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1章 異世界転移
ドワーフへのお礼はアルコール
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ドグラスの親父さんとオットー君11歳が、揉めている所にアリーセが割って入る。
多分、本人達はちょっとした問答程度の感覚かも知れないが、俺からしてみると筋肉ダルマが喧嘩している様にしか見えない。
アリーセはよくあそこに割って入れるな。
「親父さんもオットーも安心して良いわよ、イオリちょっとこっちに来て」
そう言って手招きして俺を呼ぶ。
いや、ちょっとそこには行きたくないんですが……。
「イオリ、コレ大分お買い得だから、お金出しても良いと思うわ、使っちゃっても平気?」
「すごく気に入ったし、アリーセが大丈夫だって言うなら問題ない」
旧王国金貨12枚、1万5千ナールを取り出して、カウンターに置く。
質が良いのはわかってるし、多分チートツールでアイテム変化させた防具も、ここまでピッタリでは無いはずだ、下手すれば着れない可能性もあると考えると、是非手に入れておきたい。
しかし、中古車位の値段の物をポンと買うとか、命を護る物に金を惜しむなってのは冒険者らしいが、寄付の時のように他でうっかりやらないように気を付けねば。
「おお? 駆け出しが随分と羽振り良いじゃねーか」
ドグラスの親父さんは平然としているが、オットー君11歳は立派な髭に覆われている口をあんぐりと開けている。
「ね、大丈夫だって言ったでしょ。見ての通りお代は心配無いから、ついでに武器も見てあげて欲しいんだけど良いかしら? ジョブはノービスよ」
「それは構わねーが、ノービスの坊主が扱いきれねぇモンを渡してもしょうがねぇぞ」
それは確かにそうだな、スキルは足せるけど、今までの経験上ゲームの時のように、いきなり使いこなせる訳ではない。
とは言え、武器はいざとなったらアイテムボックスにそこそこのがあるので、スキルの検証や練習に使えればそれで構わないと思っている。
「見たところ剣が使えそうだな。手頃なの選んでやっからちょっとこれを振ってみろ」
確かに剣術のスキルはあるが、見ただけで剣が使えるってわかるものなのか。
差し出されたシンプルな軽い剣を受け取って、その場で少し振る。店内なのであまり振り回せないが、これで何かわかるのだろうか?
「歩き方が安定してっから多少は心得があると踏んだが、駆け出しにしちゃあ随分様になってるな。元から持ってた剣はどんなのを使ってた?」
「ああ、いや、憶えてないんでお任せで」
「あ? 憶えてないって、どー言うこった?」
もう何度目かわからない記憶喪失設定をドグラスの親父さんに話す。
「おう、そいつは気の毒にな。それでなんかチグハグな感じなんだな」
「チグハグ?」
アリーセがドグラスの親父さんに聞き返す。
「なんつーか、歩き方なんかは安定しているし見た目モヤシの癖にその剣も軽々と扱えていやがる。だがこの坊主はそれだけなんだよ。気の張り方や立ちふるまいはド素人のソレだったからな。何もかも忘れちまってるんなら仕方がねえ」
モヤシは余計だ。俺だってゴリマッチョにならないのは不思議なのだから。
「ゴブリンチーフを私のサーベルで一撃だったから、もともとそこそこの使い手だと思うわ」
いや、それはない。スキルの恩恵があるだけのド素人ってのが正解だ。
「ほう、ちょっとそのサーベルを見せてみろ」
あ、それ借りっぱなしだったな。アイテムボックスからアリーセの剣を取り出してドグラスの親父さんに渡す。
「お、坊主もアイテムボックス持ちか、どれ……。ふむ、力任せに叩きつけたってところか。サーベルの使い方じゃねーな。これじゃすぐぶっ壊すぞ」
すみません。慌てて思いっきり叩きつけてました。
しかし、ちょっと見ただけで分かるものなのか……。
「そう言えば、出会ったときも剣をアルマベアーに叩きつけて壊したって言ってたわね」
「そいつは鍛冶屋泣かせだな。坊主には大剣とかが良さそうだが、すっかり忘れちまってんなら、この辺ので慣らしていけ」
そう言って差し出されたのは、幅広い刃をした片手剣だった。片手剣サイズだが、グリップが少し長いので、両手でも持てそうだ。バスタードソードというやつだろうか?
「こいつは数打ちのモンだが、短かめで肉厚になってる、扱いやすくて頑丈だぞ」
持たせてもらうと、見た目よりも軽く重心がちょうど手の辺りに来るので非常に振りやすい。これと比べたら俺がチートツールでいじくり回した元ゴブリンの剣など、攻撃力が高いだけの棒と言って良いだろう。
鑑定を使って剣を見てみる。
質の良い幅広の片手半剣
鋼鉄製の剣。非常にバランスがよく片手でも両手でも扱える。肉厚で耐久性が高い。
扱いやすさなら職人にはチートツールでも敵わないと言う事か。
ゲームのときの最強の剣とかはすぐにでも手に入るが、ゲームでの装備など見た目が全てだ。トゲトゲしてるわ、色んな物がくっついてるわ、アホみたいにデカイわで、現実で使える気がしない。
「そいつを早々にぶっ壊すようだったら、剣にゃあ向いてねぇから剣の扱いを思い出すまで別の武器にしろ」
「そうなったら、近接は諦めて遠距離武器でも持ちますよ。それじゃあこれお幾らですか」
「所詮数打ちだ、さっきの防具の代金の釣り分で構わん。あと、いけ好かねえエルフみてぇで気色悪りいから俺に敬語は止めろ」
数打ちでこのクオリティとか、ドワーフ本当凄いな。
敬語禁止はなんとなく言われる気がしていたが、ちゃんとエルフも居るんだな、そっちにも是非会ってみたいものだ。
「後こいつも持ってけ、アイテムボックスにも入る剥ぎ取り用のナイフだ」
使う機会があるか分からないが礼を言って剥ぎ取りナイフを貰う。
ドワーフと言えば酒だよな。ナイフの代金代わりになんか良いの無かったかな?
FADでは当然生産職も充実しており、それに類する料理や食材と言ったアイテム類も多かった。ゲームでは比較的簡単に手に入ったのでアイテム変化チートコードは作って無かったが、実用性の高いポーション類に混ざって酒類が混ざってくる事があった。
昨日適当にアイテム変化しまくったポーションの中に幾つか酒類が混ざってたはずだ。
「色々サンキュー。口に合うか分からないが良かったらコレでも飲んでくれ、米って言う穀物から作ったやつなんだ」
「おっ? そいつは酒か! 坊主分かってんじゃねーか! 儂等の口に合わねぇ酒なんざねーから安心しろい」
ドグラスの親父さんは俺から瓶を受け取ると、早速とばかりに口で栓を抜いて、そのままラッパ飲みをした。
「おう、飲んだことのねぇ酒だが甘みがあってうめぇな。見たことのねぇ字だが、なんて酒なんだ?」
瓶に貼られたラベルを見てドグラスの親父さんが聞いてくる。
瓶のラベルには日本語でこう書かれている。
『本みりん』
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読んでいただきありがとうございます。
良いみりんはそのままでも普通に飲めます。
多分、本人達はちょっとした問答程度の感覚かも知れないが、俺からしてみると筋肉ダルマが喧嘩している様にしか見えない。
アリーセはよくあそこに割って入れるな。
「親父さんもオットーも安心して良いわよ、イオリちょっとこっちに来て」
そう言って手招きして俺を呼ぶ。
いや、ちょっとそこには行きたくないんですが……。
「イオリ、コレ大分お買い得だから、お金出しても良いと思うわ、使っちゃっても平気?」
「すごく気に入ったし、アリーセが大丈夫だって言うなら問題ない」
旧王国金貨12枚、1万5千ナールを取り出して、カウンターに置く。
質が良いのはわかってるし、多分チートツールでアイテム変化させた防具も、ここまでピッタリでは無いはずだ、下手すれば着れない可能性もあると考えると、是非手に入れておきたい。
しかし、中古車位の値段の物をポンと買うとか、命を護る物に金を惜しむなってのは冒険者らしいが、寄付の時のように他でうっかりやらないように気を付けねば。
「おお? 駆け出しが随分と羽振り良いじゃねーか」
ドグラスの親父さんは平然としているが、オットー君11歳は立派な髭に覆われている口をあんぐりと開けている。
「ね、大丈夫だって言ったでしょ。見ての通りお代は心配無いから、ついでに武器も見てあげて欲しいんだけど良いかしら? ジョブはノービスよ」
「それは構わねーが、ノービスの坊主が扱いきれねぇモンを渡してもしょうがねぇぞ」
それは確かにそうだな、スキルは足せるけど、今までの経験上ゲームの時のように、いきなり使いこなせる訳ではない。
とは言え、武器はいざとなったらアイテムボックスにそこそこのがあるので、スキルの検証や練習に使えればそれで構わないと思っている。
「見たところ剣が使えそうだな。手頃なの選んでやっからちょっとこれを振ってみろ」
確かに剣術のスキルはあるが、見ただけで剣が使えるってわかるものなのか。
差し出されたシンプルな軽い剣を受け取って、その場で少し振る。店内なのであまり振り回せないが、これで何かわかるのだろうか?
「歩き方が安定してっから多少は心得があると踏んだが、駆け出しにしちゃあ随分様になってるな。元から持ってた剣はどんなのを使ってた?」
「ああ、いや、憶えてないんでお任せで」
「あ? 憶えてないって、どー言うこった?」
もう何度目かわからない記憶喪失設定をドグラスの親父さんに話す。
「おう、そいつは気の毒にな。それでなんかチグハグな感じなんだな」
「チグハグ?」
アリーセがドグラスの親父さんに聞き返す。
「なんつーか、歩き方なんかは安定しているし見た目モヤシの癖にその剣も軽々と扱えていやがる。だがこの坊主はそれだけなんだよ。気の張り方や立ちふるまいはド素人のソレだったからな。何もかも忘れちまってるんなら仕方がねえ」
モヤシは余計だ。俺だってゴリマッチョにならないのは不思議なのだから。
「ゴブリンチーフを私のサーベルで一撃だったから、もともとそこそこの使い手だと思うわ」
いや、それはない。スキルの恩恵があるだけのド素人ってのが正解だ。
「ほう、ちょっとそのサーベルを見せてみろ」
あ、それ借りっぱなしだったな。アイテムボックスからアリーセの剣を取り出してドグラスの親父さんに渡す。
「お、坊主もアイテムボックス持ちか、どれ……。ふむ、力任せに叩きつけたってところか。サーベルの使い方じゃねーな。これじゃすぐぶっ壊すぞ」
すみません。慌てて思いっきり叩きつけてました。
しかし、ちょっと見ただけで分かるものなのか……。
「そう言えば、出会ったときも剣をアルマベアーに叩きつけて壊したって言ってたわね」
「そいつは鍛冶屋泣かせだな。坊主には大剣とかが良さそうだが、すっかり忘れちまってんなら、この辺ので慣らしていけ」
そう言って差し出されたのは、幅広い刃をした片手剣だった。片手剣サイズだが、グリップが少し長いので、両手でも持てそうだ。バスタードソードというやつだろうか?
「こいつは数打ちのモンだが、短かめで肉厚になってる、扱いやすくて頑丈だぞ」
持たせてもらうと、見た目よりも軽く重心がちょうど手の辺りに来るので非常に振りやすい。これと比べたら俺がチートツールでいじくり回した元ゴブリンの剣など、攻撃力が高いだけの棒と言って良いだろう。
鑑定を使って剣を見てみる。
質の良い幅広の片手半剣
鋼鉄製の剣。非常にバランスがよく片手でも両手でも扱える。肉厚で耐久性が高い。
扱いやすさなら職人にはチートツールでも敵わないと言う事か。
ゲームのときの最強の剣とかはすぐにでも手に入るが、ゲームでの装備など見た目が全てだ。トゲトゲしてるわ、色んな物がくっついてるわ、アホみたいにデカイわで、現実で使える気がしない。
「そいつを早々にぶっ壊すようだったら、剣にゃあ向いてねぇから剣の扱いを思い出すまで別の武器にしろ」
「そうなったら、近接は諦めて遠距離武器でも持ちますよ。それじゃあこれお幾らですか」
「所詮数打ちだ、さっきの防具の代金の釣り分で構わん。あと、いけ好かねえエルフみてぇで気色悪りいから俺に敬語は止めろ」
数打ちでこのクオリティとか、ドワーフ本当凄いな。
敬語禁止はなんとなく言われる気がしていたが、ちゃんとエルフも居るんだな、そっちにも是非会ってみたいものだ。
「後こいつも持ってけ、アイテムボックスにも入る剥ぎ取り用のナイフだ」
使う機会があるか分からないが礼を言って剥ぎ取りナイフを貰う。
ドワーフと言えば酒だよな。ナイフの代金代わりになんか良いの無かったかな?
FADでは当然生産職も充実しており、それに類する料理や食材と言ったアイテム類も多かった。ゲームでは比較的簡単に手に入ったのでアイテム変化チートコードは作って無かったが、実用性の高いポーション類に混ざって酒類が混ざってくる事があった。
昨日適当にアイテム変化しまくったポーションの中に幾つか酒類が混ざってたはずだ。
「色々サンキュー。口に合うか分からないが良かったらコレでも飲んでくれ、米って言う穀物から作ったやつなんだ」
「おっ? そいつは酒か! 坊主分かってんじゃねーか! 儂等の口に合わねぇ酒なんざねーから安心しろい」
ドグラスの親父さんは俺から瓶を受け取ると、早速とばかりに口で栓を抜いて、そのままラッパ飲みをした。
「おう、飲んだことのねぇ酒だが甘みがあってうめぇな。見たことのねぇ字だが、なんて酒なんだ?」
瓶に貼られたラベルを見てドグラスの親父さんが聞いてくる。
瓶のラベルには日本語でこう書かれている。
『本みりん』
---------------------------------------------------------------------------
読んでいただきありがとうございます。
良いみりんはそのままでも普通に飲めます。
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