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鳥の村と港町
第二話
しおりを挟む港町に着くと、
運んだ丸太を買い取ってもらい、
お仕事は終了。
あとは帰るだけとなったとき、
三姉妹の長女が、
メラミに村へ来るよう誘ってきた。
「お礼がしたいので、
私たちの村に来てもらえないかしら?」
お礼も何も、
たいしたことはしていないのにゃ、
と一度は断ったものの、
ぜひどうぞ、と求められ、
メラミは彼女たちの村へ
一緒に行くことにした。
なんと、小鳥の三姉妹の住む村は、
メラミが住んでいたお城の
すぐそばを通り越して、
トラばあちゃんの家がある湖の近く、
森に囲まれたところにあった。
湖のほとりでは、たまに鳥たちを
たくさんみかけることがあったけれど、
まさかこんな近くに村があったなんて、
とメラミは驚いた。
しかも村の住民はすべて鳥。
三姉妹は青い羽がきれいなカワセミで、
森の周辺を警護するフクロウや、
村の木を伐採するキツツキ、
木を運ぶスズメやインコなど、
とにかくいろんな鳥がいっぱいいる。
黒と白、猫だけの世界で暮らしていた
メラミにとって、今日は初めてのこと
ばかりを経験する日になった。
村の入口近くでいったん待たされたあと、
村の中心部にあるログハウスへ案内された。
そこで村長と名乗る鳥が現れたのだが、
「はじめまして、私がこの村の村長です」
それは、背の高い、
大きなハシビロコウだった。
「小鳥の三姉妹が、
とてもお世話になったそうで、
ありがとうございました」
ネクタイを締め、スーツを着用しており、
紳士的な態度で握手を求められる。
メラミも、
「こちらこそ、楽しくおしゃべりができて、
ありがたかったですにゃ」
と、差し出された羽を握り返した。
村長の隣には、
小柄なハシビロコウが立っており、
「この子は、息子のコウタです」
と紹介された。
「初めまして、猫の魔女さん」
と父親に違わず紳士的な身のこなし。
ペコリと頭を下げて、
優しくほほえんできたので、
「初めまして。メラミと申しますにゃ」
メラミも丁寧にお辞儀を返した。
「何もない村ですが、
ゆっくりおくつろぎください」
ログハウスは、村の集会所と
村長の自宅を兼ねているそうだ。
夕食をぜひご一緒にと、
三姉妹とメラミは
ごちそうになることになった。
ずっとしゃべり続ける三姉妹と、
笑顔で聞き役に徹するハシビロコウ親子。
三姉妹は、自分たちの名前が
あまりにも安直だと不満を漏らしたり
(長女がパティーで、次女がピティー、
三女がプティー、だそうだ)、
朝と勘違いして、夜中に突然鳴きだす
ニワトリさんのお話や、
村のラジオ放送でオウムさんが披露する
ものまねトークが面白いとか、
話の種は尽きることなく、
メラミは楽しいひとときを
過ごすことができた。
夕食が終わると、
三姉妹はお礼を言って自宅へ帰り、
メラミはそのままログハウスの客間に
泊めてもらえることになった。
夕食の後片付けを手伝った後、
メラミは村長とコウタと一緒に、
リビングでコーヒーを飲みながら
世間話をしていたのだが、
驚いたことに村長の口から、
トラばあちゃんの名前が出てきた。
「村長さんたちは、
トラばあちゃんのことを
知っているのにゃ?」
メラミが尋ねると、
村長とコウタが顔を見合わせ、
うれしそうにほほえんだ。
「メラミさん、やはりあなたは、
あの猫たちの国のお方なのですね?」
「はい、まあ、そうですにゃ……」
メラミとしては家出というか、
お城を出て来た手前、
少しばかり気まずい気分になる。
それにしても、
周囲を森に囲まれた、
この村の近くに湖があり、
そのほとりに住んでいたのが
トラばあちゃん。
森で木の実を拾ったり、
湖の魚を釣りに来たりと、
顔を合わせる機会が多く、
この村の鳥たちとトラばあちゃんは、
ご近所さんとして仲が良かったそうだ。
「僕たちの誰かが怪我や病気をしたときは、
トラさんが駆けつけて助けてくれました」
コウタがトラばあちゃんのことを
『トラさん』と呼んだことに、
少し気恥ずかしさを感じたが、
自分と親しい誰かの話を
共有できることはうれしかった。
トラばあちゃんが旅に出掛けた、
今日の夜明け前も、村長とコウタに
旅の挨拶に来たそうだ。
もしかしたらメラミという猫の女の子が
村に立ち寄るかもしれないので、
そのときはよろしく伝えてほしい、
と伝言を預かったという。
メラミは、
トラばあちゃんのことを思い出して、
すぐにでも会いたい想いに駆られる。
なんだか泣き出したくもなってきたが、
ここはぐっとこらえて、
ちょっぴり苦いコーヒーを
ゴクリと飲み込んで、やり過ごした。
「トラばあちゃんのこと、
教えて頂きありがとうですにゃ」
「いやいや、こちらこそ。
トラさんから聞いていたメラミさんに、
こんなに早くお会いできて、
私たちもうれしいです」
メラミは心の中で、
トラばあちゃんに感謝した。
旅に出て、ほんと良かったにゃあ。
「ところで、少しばかり
お知恵をお借りしたいのですが…」
村長はここで、
村に起きている問題へと話題を変えてきた。
「小鳥の三姉妹から、
お聞きになったとは思うのですが、
この村の木材を、船の材料として
港町まで運んでいます。
運搬の手段としては、小鳥たちの力に
頼っているのが現状です。
大人の鳥でも、丸太を何本も運ぶのには
時間がかかりますし、
あまりにも効率がよくないのです。
何か良い方法はないものでしょうか?」
そこでメラミは、
今日一日のことを思い出してみた。
三姉妹が丸太を一本運ぶのに
半日ほどかかる。
丸太の重量を考えれば、
運ぶ丸太の数を増やすのは難しいだろう。
ひとまず、私にできそうなことは何だろう?
そこでメラミは、あることを思いつき、
「明日、試してみたいことがありますにゃ」
と答えた。
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