げる。
「あ、ありがとう? そ、そろそろ白兎亭に戻らない?」
「そうだな、昼も勢いで食いそびれたし、帰るか!」
俺としては、まだまだ話したかったが焦った様子のアリーセに促され白兎亭に帰る事にした。
途中の市場によってもらい、着替えに古着を適当に見繕ってもらって、下着類も適当に購入する。
アイテムボックスに全部収納しておくという芸当が出来ないので、生活用品は徐々に揃えていこう。
元素の話をしていて気がついたが、有機化合物をのぞけば気体というのは概ね無機物であるので気体を取り込むこともできるのではないだろうか。
この世界の空気の比率が地球と一緒かどうかはわからないが、空気を取り込んでおけば、水中や酸素の少ない地下等で緊急的に呼吸をしたりできないだろうか?
さらに、川の水を有機物を含まない状態で寄り分けて収納出来たという事は、水から酸素と水素を取り込めるのではないか?
有機物が入らず不便でしかないアイテムボックスだが、気体を収納出来るのであれば応用が利くのではないだろうかと考察し、道すがら空気をアイテムボックスに収納して見ようとしてみる。
水と同じで、目の前の空気を取り込もうとすると収納が出来なかった。おそらく空気中を漂っている菌類や花粉などが邪魔をしているのだろう。
空気という気体のみに意識を向けてみたら、成分まで意識するまでもなく、あっさりと収納が出来た。
とはいえ、水と同じで1スペース64リットル程度では大したことがないかな?と思いつつどんどん取り込んでいくが、どういうわけかなかなかいっぱいにならない。
最終的に、64キログラムまで収納できてしまった。
水1リットルは1キログラムである。ついでに言えば体積は一辺10センチの立方体1000立方センチメートルである。
つまり、水64リットルは64キログラムなので、アイテムボックスの1スペースには体積に関係なく64キログラムまで入るということになる。
それ以上の重さのものを収納しようとしたらどうなるのか、入らないとなったらそれはそれで不便なので、また後で検証した方がよさそうだ。
「……で、したいと思うのよ……ってイオリ聞いてる?」
「え、あ、なに?」
考えに没頭して何も聞いていなかった。
アリーセは腰に手を当て、ため息をつく。
「まったく、四六時中気を張り詰めろとは言わないけど、ボーっとしてると財布スられるわよ?」
「す、すまん、それで何だって?」
ひとまず謝って話を再度聞くと、俺の戦闘訓練をしようということだった。
俺としては、どうせやるならスキルの検証もしたいのであまり人目の付かない所が良いのだが……。
「それなら、昨日の川の少し上流あたりで、私の水特訓しながらモンスターの間引きで感を戻していったらどうかな?」
訓練すっ飛ばして、いきなり実戦を提案してくるとは、なかなかスパルタである。
「そんなに強いモンスターは出ないから大丈夫よ」
そうは言うが、昨日ゴブリンを倒した時を思い出すと気持ち悪さがこみ上げてくるので正直気が進まない。
必要なことなのはわかるが今すぐは無理そうだ。
出来れば、食肉の為の鳥とかの解体あたりから慣らしていきたい。
「まぁ、そんなにモンスターが出るところでもないから、素振りなり私が相手するなりすればいいんじゃない?」
「それなら、大丈夫……かな?」
どうせ、やらなければならないことでもあるので、了承する。
白兎亭に着き部屋にもどって楽な格好になると、ちょっと早いが夕飯をアリーセと食べてることにした。
なんとなく、最初に座った端っこの席に座ってしまうな。
「今日はいつものシチューだけなんだけどかまわないかい?」
クーリアおばさんに注文を頼むとそう言われてしまった。どのみち今日はシチューにするつもりだったので問題はない。
「いやね、今日はじめたばかりなのにホットドッグが評判よくてね、スコットもたくさん頼むもんだから、うちにあるソーセージや肉なんかが全部無くなっちまったんだよ」
どうも、間接的に俺のせいらしい。
でも、たくさん売れたようで、クーリアおばさんがホクホク顔だったのでヨシとしよう。
「この調子でホットドッグが売れちまうと他に手が回らないから、ちょっと困ったね」
「単純な料理なので、すぐに他のところでも真似されて落ち着いてくるんじゃないですか?」
「確かにそうだね。でも、最初のうちは仕方が無いだろ? 売れるうちはあたしとしても売っておきたいから明日は誰かに手伝ってもらおうかねぇ」
そう言い残し厨房の方へと戻っていく。
出てきたシチューは、アリーセがお勧めというだけあって、とてもうまかった。
肉はほろほろになるまで良く煮込まれていて、口の中でとろける。濃厚なソースは一緒に煮込まれた野菜の旨みが溶け出し、深い味わいを出している。
酸味のある黒パンとの相性も最高で、思わず顔が緩む。
アリーセもずっとニコニコしたまま、黙々と食べているようだ。
お腹いっぱい食べて、明日の予定をアリーセと話して部屋に戻った。
部屋に戻って、今日買った鎧を解析ツールでどんな数値なのか見てみることにした。
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レザーキャップ
防御力 267
強度 386
耐久 423/425
品質 B
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ハードレザーアーマー
防御力 364
強度 472
耐久 651/657
品質 B
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レザーグローブ
防御力 124
強度 120
耐久 190/193
品質 B
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スパイクブーツ
防御力 89
強度 120
耐久 180/184
品質 B
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比べてみるとゲームの装備のパラメータの高さがおかしいんだな、と分かる。
多少耐久が減っているのは経年劣化的なものだろうか?
これはこれで、非常に動きやすいし、アリーセが薦めてくれたくらいだから、十分良い物なのだろう。
しばらくは、この装備を使っておいて、どこかでタイミングを見て変えて行こう。
アリーセの言葉ではないが、出し渋っても良いこと無いだろうからな。
元の世界であれば夜はまだこれからという時間であるが、当然といえば当然だが、この世界では朝も早ければ夜も早い。
いろいろ検証したいことはいっぱいあるが、今日はもう体を拭いてそのまま寝てしまおう。
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