俺の事が大好きな○○君

椿

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文化祭小話 5

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「………やば、ビジュアルだけで完勃ちする……っ」

 上から押し殺したような声がしたが、舐めるのに集中していたせいで聞き逃してしまう。聞き返そうかと見上げると、瀬川は酷く興奮したような熱のこもる瞳でこちらを見下ろしてきていて、ドキッと心臓が変に動いた。
 彼は呼吸を整えるように大きく息を吐いてから、俺に向かって優しく指示を出す。

「……小崎、先っぽ咥えれる?」
「…んっ、……、」
「はっ……、そのまま吸ったりとか、舐めたりとか……んっ、…上手。……手で余ってるとこ擦って?」

 言われた通り、先端を口に含んでそのままおずおずと舌を動かすと、瀬川が息を詰める声がした。指を添えていた竿の部分をゆるゆると擦れば、男らしく血管を浮かせビキビキと今にもはち切れそうなくらいに膨らんでいるのを感じ取れて、…何だか、先程触らずにイけてしまった自分と同じ物だとは思えない。
 拙いフェラを続けていると、髪をすくようにして頭を撫でられた。褒められているようなそれにキュンと胸の奥が痛くなって、唾液の量が増えた気がする。
 手持ち無沙汰なのか、瀬川はそのまま一生懸命奉仕する俺の耳を弄びだした。指を差し込まれて耳の穴を塞がれると、口の中の水音が頭の中で響いてより口内での存在を意識してしまって、脳まで侵されている気分になる。じんわりと下半身にも降り積もっていくような快感に、ヒクン、と少しだけ腰が浮いた。

 俺は反抗するように、なんとなく反応が良いように思う裏筋に当たるように舌の位置を調整して、少し吸い付きながら口を緩く上下させる。自分の気持ちいい部分を思い出しながら、カリの部分を濡れた唇の輪で何度も引っ掛かけて扱いた。
 先端からじゅわっと出てきたのは瀬川の先走りだ。ちょっと苦くて咄嗟に嫌だなと思ったが、今は何だか「感じてくれたんだ」という達成感の方が勝って、俺はそれを全部舐めとるみたいに舌で吸い付く。瀬川がビクッと反応したのがわかった。……気持ち良かったのかな?

「………っは、……やばい、イキそ、……っ小崎、一回離して」
「……!……っぁ、はぁっ、…はぁ…っ、」

 性急に両手で顔を引き離された。息継ぎをしながら見上げると、快感に顔を歪めながら息を乱した瀬川の姿がある。そして目と鼻の先には、俺の唾液に濡れてむわりと湿気と熱気を保ついきり立った剛直がその存在を誇示していた。
 ゾクリ、と下半身が疼いて俺は無意識に腰をくねらせる。床に擦れた下着部分がくちゅり、と卑猥な音を立てた。

「はぁっ……ご奉仕上手で優秀なメイドさんだね。……じゃあ次は、こっちで扱いてもらおうかな…」
「っ!!」

 急に手を引かれたかと思うと、そのままベッドへと押し倒される。流れるような動作で俺の足を割り開き隙間に体を入れた瀬川は、たくし上げられたスカートの中、精液でどろどろに湿り中も透けてしまっている下着を指でずらして、じっくりそのを見つめた。

「……ヒクヒクしてるね」
「…っ!」

 先程まで指が埋まって広げられていた穴が、それを埋めるように開閉を繰り返して疼いているのは自分でも分かっていた。指摘された恥ずかしさでカァッ、と顔を赤くした俺は咄嗟に股間を隠そうとするが、それは瀬川によってすぐさま阻まれる。次いで耳元に掠れた声で「入れたい……」と言われて熱い肉棒を擦り付けられ、意識は完全にそちらに向かせられてしまった。
 脈動する怒張が今にも中に入ろうと穴の入口に合わさっていて、自然に鼓動が早鐘を打ち、それと連動するように呼吸が浅くなる。
 ……これを挿れられた時の快感はもう知っている。
 でも、目的はそれじゃない。

「まっ、待って!…っもう、分かっただろっ、…か、梶谷に何もされてないって!」
「……え?………あぁ、ン゛ンッ!……いや、入れなきゃ分かんないし…」

 瀬川は一瞬きょとんとした後、何かに気付いた顔をして、次いで気まずそうに目を逸らしてボソボソと喋った。
 え、なんか今思いだした風じゃない?もしかして忘れてた??
 俺は慌てて重ねる。

「お、俺、…このパンツ樫谷に見せてない!試着の時は、あの、いつもの男用のパンツ、履いてたから……こ、これ履いたの、…今日の……瀬川の前、だけ……」
「………ふ、ふーーーーーん。……まあでも普通の下着は見せてるわけだし俺はそれでも興奮するし」

 顔を覆ってすぅーーっ、と大きく息を吸っていたその反応的には好感触そうだったが、後に出た言葉はまだ納得していないような意味のそれだった。
 ……あれ、まだ疑われてる??なんとなくいつもの樫谷に対する対抗心の延長だと軽く見ていたけど、これ本気で俺が節操無しだと思われてるやつ!?
 え、待って。……もしこのまま行為を続けたら、俺、誰にでも身体を許すクソビッチだと証明するようなものじゃないか??

 ショックで固まる俺を他所に、瀬川は事を進めようと再度その肉棒の照準を入口へと合わせる。

「ぁ、…だ、だめ」
「……フェラまでしといてお預けはないよ。…ナカに入れて欲しくて、あんなに熱心に俺の大きくしてくれたんでしょ?」
「……っ!」
「……はぁっ、…ほら、ぐちょぐちょに濡らして……、すぐ入る」

 ぐっ、と力が入って、精液でぬめりを帯びたそこに瀬川の先端があっけなくめり込んだ。焦った俺は小さく首を振りながら、やや強めに瀬川の胸を押しやる。これ以上奥に進めないように。抵抗を示すように。

 嫌だったのだ。瀬川に節操がない淫乱野郎だと思われるのも、そんな扱いをされてしまうことも。

「……こさ、」
「………ぁ、あ、の、……俺、ほんとに、樫谷に入れられてない、です。……せ、せがわだけ、……セッ、…クス、するの、せがわと、だけ……っ、です…っ」

 敬語はきっと、メイドプレイの名残と、少しでも誠意を伝えようと思った結果だ。

 乱れたメイド服に、ピンピンに膨らんでいる乳首はそのまま剥き出し、感じ過ぎたせいで元々小さな女性用の下着はその意味を成していない程のぐちょぐちょ具合だし、紐をずらされて雄の先端を少し埋め込まれた穴は、浅ましくも媚びるようにちゅぱちゅぱ、と収縮してそこをしゃぶっていた。

 ……どう見たって説得力などない。
 恥ずかしくて、悔しくて、…でも信じて欲しくて、縋るような気持ちで俺は瀬川に言い募った。
 中の感触を確かめてもらっていたが、俺が1人でする時に後ろを弄っていたせいで判断がつかなかったようだ。
 だから俺が示せるのは、もう言葉だけ。

 瀬川は驚いたように俺を見下ろして、それから「あ゛ーー……!!」と引き潰れたような声を出しながら、勢いよく俺の肩に顔を埋めた。どういう感情かわからなくて、しかし急激に密着した距離感に一気に心臓がバクバクと暴れ出す。
 しばらく唸っていた瀬川は、それからポツリとこぼした。

「………誠也にイラついたのは本当だけど、……ごめん、俺の言ったこと殆ど建前。最初から小崎のこと疑ってないよ」
「……??」

 建前って何の??とは思ったが、その後の『疑ってない』の言葉に酷く安堵して全ての疑問は頭の隅に追いやられた。
 次の瞬間、熱い吐息が耳に直接吹き込まれる。

「…謝るから、早く挿れさせて。……小崎のこと好きすぎて、もう我慢出来ない」
「──、」

 顔を上げてこちらを見下ろした瀬川は、今にも俺に突っ込んで滅茶苦茶に犯したいと思っている獰猛な雄の顔をしていた。ギラついた強い視線にゾクゾクッ、と刺激が背筋を一気に走り抜ける。穴は瀬川を待ちわびるかのごとくぎゅーっ、と締まってはくぱっ、と開いてを激しく繰り返して、裸のペニスの先端へ吸い付いた。瀬川にもそれは伝わっていたのか、彼はフーッ、フーッ、と息を荒くしてそれを更に奥へ押し込もうとする。

「ぁ、……ふ、ふく、…汚れる…っ」
「俺が洗うから」

『入れたい』、でも『入れさせて』、でもなく、「入れるよ」と囁かれて、もうこれは決定事項で逆らう術などないのだと理解させられた。同時に、指とは比べものにならない程の質量を持った肉棒が中へねじ込まれる。

 ずぶっ、ず…っ、

「……~~っ!!」
「……っキッツ……はぁ…っ、ん、大丈夫?…痛くない?」
「は、……~~っぅう……っ!」
「……って、聞くまでもなさそう…」

 腸壁を余すことなく擦られて押し進められる感覚に、耐え難いほど感じて体をビクつかせた。俺はきっと相当に蕩けた顔をしていたんだろう。でも仕方がない。だって丁寧に解されたそこは痛みなんかなくて、伝わってくるのは埋め尽くされる圧迫感と、これから起こることへの期待なのだから。

 瀬川はゆっくりと体を揺すり出した。

「あ…っ、……っ、」
「…ここ、良い?…小崎の気持ちいいとこ、教えて」
「待っ、ヒ…ッ、……っぁ!」
「どこが1番いい?ここ気持ちいい?」
「……あっ、…っあー…ッ!はぁっ、はぁっ、ん……っ!!」
「……ふっ、…全部良さそうだからわかんないや」

 そんなことない。きっと瀬川は俺の感じるところを全部分かっている。だってそうじゃなかったら、今こんなにゆっくりな動きで気持ちよくなっている俺は何なんだ。
 一旦そんな風に中を確かめるような動きをしてから、律動が始まる。歓迎しているみたいなぬかるみの中で、ばちゅばちゅと音を立てて肉棒が埋まったり引き抜かれたりを繰り返した。突き入れる度亀頭で敏感なしこりをぐりぐりと押しつぶされて、その刺激で中が勝手に痙攣してぎゅーーっと力が入るものだから、それでさらに圧が増して快感が増長する。

 あれ、前もこんなのだったっけ。前もこんな感じの気持ちよさだったっけ。
 ……いや違う。前はもっと、何も分からないうちにめちゃくちゃにイカされるって感じで、どっちかっていうと拷問とか、レイプに近い感じだった気もする。
 でも今のは何か……、

「───あ゛ッッ!ぃっ……~~ッッ!!」
「ぁっ、ちょ、小崎……っ!」

 ずぶぶぶっ!と勢いよく突き上げられたかと思うと、その切っ先で最奥をグッと圧迫されて降り積もった絶頂感が爆発した。ビックン!と大きく体が仰け反って、その後急激に弛緩する。ヒクヒク、じゅぱじゅぱ、と精を搾り取るように収縮する肉壺に、瀬川はぐっと歯を食いしばって耐えていた。

「はぁーっ!はぁーっ!は…っ!……んんっ……、」
「……ぁぶなっ…はぁ、……持っていかれそうだった…、はぁっ」

 汗ばむ俺の額に張り付いた髪を、瀬川が指で優しく払い除ける。
 晴れた視界に見えた瀬川は、興奮とは別に、何だか心底愛おしそうな目をしてこちらを見ていた。

 ……今やってるこれは、何だか、恋人同士のセックスって感じだ。

 意識した途端、ドッと心拍数が急上昇して、体温が更に高くなった気がする。
 ああどうしよう。これじゃあ俺が変態みたいだ。……まだ、終わって欲しくないだなんて。

 漸く絶頂の余韻もおさまってきたというところで、瀬川が不意に俺の剥き出しの乳首を指で摘んだ。少しの間放って置かれてまた少し柔らかくなっていたそれは、一瞬で痛いほど張り詰める。

「…んぁっ!……やっ、ちくび…っ、」
「……ノーブラで、コリコリの可愛いピンク乳首見られたらどうするつもり?俺だけに見せるって約束だったよね?」
「ひっ、……はぁっ、はぁっ、んん…っ」
「服の上から立ってるの見えちゃうよ?何でブラしないの?」
「……っ、ゃっ……、しないっ」

「……沢山弄って、女の子みたいな乳首になったらブラする?」
「アッッ!!…はっ、ひ…っ!あっ、あっ!だ、めっ!一緒、だめ……っぃ゛!!」

 卑猥なことを言って揶揄う瀬川に首を振っていると、少し不満そうな顔をした彼がギュッ!と今までより強く乳首を抓った。敏感になりすぎたそこは絶頂寸前のような強い快感をもたらして、ビクンと大きく腰が跳ねる。それと同時にピストンも再開され、追い打ちをかけるような怒涛の責めに、俺は頭を振り乱して怖いくらいに感じた。

「ここ、…カリカリッ、てシャツに擦れるだけで発情して気持ちよくなっちゃうから、ブラした方がいいよ…っ」
「~~ン゛ッ!!…や、だぁ!……ぉ、女の子じゃ、なぃ…っ!」
「……もう小崎は女の子だよ。…女の子の格好して、エロいパンツ履いて…。乳首はピンクでぷっくりしてるし、さっき前触らないでイッたし、…っほら、ここ、…ぐちょぐちょに濡れて、俺の美味しそうにずっぽり咥え込んで………、ま◯こみたい」
「あっ、あっ、あ゛ーーッ……!!」

 乳首を指でぴるぴると小刻みに弾かれて、その快感でぎゅうぎゅう締め付けて閉じようとする中を瀬川は容赦なくペニスでこじ開ける。普通だったら貶されたと怒るような言葉だって、今は興奮の材料だった。
 男の俺が、女性器だと、ペニスを受け入れて孕むための場所だと揶揄された後孔を思い切り犯されている。絶対に本物の女にも困らないであろうあの瀬川が。俺なんかに興奮して。
 そう考えたら、たまらない気持ちになった。

「……っ、お、……女の子、っの、方が……っ、すき…っ?」
「──、」

 その質問には特に悲観的な意味はなかった。答えも特に求めておらず……というか決めつけてしまっていた。瀬川も抱くならそりゃ女の子の方がいいだろうから、それなのに男の俺に突っ込んで一生懸命腰振って、無い胸を揉んでご苦労様だな、と後で笑ってやろうと思っただけだ。
 しかし、瀬川の反応は俺の予想とは違っていた。

 ピストンが止まって、瀬川は「あ、失敗した」みたいな顔をして、

「……っごめん、…性別とか関係なく、俺は小崎だけが好きだよ」

 直後、乳首に触れるのもやめた瀬川は、シーツを強く掴んでいた俺の手をとって指を絡め、密着させてから同じ場所に縫い付けた。
 ……あ、いや、そんな、不安になったとかじゃなくて…。なんて言い訳は、すぐに再開された激しい突き上げで声にならないまま消えた。

「…ぅあ゛…っ!!」
「好き…っ、好きだよ小崎。全部好き」
「~~ッッ!!ひっ、ぃ゛っっ!!……っゔ、」

 汗ばんで密着する体と、耳に吹き込まれる『好きだ』という言葉。息遣いが荒く、握られる手も凄く熱くて、瀬川の全身から興奮が伝わってきた。
 不意に胸の奥がギュッと痛くなって、足が数度空を蹴る。気付いた時には射精してしまっていた。ビクンッ!ビクンッ!と痙攣する体で息をつく暇もなく、また俺のそれを待たずに瀬川は抽挿を続ける。

「……はぁっ…、ん、…今日、すごい敏感だね?女装セックスに興奮してる?…それとも俺とするの久々で、嬉しい?」
「ぁ゛……っ!…フーッ、フーッ、……ん゛、だ、めっ、イ゛ッ、でる…っ!!」
「……まだ、もう一回イこ…っ?はぁ、…大好き、小崎」
「~~ッ!!……ぐ、ぅッ!ぁ゛ーーっ、……っ!!」
「……っ、…はぁっ、…俺も、イく…!」

 イッた直後の激しく収縮している中をずちゅずちゅと遠慮なく穿たれて、前立腺を執拗に叩かれる暴力的な快感に腰が浮く程跳ねた。
 だめだ、頭、ぼーっとする。感じすぎてヤバい。もう、気持ちいいことしか考えられない。

 律動が速さを増して、瀬川の絶頂が近いことが分かった。
 激しくブレる視界の中、腹の奥にぐーっと力が入って、内腿がガクガクと痙攣し出す。それは絶頂の予感だった。直後、ブワッと全身に鳥肌が立つ感覚があって、
 あ、もうイク、体がイク準備してる…っ!

 それに身を任せようとした、──瞬間。

 バタン!!
 遠くで、しかし確実に自身の家だとわかる距離で、分厚い玄関扉の開閉音がした。

「ただいまー。順平~?知らない靴あるけど、誰か来てるの?」
「「──っっ!?」」

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