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俺の理想の犬探し
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俺は子供のときから理想の犬を探している。
犬自体好きなのだが、さらに俺の夢が全部こめられた理想の犬だ。
条件を挙げるとキリがない。
まず茶髪か金髪のふさふさしたやつ。
体は大きめで、わがままを言わず、俺が帰ってくるといつも尻尾を振り回しながら擦り寄ってくる。
よく気が利いていて、おれが寒い時は温めてくれて、悲しい時には慰めてくれる。
そんな俺の癒し、俺が一心に愛を捧げる理想の犬。
「今日も見つからなかった…」
「圭ちゃんはまた犬探しているの?」
「俺はいつだって探している。この先もずっと探すんだ…」
「なんか圭ちゃんポエマーだね。」
「うるさい。昴こそ、そのポエマーにいつもくっついているくせに」
「だって圭ちゃん面白いからさ。飽きないんだよね~」
俺が真剣な犬探しの旅(放課後のみ)をしている間、昴はいつも俺の後をついてくる。
散歩中の犬に見惚れてついていってしまった時も、こいつも一緒になってついてきている。
少々うざったいが、それでも俺が昴の同行を認めているのは、俺以上に犬に好かれるからだ。
こんなにも俺は犬が好きなのに、いつも何故か犬には引き気味にされてしまう。
なんでだ? 体臭か? 俺なんかしたか?
「それにしてもなんで圭ちゃんいっつも犬に嫌われるんだろうね~」
「知るか。」
「ワンちゃんを舐めるように眺めるから、避けられてるんじゃない?」
「理想の相手かどうかみるのに端から端までじっくり眺めるのは当たり前だろう!」
「いや、それがきもいんだって。そんなのに耐えられる犬は滅多にいないよ~」
俺はあくまで真剣に理想の犬を探しているんだ。
もし犬に言葉が通じるなら、俺は声を大にして言いたい。
「誰か! 私の理想のお犬様の誰かいらっしゃいませんか~!」と。
……わかっている。自分でも十分変態くさいとは思う。
でもそれでも、理想の犬に対する俺のドリームは止まらないのだ。
今日も学校帰りの放課後を利用して、理想のお犬様探しは続く。
もしかしたら、もうこの街にはいないのかもしれない。もしかしたら、人生をかけて探すことになるのかもしれない。
そんな諦めの気持ちを抱きながら、公園の芝生を通りすがった矢先のことだった。
「ワフゥン!」
聞いたことのない声だった。まだお会いしてないお犬様がいたとは!
俺は首を180度回転させて、声のする方を向いた。
そこで俺は思考が一瞬止まってしまった。だって仕方ないだろう。
昴がはっはっ言いながら四つん這いになっていたのだ!
人間は唐突で意外なことが起きると、一旦思考が停止するらしい。
一瞬犬の首輪をつけた昴が見えたような幻覚も見える。
「おい! 昴! 何やってんだ!」
「ワン! わふぅん!」
まるで犬のように俺に擦り寄ってくる昴。
俺は気が動転しながらも、素早く事態を飲み込み、昴を宥めることにした。
犬ならまずは宥めることが必要だ。
「よーしよしよし! いい子だな~昴は!」
「くぅぅん。わふぅん」
公園の芝生の上で、腹を上にしながら俺に体を寄せてくる昴。
考えようによっては普段犬に近づけない俺が、好きなだけ犬(?)に触れられるいい機会のように思えてきた。
数分なでているうちに「これでもいいか」なんて考えて始めてはっと気づく。
客観的に見ればこの状況、男子高校生が芝生の上で尋常じゃない雰囲気で戯れあっているようにしかみえない。
うっかり流されるところだった!
子供連れのお母さんがこちらに目を合わせないように離れて目の前を過ぎ去っていく。
やばい! これは通報案件だ!
気持ちを切り替えて、俺は昴を抱えて一目散に昴の家まで運んだのだった。
病院にいきなり連れていくのもまずいだろうと思い、まず昴のお母さんに見てもらおうと判断したのだ。
「くぅぅん」
「あらあら、これは困ったわねえ。」
昴のお母さんはこの異常な様子の昴を見てもさほど動揺していないようだった。
なぜだ?
いや、その前にいまだに俺に体を擦り付けて、ワフワフいっている昴をなんとかしてほしい。
「実はね。うちの家系なのよ~。」
??? うちのかけいなのよ?
「すみません。もう少し詳しく。」
「うちの家族は全員気に入った人がいると犬の本性に戻っちゃうのよね~ほら、うちの先祖犬だから。」
「犬は二本足では歩きませんが? それ人類史を覆す話なのですが?」
「いやうちのご先祖はできるようになったのよ~。」
その話は長くなりそうなので、本題にさっさと入ることにする。
「え? それでこの状況はどういう・・・。」
「どうしようもなく気に入った人ができるとこうなっちゃうのよ~だからうちの子なでなでしてあげれば元に戻ると思うわ~圭ちゃんあとはよろしくね~」
おっとりした口調でありながら、高速で捲し立てた昴母は言いたいことだけ言うと、「買い物にいってくるわ~ごゆっくり~」と家を出て行ってしまった。
つまり昴は俺のことを気に入ってくれているということか。
というかあの状況のどこにそのスイッチがあるのかさっぱりわからない。
俺はワフワフからくぅ~んくぅ~んに鳴き声が変わった昴に顔を戻す。
気がつくと、俺の顔を寂しそうにじっと眺めてくる昴と目があった。
なんだかこいつに寂しそうな顔をされると、自分も悲しい気持ちになってくる。
俺は膝の上に昴の頭を乗せて、ゆっくりとその茶色の髪の毛を撫でた。
「そういえば、昴の地毛って茶色なんだよな…」
こうして撫でていると、昴の特徴は俺の理想をほとんど持っていることに気がつく。
いつ会っても俺の顔をみると嬉しそうに近づいてくるし、いつも擦り寄るくらい距離が近い。
俺の心の変化にはなぜかすぐに気がついて俺を慰めてくれる。
こいつがいつも近くにいてくれたおかげで、犬狂いの俺も最近は寂しく無くなってきたような気がする。
「昴って俺の理想の犬かも・・・」
俺の膝の上に頭をのっけたままの昴は、気持ちよかったのか寝息をたてている。
案外こんな近くに俺の理想の犬がいたとは、いや正確には犬ではないが。
俺の理想の犬探しはここで終わったのかもしれない。
そうぼんやりと考えていた俺は、その時昴がニヤッと口角を上げたことを知ることはできなかった。
犬自体好きなのだが、さらに俺の夢が全部こめられた理想の犬だ。
条件を挙げるとキリがない。
まず茶髪か金髪のふさふさしたやつ。
体は大きめで、わがままを言わず、俺が帰ってくるといつも尻尾を振り回しながら擦り寄ってくる。
よく気が利いていて、おれが寒い時は温めてくれて、悲しい時には慰めてくれる。
そんな俺の癒し、俺が一心に愛を捧げる理想の犬。
「今日も見つからなかった…」
「圭ちゃんはまた犬探しているの?」
「俺はいつだって探している。この先もずっと探すんだ…」
「なんか圭ちゃんポエマーだね。」
「うるさい。昴こそ、そのポエマーにいつもくっついているくせに」
「だって圭ちゃん面白いからさ。飽きないんだよね~」
俺が真剣な犬探しの旅(放課後のみ)をしている間、昴はいつも俺の後をついてくる。
散歩中の犬に見惚れてついていってしまった時も、こいつも一緒になってついてきている。
少々うざったいが、それでも俺が昴の同行を認めているのは、俺以上に犬に好かれるからだ。
こんなにも俺は犬が好きなのに、いつも何故か犬には引き気味にされてしまう。
なんでだ? 体臭か? 俺なんかしたか?
「それにしてもなんで圭ちゃんいっつも犬に嫌われるんだろうね~」
「知るか。」
「ワンちゃんを舐めるように眺めるから、避けられてるんじゃない?」
「理想の相手かどうかみるのに端から端までじっくり眺めるのは当たり前だろう!」
「いや、それがきもいんだって。そんなのに耐えられる犬は滅多にいないよ~」
俺はあくまで真剣に理想の犬を探しているんだ。
もし犬に言葉が通じるなら、俺は声を大にして言いたい。
「誰か! 私の理想のお犬様の誰かいらっしゃいませんか~!」と。
……わかっている。自分でも十分変態くさいとは思う。
でもそれでも、理想の犬に対する俺のドリームは止まらないのだ。
今日も学校帰りの放課後を利用して、理想のお犬様探しは続く。
もしかしたら、もうこの街にはいないのかもしれない。もしかしたら、人生をかけて探すことになるのかもしれない。
そんな諦めの気持ちを抱きながら、公園の芝生を通りすがった矢先のことだった。
「ワフゥン!」
聞いたことのない声だった。まだお会いしてないお犬様がいたとは!
俺は首を180度回転させて、声のする方を向いた。
そこで俺は思考が一瞬止まってしまった。だって仕方ないだろう。
昴がはっはっ言いながら四つん這いになっていたのだ!
人間は唐突で意外なことが起きると、一旦思考が停止するらしい。
一瞬犬の首輪をつけた昴が見えたような幻覚も見える。
「おい! 昴! 何やってんだ!」
「ワン! わふぅん!」
まるで犬のように俺に擦り寄ってくる昴。
俺は気が動転しながらも、素早く事態を飲み込み、昴を宥めることにした。
犬ならまずは宥めることが必要だ。
「よーしよしよし! いい子だな~昴は!」
「くぅぅん。わふぅん」
公園の芝生の上で、腹を上にしながら俺に体を寄せてくる昴。
考えようによっては普段犬に近づけない俺が、好きなだけ犬(?)に触れられるいい機会のように思えてきた。
数分なでているうちに「これでもいいか」なんて考えて始めてはっと気づく。
客観的に見ればこの状況、男子高校生が芝生の上で尋常じゃない雰囲気で戯れあっているようにしかみえない。
うっかり流されるところだった!
子供連れのお母さんがこちらに目を合わせないように離れて目の前を過ぎ去っていく。
やばい! これは通報案件だ!
気持ちを切り替えて、俺は昴を抱えて一目散に昴の家まで運んだのだった。
病院にいきなり連れていくのもまずいだろうと思い、まず昴のお母さんに見てもらおうと判断したのだ。
「くぅぅん」
「あらあら、これは困ったわねえ。」
昴のお母さんはこの異常な様子の昴を見てもさほど動揺していないようだった。
なぜだ?
いや、その前にいまだに俺に体を擦り付けて、ワフワフいっている昴をなんとかしてほしい。
「実はね。うちの家系なのよ~。」
??? うちのかけいなのよ?
「すみません。もう少し詳しく。」
「うちの家族は全員気に入った人がいると犬の本性に戻っちゃうのよね~ほら、うちの先祖犬だから。」
「犬は二本足では歩きませんが? それ人類史を覆す話なのですが?」
「いやうちのご先祖はできるようになったのよ~。」
その話は長くなりそうなので、本題にさっさと入ることにする。
「え? それでこの状況はどういう・・・。」
「どうしようもなく気に入った人ができるとこうなっちゃうのよ~だからうちの子なでなでしてあげれば元に戻ると思うわ~圭ちゃんあとはよろしくね~」
おっとりした口調でありながら、高速で捲し立てた昴母は言いたいことだけ言うと、「買い物にいってくるわ~ごゆっくり~」と家を出て行ってしまった。
つまり昴は俺のことを気に入ってくれているということか。
というかあの状況のどこにそのスイッチがあるのかさっぱりわからない。
俺はワフワフからくぅ~んくぅ~んに鳴き声が変わった昴に顔を戻す。
気がつくと、俺の顔を寂しそうにじっと眺めてくる昴と目があった。
なんだかこいつに寂しそうな顔をされると、自分も悲しい気持ちになってくる。
俺は膝の上に昴の頭を乗せて、ゆっくりとその茶色の髪の毛を撫でた。
「そういえば、昴の地毛って茶色なんだよな…」
こうして撫でていると、昴の特徴は俺の理想をほとんど持っていることに気がつく。
いつ会っても俺の顔をみると嬉しそうに近づいてくるし、いつも擦り寄るくらい距離が近い。
俺の心の変化にはなぜかすぐに気がついて俺を慰めてくれる。
こいつがいつも近くにいてくれたおかげで、犬狂いの俺も最近は寂しく無くなってきたような気がする。
「昴って俺の理想の犬かも・・・」
俺の膝の上に頭をのっけたままの昴は、気持ちよかったのか寝息をたてている。
案外こんな近くに俺の理想の犬がいたとは、いや正確には犬ではないが。
俺の理想の犬探しはここで終わったのかもしれない。
そうぼんやりと考えていた俺は、その時昴がニヤッと口角を上げたことを知ることはできなかった。
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