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第2章
64話 洞窟へと続く穴を開ける俺
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まだ陽が出てない中での行軍は、意外にもギルド長の特別なスキルのおかげで簡単にできた。
ギルド長の「暗視」スキルは盗賊専用のもので、彼女が先頭を歩くことで道を間違えずに行軍することができる。
そんなスキルもあるのか…と自分が作った世界であるにもかかわらず、知らないことがまだたくさんあるんだなと感心した。
特に手を加えたわけでもないのに、データ上だが人類が独自に文明を築いているのって考えたらすごいことだ。今まで俺の力が及ばず滅びてしまった過去の世界も、もしかしたら色々な発展をして行ったのかもしれない。
僕は今まであまり深くかかわらないように世界を運営してきたことを反省した。
「オルガさんのおかげで安心して先に進むことができます。ありがとうございます。」
「私自身このスキルが人を救うことになるとはびっくりしている。生きていれば何が起きるかわからんな。」
「そうですね。あの…ずうずうしいお願いなのですが、今度できたら他のスキルも教えていただけませんか?」
「時間があればな。まずは誘拐された人たちを救い出すことに全力を出そう。」
「はい!」
オルガはいつもキビキビした印象の強面の女性だが、時折にっこり微笑んで話してくる。俺の通っていた学校にもこんな感じの先生がいたような気がして親近感が強い。
「タケル何を話していたんだ?」
「クリスさん、オルガさんのスキルがすごいですねって話をしてました。僕、この救助作戦が上手く行ったらオルガさんにスキルを教えてもらおうと思って…。」
「それはよかったな。今回も絶対に助けよう。」
「ええ。僕も全力を出します。」
出発して2時間ほどで森の入り口に到着した。直線距離であれば1時間くらいで着くのだが、気づかれないように迂回して移動したため倍の時間がかかった。すでに朝日が登り始め、徐々に周囲が明るくなり始めている。
「それでは事前に説明したようにここからは二手に分かれる。待機組は作戦開始時の合図があるまで待っていてほしい。この後の指示は騎士団隊長が引き継ぐ。」
キーレンがそう話すと騎士団の隊長が指示を出した。
ここからは先行して誘拐された人たちを救出する先行組と、作戦開始時に洞窟の入り口から逃げようとする犯人たちや、外からの増援を防ぐ待機組とに分かれる。
先行組は俺たちのパーティやギルド長のオルガ、それと騎士団と冒険者の選抜メンバー、監察部の16名だ。残りのメンバーは待機組としてこちらが合図するまで気づかれないように森で待機となる。
俺たち先行組は森で警戒しているであろう犯人たちに気づかれないよう移動する。
その上で洞窟の地図上で奥になる部分に一番近いであろう地表を探す。
実際に洞窟まで適切な通路を作るには、地面をスキャンしてその構造がわからなければ難しい。
ただ穴を開けるだけでは、下手したら天井に穴を開けてしまうことも考えられる。
なので俺はナビーに頼んで一番通路を作るのに最適な位置まで、「土魔法を極めたおじいちゃんが言うには」と言いつつ先行組をそれとなく誘導する。
そういえば俺の本当のじいちゃんは建築士の資格を持っていて、建物を建てる地盤の話をよくしてたっけ。そう思えばあながち嘘でもないような気もする。…話はほとんど覚えていないけど。
最適なスポットまで到着し、あとは俺が魔法を使うところを救出メンバーに見守られている。
今俺たちが立っているところは、洞窟の入り口から300mほど離れた位置にある。入り口は崖の下、俺たちは崖の上という位置関係だから死角になっていてこちらに気づかれる心配も無いだろう。
「それじゃあ通路を作ります!危ないので皆さん十分に離れてください!」
そう言ってみんなが俺が立つところから離れたのを確認してから、俺はナビーに頼んで大地構成の変更スキルを発動した。元々このスキルは神である創造者モードで、人類の街づくりを支援するために使える奇跡の一つだ。それをここでは簡略化して冒険者モードでも使えるようにしてもらった。
ボコボコと音がして徐々に穴が開いていく。
今このモードのままではどんな風に進んでいるかまでは確認できないが、おそらく洞窟内部まで掘り進んでいるのだろう。もちろん掘り進んだ場所も見張りの人間だとかにバレないよう、絶妙な位置に出る様に調整している。その上わかりにくいように仕掛けもした。
10分ほど待つとナビーが、「大地構成の変更が終了しました。」と報告してくれた。
「終わりました!」
「も、もう終わったのか?まだ10分しか経っていないが…?」
「え?終わりましたよ?」
選抜メンバーの冒険者が聞いてくる。答えると選抜メンバーの騎士団や冒険者たちが目を剥いてびっくりしている。
「あ~タケルはね、こんな感じだからいちいち驚くことはない。さ、それより救出を急ごう。」
場の雰囲気が異様になってきたのを察知してかキーレンが間に入ってくれた。助かった。
一応通路の中は斜面は階段にしておいたり、所々灯りをつけたりしたけど特に誰ももう突っ込むものはいないようだ。
通路は人が2人ほどは立てるくらいの幅がある。その中を先頭は俺たちのパーティーとオルガ、その後ろに選抜メンバーが続く。どこにいるか姿は見えないけど監察部の皆さんもついてきているはず。
200mほど進むと行き止まりになるが、ここが出口の合図になる。
「タケル、どういうことだ?行き止まりなのだが…。」キーレンが心配げに俺に尋ねてくる。
「ああ、ご安心ください。これは幻です!見かけは壁があるように見えますが、実際には何もありません。だからここが通路の入り口だと気づかれることもありません。」
「な!…本当に君というやつは面白いな。」
「本当にねえ…中の様子はどうだい?」
「僕が見に「俺がみよう。」
「僕が見に行きます」と言おうとしたら被り気味にクリスが申し出た。俺が作った通路なんだから責任持って中の様子を探ろうと思ったんだけど、察したクリスが先に前に出てしまった。心配性だな~。
クリスは恐る恐る壁の幻影に手を近づけて、すり抜けることに気がつくと今度は体ごと中に入っていった。
すぐにクリスが戻ってきた。クリスがいうにはちょうど牢屋の様な部屋が並んでいるところに出たらしい。それに中は洞窟とは思えないほど綺麗に整っていて、まるで建物の中の様だったとも話した。ただ、中の通路はそんなに広くはないので、一旦は俺たちパーティとオルガだけ先行し、救助の目処が経ったら残りのメンバーも突入することにした。待機組への合図はそのタイミングで出すこととした。
確認が終わった後、俺たちは出口を抜けて洞窟内部に入った。
ギルド長の「暗視」スキルは盗賊専用のもので、彼女が先頭を歩くことで道を間違えずに行軍することができる。
そんなスキルもあるのか…と自分が作った世界であるにもかかわらず、知らないことがまだたくさんあるんだなと感心した。
特に手を加えたわけでもないのに、データ上だが人類が独自に文明を築いているのって考えたらすごいことだ。今まで俺の力が及ばず滅びてしまった過去の世界も、もしかしたら色々な発展をして行ったのかもしれない。
僕は今まであまり深くかかわらないように世界を運営してきたことを反省した。
「オルガさんのおかげで安心して先に進むことができます。ありがとうございます。」
「私自身このスキルが人を救うことになるとはびっくりしている。生きていれば何が起きるかわからんな。」
「そうですね。あの…ずうずうしいお願いなのですが、今度できたら他のスキルも教えていただけませんか?」
「時間があればな。まずは誘拐された人たちを救い出すことに全力を出そう。」
「はい!」
オルガはいつもキビキビした印象の強面の女性だが、時折にっこり微笑んで話してくる。俺の通っていた学校にもこんな感じの先生がいたような気がして親近感が強い。
「タケル何を話していたんだ?」
「クリスさん、オルガさんのスキルがすごいですねって話をしてました。僕、この救助作戦が上手く行ったらオルガさんにスキルを教えてもらおうと思って…。」
「それはよかったな。今回も絶対に助けよう。」
「ええ。僕も全力を出します。」
出発して2時間ほどで森の入り口に到着した。直線距離であれば1時間くらいで着くのだが、気づかれないように迂回して移動したため倍の時間がかかった。すでに朝日が登り始め、徐々に周囲が明るくなり始めている。
「それでは事前に説明したようにここからは二手に分かれる。待機組は作戦開始時の合図があるまで待っていてほしい。この後の指示は騎士団隊長が引き継ぐ。」
キーレンがそう話すと騎士団の隊長が指示を出した。
ここからは先行して誘拐された人たちを救出する先行組と、作戦開始時に洞窟の入り口から逃げようとする犯人たちや、外からの増援を防ぐ待機組とに分かれる。
先行組は俺たちのパーティやギルド長のオルガ、それと騎士団と冒険者の選抜メンバー、監察部の16名だ。残りのメンバーは待機組としてこちらが合図するまで気づかれないように森で待機となる。
俺たち先行組は森で警戒しているであろう犯人たちに気づかれないよう移動する。
その上で洞窟の地図上で奥になる部分に一番近いであろう地表を探す。
実際に洞窟まで適切な通路を作るには、地面をスキャンしてその構造がわからなければ難しい。
ただ穴を開けるだけでは、下手したら天井に穴を開けてしまうことも考えられる。
なので俺はナビーに頼んで一番通路を作るのに最適な位置まで、「土魔法を極めたおじいちゃんが言うには」と言いつつ先行組をそれとなく誘導する。
そういえば俺の本当のじいちゃんは建築士の資格を持っていて、建物を建てる地盤の話をよくしてたっけ。そう思えばあながち嘘でもないような気もする。…話はほとんど覚えていないけど。
最適なスポットまで到着し、あとは俺が魔法を使うところを救出メンバーに見守られている。
今俺たちが立っているところは、洞窟の入り口から300mほど離れた位置にある。入り口は崖の下、俺たちは崖の上という位置関係だから死角になっていてこちらに気づかれる心配も無いだろう。
「それじゃあ通路を作ります!危ないので皆さん十分に離れてください!」
そう言ってみんなが俺が立つところから離れたのを確認してから、俺はナビーに頼んで大地構成の変更スキルを発動した。元々このスキルは神である創造者モードで、人類の街づくりを支援するために使える奇跡の一つだ。それをここでは簡略化して冒険者モードでも使えるようにしてもらった。
ボコボコと音がして徐々に穴が開いていく。
今このモードのままではどんな風に進んでいるかまでは確認できないが、おそらく洞窟内部まで掘り進んでいるのだろう。もちろん掘り進んだ場所も見張りの人間だとかにバレないよう、絶妙な位置に出る様に調整している。その上わかりにくいように仕掛けもした。
10分ほど待つとナビーが、「大地構成の変更が終了しました。」と報告してくれた。
「終わりました!」
「も、もう終わったのか?まだ10分しか経っていないが…?」
「え?終わりましたよ?」
選抜メンバーの冒険者が聞いてくる。答えると選抜メンバーの騎士団や冒険者たちが目を剥いてびっくりしている。
「あ~タケルはね、こんな感じだからいちいち驚くことはない。さ、それより救出を急ごう。」
場の雰囲気が異様になってきたのを察知してかキーレンが間に入ってくれた。助かった。
一応通路の中は斜面は階段にしておいたり、所々灯りをつけたりしたけど特に誰ももう突っ込むものはいないようだ。
通路は人が2人ほどは立てるくらいの幅がある。その中を先頭は俺たちのパーティーとオルガ、その後ろに選抜メンバーが続く。どこにいるか姿は見えないけど監察部の皆さんもついてきているはず。
200mほど進むと行き止まりになるが、ここが出口の合図になる。
「タケル、どういうことだ?行き止まりなのだが…。」キーレンが心配げに俺に尋ねてくる。
「ああ、ご安心ください。これは幻です!見かけは壁があるように見えますが、実際には何もありません。だからここが通路の入り口だと気づかれることもありません。」
「な!…本当に君というやつは面白いな。」
「本当にねえ…中の様子はどうだい?」
「僕が見に「俺がみよう。」
「僕が見に行きます」と言おうとしたら被り気味にクリスが申し出た。俺が作った通路なんだから責任持って中の様子を探ろうと思ったんだけど、察したクリスが先に前に出てしまった。心配性だな~。
クリスは恐る恐る壁の幻影に手を近づけて、すり抜けることに気がつくと今度は体ごと中に入っていった。
すぐにクリスが戻ってきた。クリスがいうにはちょうど牢屋の様な部屋が並んでいるところに出たらしい。それに中は洞窟とは思えないほど綺麗に整っていて、まるで建物の中の様だったとも話した。ただ、中の通路はそんなに広くはないので、一旦は俺たちパーティとオルガだけ先行し、救助の目処が経ったら残りのメンバーも突入することにした。待機組への合図はそのタイミングで出すこととした。
確認が終わった後、俺たちは出口を抜けて洞窟内部に入った。
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