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第1章

30話 躊躇なくチートを発揮する俺

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創造者モードに入ってすぐにナビーを呼び出す。

「ナビー!特定の人物に能力を付与することってできる?」

マニュアル読まない派の俺は必要に応じてナビーに説明を求めるスタンスだ。ナビーという便利な機能があるので、特に不自由も感じていない。

「タケル様お久しぶりです。はい、可能です。基本的には本人のレベルに応じて属性の付与を任意に付与することが可能です。」
「なるほど、じゃあ武器については?具体的には聖属性の武器を与えたいんだけど。」
「可能です。タケル様はポイントが360,000ポイントございますので、このポイントの消費によって任意の武器を特定の人物に付与することが可能です。」

今まで使っていないポイントがあるのをすっかり忘れていた。
このポイントは一回世界を創造して滅亡するたびに、達成された基準に合わせてポイントとして付与される。
文明が発生したら500ポイント、100万人人口が増えるたびに100ポイントなどのように条件を満たすと精算されるのだ。

360,000ポイントは37回人類を滅亡させて、そのうちに溜まったポイントであった。
クリスを死なせないのが今の俺の第一目標になっているので、ポイントを使用することに躊躇いはない。

「聖剣2種と聖杖2種欲しい。あと、ベレッタは聖魔法が使用可能に、クリスとキールは聖属性付与の魔法を使用可能にする。」
「それではキャラクター名「クリス」に聖剣エクスカリバーを、キャラクター名「キール」に聖剣レーヴァテインを、キャラクター名「ベレッタ」に聖杖グリダヴォルを、キャラクター名「タケル」に聖杖アスクレピオスを付与します。装備を変更しますか?」
「Yes、だ。」
「了解しました。…変更されました。36,000ポイントを消費しました。次にキャラクター名「クリス」およびキャラクター名「キール」に聖属性付与の能力を、キャラクター名「ベレッタ」が使用できる魔法に聖魔法を追加します。変更を決定しますか?」
「Yes、だ!」
「了解しました。…変更されました。ここまでの情報をセーブしています。…セーブされました。」
「あとはログインしてからで大丈夫だ。ありがとうナビー。」
「今回はお呼びいただきありがとうございました。またなんなりとお尋ねください。」

ナビーが消えると創造者モードを解除して、再びログインする。
暴走しているフランクを退治してこの事件を終結させなければ!そう俺は意気込んだ。


ログインするとフランクが俺の聖魔法ビームを受けてふらついているところだった。
俺はひとまず、重傷者とクリス、キール、ベレッタに回復魔法をかけた。

「うっ!やられたな…すまないタケル!」
「なんて硬さだ。これでは普通の剣ではどうにもならんな」
「あたしの魔法も全然聞かない。」

「みなさん!みなさんの武器が変わっていますよ!僕もですけど!それとあいつの弱点は聖魔法みたいです!僕の聖魔法が効きました!」

俺は自分の所有する武器『聖杖アスクレピオス』を振り回して、みんなに気づいてもらうよう声をかけた。
いくら新しい武器と能力を身につけたとしても、気がつかなかったらなんの意味もない。

「なに!?俺の武器が変わっている!エクス、カリバー?」
「私もだ!レーヴァテイン?」

2人が剣の名前を呼ぶとそれぞれの剣から聖気が吹き出す。見るからに聖属性の武器であることがわかる。

「あたしもだ!グリ、ダ、ヴォル?」

ベレッタが持つ杖からも聖気があふれる。まるで早く自分たちを使えと言わんばかりだ。

「僕もです!アスクレピオス!『在るべき姿を神の御名において取り戻せ!生命の息吹よ!』」

俺が杖を持ち上げながら、回復魔法を発すると倉庫内にいるその他の全員を完全に回復させることができた。
どんどんチート級の強さになっていってしまっているが、まあ全部神様がやったことにしておこう。どんなにご都合主義と言われようと構いやしない。だって俺がこの世界の神で、俺がこの世界が続くことを願うのだから!


2人は聖魔法をそれぞれの剣に付与しながら、フランクの元に駆け寄り攻撃を加えていく。ベレッタも攻撃の合間で聖魔法で攻撃を与えるおかげでフランクも思ったように動けなくなっている。
3人とも新しい能力にもうまく気がついてくれたようだ。よかった。

こうなってくるともう一方的な戦いになる。先程と違って聖魔法が弱点のフランクは少しずつダメージが蓄積して苦しみの声をあげている。そして、ついにクリスの一撃が肩に生えた目を貫く。

「ギャアアアああああ!!」

その攻撃が決定的なものとなって、ついにフランクはその場に倒れた。
倒れたとみると、みるみる体から黒いモヤが立ち上って体が元のサイズに戻っていく。
しばらくして、元の人間の姿に戻るとようやく倉庫内の緊張感が解かれた。

「どうやら、もう大丈夫のようだ。細かい調査は後回しにして、まず子供たちの救出と犯人の捕縛を最優先とする!お前たちは表に出ているまともな騎士たちに指示をだし、救出と捕縛に協力させよ!」
「はっ!殿下、直ちに!」

確かジェレミアといったか、監査部の部長が跪き一例すると、彼と彼と同様の服装をした監査部が一斉に姿を消した。
あれどうなってるんだろ?転移魔法ではないよなあ…。

「では我らはそれまでに子供達を解放しておこう。体の動かないものはいないか?」
「大丈夫です!なぜかここにくる時よりも体が軽い気がするんです!」
「確かに…先ほどのキール殿下たちの活躍といい、何か奇跡が起こったのでは…」
「それはあとだ!体が無事ならまずは子供達の救出だ!急げ!」
「「「はい!」」」

神殿騎士団長であるエンリコがそう檄を飛ばすと、飛び跳ねるように神殿騎士たちは檻の鍵を外し子供達を外に出す。そのうちに先ほど出ていった監査部や最初の爆発で陽動された騎士たちが倉庫に入ってきて、子供達を外に連れ出していく。
あ!そうだ。忘れないうちに首輪外しておかないとな。

神権限で首輪の解除をしておいた。なんで外れたかとか怪しむやつはいないよな…。
もうあんまりどう言い訳するかとか考えるのが面倒になってきたから、聞かれても有耶無耶にしておこう。

子供達はこのまま大聖堂に運ばれることになった。100人以上を一斉に収容でき、回復魔法の使い手が多くいる大聖堂がうってつけだからだ。
昏睡させられていただけとはいえ、体力を消耗しているようなので、そのまま家に帰すわけにもいかない。

神殿騎士団長の権限でそのことが即座に決まり、キール殿下が指示を出した。

また、俺たちを襲ってきたフランク騎士団長と魔族の男クルド、そのほかの騎士たちは体を拘束されて王宮に運ばれていった。大人数の救出と連行で馬車が多く倉庫前に押し寄せ、港はしばらく騒然としていた。

子供達を運んだり、怪我があったら回復させたり、連行される人たちの縛りを強くしたり…としばらく俺たちも作業を手伝っていた。最後にフランクとクルドが運ばれるのを見送ると、ふっと力が抜けて倒れそうになった。
倒れそうになったところをクリスが支えて、そのまま姫だっこされる。

「危ない!タケル大丈夫か?」

大変だったけどクリスに姫だっこをしてもらっているんだから、これは自分のご褒美だと思って首に腕を回した。

「疲れているようだから、このまま宿まで運ぶよ。寝てしまってもいいぞ?」
「いや!それはちょっと恥ずかしいので大丈夫デス…」

俺は慌ててクリスの腕から下りた。クリスが残念そうな顔をしている気がするが、気のせいだろう。
何しろまだここにはキール殿下やベレッタ、その外たくさんの人がいるのだ。気がつくと顔が熱くなってくる。
ああ、恥ずかしい。

一通り部隊に指示を出し終えたキール殿下がこちらに近寄ってくる。

「皆、今回のことは本当にありがとう。今日のことはまた改めて確認したいことが多々あるからとりあえず今日は休んで欲しい。あとで呼び出しの者を向かわせる。」
「殿下。お気遣いありがとうございます。それでは今日はこれで、失礼いたします。」
「うん。その呼び方とかも含めて…まあ色々あるからとりあえず休んでくれ。」

俺たちはもう一度キール殿下に一礼して、その場を辞した。あたりはすっかり明るくなって朝になっていた。
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