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第2章
56話 ラルスに打ち明ける俺
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ここまでラルスが全部話したのであれば、こちらももはや素性を隠す必要はないだろう。
俺たちは互いの顔を見合って、自分たちの目的を話すことを確認した。
クリスが代表して話し出す。
「ラルス殿、実は私たちはあなたの身辺を調査する依頼を受けてここにきました。あなたの行動がどうにも不可思議で事情がわからないので、調査してほしい。と。」
「な…。それでは娘のことは…。」
「それは必ず。依頼主も状況を知れば必ず救出に赴くように指示を変更するはずです。あなたのここ最近の行動も事情があり脅迫されてのものだったことも伝えますので、ご安心ください。決して敵ではありませんよ。」
「しかし…あまり広まると娘の命が…」
「それもご安心を。あの方達は秘密は必ず守る人たちです。」
「そうですか…。いや、驚きでした。やけに有能な使用人や治療師が入ってきたと思ったが。そうでしたか。
私は逮捕されても構いません。それだけのことをしてしまった…。だが、娘のことだけはなんとか助けていただきたいのです。」
俺たちが調査目的で潜入してきたことを聞いて驚いてはいたが、今は何より娘を救出することが最優先だ。念の為依頼主が誰かは今の所言わないでおいたが、それも本当は必要ないのかも知れない。
ただこうやってラルスに調査目的であったことを言っていけば後々行動しやすくなるし、ラルスを少しでも安心させられるかも知れない。そう考えてラルスには明かしたのだった。
「ところで1つ気になることがあるのだが。」
クリスが話が一旦終わったところで切り出した。なんだ?
「なぜまだここに入ったばかりの我々にそのような大事な話を?執事長にもまだ話していないのだろう?」
確かにもっともな疑問だ。クリスはいちいち鋭いなあ。
「それは…言っても信じてもらえないかも知れないが、夢に神様が現れてお告げをしてくださったのだ。お前たちに助けを求めろと、そしてお前のやるべきことをなせ、と。」
「神が…。」
「我が娘の命のためとはいえ、国を裏切り、信仰を蔑ろにするような行動をとった私にさえご慈悲を下さるとは…。まだ自分がなすべきことが何かはわからないが、必ず神の想いに応えたいのだ。せめてもの償いにと儲けた分は全て寄付してきたが、他にできることがないか…考えたいと思っている。」
「そうか。いやわかった。ありがとう。」
「こちらこそ私の話を信じてくれてありがとう。」
ラルスには依頼主に報告した後、もしかしたら捜索のためにタンジリアに向かうことになるかも知れないことだけ伝え、寝室を後にした。
「それにしてもまた神のお告げとは…ここ最近、神はよほど我々が心配なのだろうか。いく先々で手を差し伸べられている気がする。」
「ありがたいことですね。」
「本当だね。それだけ世界の行く末を心配しているのかも知れないよ。その調子でヘレンのことも助けて欲しいんだけどねえ…」
「ベレッタさん…」
「やだねえ!あたしったら、神頼みなんてらしくないこといっちまったよ。さて、キーレンにはどうやって連絡する?」
監察部はこの屋敷の近くで待機していることになっていて、何かあった時にはキーレンやジェレミアと連絡がつくようになっている。ラルス本人が全てを打ち明け、こちらもある程度明かしたので早々に連絡を取りたいところだ。
「確か風魔法で合図を出せば、誰かしらがきてくれることになっていたな?」
「はい。僕が部屋に戻って連絡しておきましょうか?」
「頼む。」
クリスとベレッタと別れた俺は自分の部屋に戻って、監察部の人と連絡をとるべく風魔法を使った。
ーーーーーーーーーーーー
いつもお読みいただいている皆様ありがとうございます。
もう少し書き溜めてから次回を更新するために2、3日更新をお休みさせていただきます。
申し訳ありません。
俺たちは互いの顔を見合って、自分たちの目的を話すことを確認した。
クリスが代表して話し出す。
「ラルス殿、実は私たちはあなたの身辺を調査する依頼を受けてここにきました。あなたの行動がどうにも不可思議で事情がわからないので、調査してほしい。と。」
「な…。それでは娘のことは…。」
「それは必ず。依頼主も状況を知れば必ず救出に赴くように指示を変更するはずです。あなたのここ最近の行動も事情があり脅迫されてのものだったことも伝えますので、ご安心ください。決して敵ではありませんよ。」
「しかし…あまり広まると娘の命が…」
「それもご安心を。あの方達は秘密は必ず守る人たちです。」
「そうですか…。いや、驚きでした。やけに有能な使用人や治療師が入ってきたと思ったが。そうでしたか。
私は逮捕されても構いません。それだけのことをしてしまった…。だが、娘のことだけはなんとか助けていただきたいのです。」
俺たちが調査目的で潜入してきたことを聞いて驚いてはいたが、今は何より娘を救出することが最優先だ。念の為依頼主が誰かは今の所言わないでおいたが、それも本当は必要ないのかも知れない。
ただこうやってラルスに調査目的であったことを言っていけば後々行動しやすくなるし、ラルスを少しでも安心させられるかも知れない。そう考えてラルスには明かしたのだった。
「ところで1つ気になることがあるのだが。」
クリスが話が一旦終わったところで切り出した。なんだ?
「なぜまだここに入ったばかりの我々にそのような大事な話を?執事長にもまだ話していないのだろう?」
確かにもっともな疑問だ。クリスはいちいち鋭いなあ。
「それは…言っても信じてもらえないかも知れないが、夢に神様が現れてお告げをしてくださったのだ。お前たちに助けを求めろと、そしてお前のやるべきことをなせ、と。」
「神が…。」
「我が娘の命のためとはいえ、国を裏切り、信仰を蔑ろにするような行動をとった私にさえご慈悲を下さるとは…。まだ自分がなすべきことが何かはわからないが、必ず神の想いに応えたいのだ。せめてもの償いにと儲けた分は全て寄付してきたが、他にできることがないか…考えたいと思っている。」
「そうか。いやわかった。ありがとう。」
「こちらこそ私の話を信じてくれてありがとう。」
ラルスには依頼主に報告した後、もしかしたら捜索のためにタンジリアに向かうことになるかも知れないことだけ伝え、寝室を後にした。
「それにしてもまた神のお告げとは…ここ最近、神はよほど我々が心配なのだろうか。いく先々で手を差し伸べられている気がする。」
「ありがたいことですね。」
「本当だね。それだけ世界の行く末を心配しているのかも知れないよ。その調子でヘレンのことも助けて欲しいんだけどねえ…」
「ベレッタさん…」
「やだねえ!あたしったら、神頼みなんてらしくないこといっちまったよ。さて、キーレンにはどうやって連絡する?」
監察部はこの屋敷の近くで待機していることになっていて、何かあった時にはキーレンやジェレミアと連絡がつくようになっている。ラルス本人が全てを打ち明け、こちらもある程度明かしたので早々に連絡を取りたいところだ。
「確か風魔法で合図を出せば、誰かしらがきてくれることになっていたな?」
「はい。僕が部屋に戻って連絡しておきましょうか?」
「頼む。」
クリスとベレッタと別れた俺は自分の部屋に戻って、監察部の人と連絡をとるべく風魔法を使った。
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いつもお読みいただいている皆様ありがとうございます。
もう少し書き溜めてから次回を更新するために2、3日更新をお休みさせていただきます。
申し訳ありません。
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