死神クラブ

影津

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第6話 会員

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 俺たちがカップルならこの場の空気は晴れやかな秋空だったろう。でも、二人の気分は冷たく吹き始めた木枯らしで酷いものだった。

「おう、レン早いな」

 家には何と、父がいた。日曜日はいつも昼から飲みに行っているのにどうしたことだろう。

「親父の方こそ早いのは何で?」

 父は隣にミキがいるのに気づいて怪訝そうな顔をした。

「彼女か?」

「違う」

 即答すると、父は柄にもなくお茶を沸かしはじめた。まさか父がいるとは思わなかったので、どう話を切り出したらいいか分からなくなった。仕方がない。テレビでもつけよう。

「あの、おじさんそのビールって」


 ミキが口ごもりながら質問した。父の手にしているのは俺たちのために注いだお茶と、自分用のビールだった。だが、そのビールのラベルが見たこともないメーカーのものだった。飲み物にドクロマークのロゴを入れるなんて、なかなか珍しい。

「ああ、これは先月から飲料水のメーカーに進出してきた会社のビールだ。死神クラブ株式会社ってのが作ってて、会員になったら特別にもらえたんだ」

 今なんと言った? 株式会社? それに、会員になっただって?

「その会社って、クラブとかも作ってるのか?」

「当たり前だろ? 何だお前、勧誘されたのか? 入っとけ入っとけ。金がすぐに溜まるぞ。じゃあお小遣いもいらねぇな。俺が電話して入会させてやるよ。ミキちゃんもどうだい?」

 電話を取りに行こうとする父を引っつかんだ。

 「やめろ! 何勝手なまねしてくれてるんだ」

 父は眉間にしわを寄せて俺を睨んだ。何も語られなかった。沈黙が気まずい。ふと父がキッチンに入っていく。俺とミキは緊張したまま、テレビに視線を移す。野球中継で阪神タイガースが勝っている。

「退会したい? 何て言ってないよな?」 

 父は顔を真っ赤にして包丁を取り出していた。丁度テレビはCMに入る。

 『この番組はご覧のスポンサーと、死神クラブの提供でお送りしました』
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