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目覚めた翌日も朝早くから宿泊した地を出立して、一路領都へと向かった。
急げば今日の夕方ごろには到着できるはずだ。
移動は俺は馬に乗れないので、馬車を用意してもらっている。この世界は自転車か車のように馬に乗れることが当たり前のことらしい。俺以外の討伐メンバーは馬に乗って移動している。
俺のせいで移動のスピードが遅いのかと申し訳なく思っていたが、ルシアーノに「荷物だって馬車なんだ。気にするな」と言われてホッとする。ルシアーノは結構言葉遣いは乱暴だが、いつも俺に気遣ってくれている。
道中は何事もなく、日が傾きかけたところで領都に到着することができた。
討伐隊メンバーやサポーターの皆さん達にドゥーガルが代表して礼をいい、そのほかの連絡は翌日掲示板を見るように指示をして解散した。
その翌日に大会結果について女神から託宣を得る儀式を3日後に行うことが発表される。合わせてサポーターへの給金支払い窓口が設置され、ほとんどの人に払い終えることができた。
帰ってきてからはドゥーガルたち3人は今回の件について様々なところに報告をしたり、検証したりで大忙しだったらしい。
ドゥーガルは国への報告。ルシアーノは邪神がいなくなった後の領内の状況確認。レメは先日開発した転送魔法の取りまとめや実証だ。3人ともこの領では実力者だから、やることが多すぎて俺に絡む暇もなかったみたいだ。
そして、儀式の日当日。先日の儀式の時のように多くの侍女さんたちにもみくちゃにされ、身だしなみを整えられた。2回目にしてもう慣れてきたような気がする。されている間は俺はぼーっとしている。
聖堂に入り、今度はステージ下でドゥーガルたち3人と一番先頭の席で横並びに座る。
ただの異世界からきた一般人なんだが、こういう目立つ席にはまだ慣れないな。
それでも後ろに座る勇気はない。さっきもルシアーノに「一番前が緊張する?座ってみるか?すぐに攫われると思うが。」なんて脅されたばっかりだ。レメにも「本当にサトルは自分を知らないんだねえ。」と揶揄われてしまった。
ドゥーガルは「いちいち脅す必要はないだろう。いいのだサトルは。そのままで」と励ましてくれたが。
この会話のパターンにもだいぶ慣れた。3人はそれぞれが話の役割があって、お互いを補い合っている感じがする。
そう。この3人一緒がいい。
席についてからしばらくして、神官長デキムを先頭にして神官たちがステージ上に集まる。
儀式が始まる直前、ドゥーガルが立ち上がり、儀式の開始を宣言した。
「聖堂に集まりし、我が親愛なる民達よ!この度の大会は苛烈なものであったが、死者もなく無事に終えることができ、さらには邪神を鎮めることに成功した!その功績は異世界人サトル殿と討伐に参加してくれた皆のものである。領主として改めて感謝する!これより大会結果の儀式を執り行う!」
「「「おお~!!!」」」と一斉に聖堂内が湧き上がる。
ややあってドゥーガルが右手を上げると、一転して静かになり、それを見届けたドゥーガルは席に座り直した。
そのことを合図に儀式が始まる。儀式は先日行ったものと同じで、器に神官長が血を流し、神官たちは祈りを捧げ始めた。その後器から光が放たれ、一瞬目の前が真っ白になったかと思うと、ステージの中央には女神様と先日より少し背の高くなったサピセンが立っていた。
神官たちは皆一歩下がって膝を折り、両手を組む。その背後にいる俺たちも着席したまま頭を下げる。
『みなさん。頭をあげなさい。この度はまず我が子を救うきっかけになった人々に感謝します。500年前に邪神へと堕ちた我が子の行く末は悩ましいものでした。このように再び戻ってきてくれたことを嬉しく思っています。』
『さて、大会の結果ですがこの度邪神へと堕ちた我が子を救ってくれた1番の功労者は異世界人サトル殿でした。そのため、大会の勝者はサトル殿となります。そのためサトル殿を守り、心の拠り所となったドゥーガル = ウィングフィールド、ルシアーノ=サエンス、レメディオス = ララツをサトル殿の配偶者とします。』
聖堂内がどよめく。以前読んだ本にも過去に3人が同時に配偶者となった例はなかったはずだ。しかも大会の勝者というわけでもない。
でも、俺は一緒にいるならこの3人と一緒がいいと思ったんだ。女神様が俺の意思を汲み取ってこのような結果になったことが嬉しい。つい顔がにやけてしまった。
『さらに』
女神様が続ける。なんだ?
『我が子サピセンが善神と戻れたのはサトルとの絆のおかげ、なのだそうですね?サピセンもあなたの配偶者とします』
えええ???どういうこと??
聖堂内も一転して静かになる。そりゃそうだ。俺も意味がわからないもの…あ~確かに「結婚して」とか言ってた。
「サトルは僕と一緒にいるって誓ってくれた!サトルは僕の妻だ!」
ちょっと大きくなったサピセンが叫ぶ。やっぱり以前より身長が高くなって大人びた気がするな?
聖堂内を静寂が包んでいる。誰もが反応に困っているからだ。その静寂を破ってドゥーガルが口を開く。
「女神アルテイシア様。サピセン様が配偶者ということは、サトルを神界に連れていくということですか?」
『いいえ、ドゥーガル = ウィングフィールド、神界に連れていくということではありません。我が子だけが独占することなく4人で話し合ってどのような生活をするか決めてください。我が子だけに融通を効かせる必要はありませんからね。』
「僕はまだ目覚めて間もない。さして大したことはできないから、普通に接してほしい。」
サピセンが重ねて説明する。
「わかりました、女神アルテイシア様。お示しの通りに。」
女神はその言葉に頷くと、今度は神官たちの方を向いた。
『神官たちよ。日頃よりの寄進ありがとう。だが、私はそれほど大食ではないのでこれからは半分ほどにしてほしい。』
「し、しかし女神様!我々の信仰心を示すには…」
神官長デニムが反論しようとするのを女神様が制して話を続ける。
『私はあなた方の信仰心を感じています。それで十分なのです。それでも足りないというなら、別の形で示しなさい』
「わ、わかりました!」
デニムが頭を下げる。よっしゃ教会への寄付が減額できる!
そう頭の中でガッツポーズを取っていると、女神様がこちらを向いて微笑んだ。やっぱりわかっていらっしゃる。
『それではこれで大会の結果発表を終えます。我が愛する人々が愛に包まれますように』
そう言って女神様はその場から消え去った。
急げば今日の夕方ごろには到着できるはずだ。
移動は俺は馬に乗れないので、馬車を用意してもらっている。この世界は自転車か車のように馬に乗れることが当たり前のことらしい。俺以外の討伐メンバーは馬に乗って移動している。
俺のせいで移動のスピードが遅いのかと申し訳なく思っていたが、ルシアーノに「荷物だって馬車なんだ。気にするな」と言われてホッとする。ルシアーノは結構言葉遣いは乱暴だが、いつも俺に気遣ってくれている。
道中は何事もなく、日が傾きかけたところで領都に到着することができた。
討伐隊メンバーやサポーターの皆さん達にドゥーガルが代表して礼をいい、そのほかの連絡は翌日掲示板を見るように指示をして解散した。
その翌日に大会結果について女神から託宣を得る儀式を3日後に行うことが発表される。合わせてサポーターへの給金支払い窓口が設置され、ほとんどの人に払い終えることができた。
帰ってきてからはドゥーガルたち3人は今回の件について様々なところに報告をしたり、検証したりで大忙しだったらしい。
ドゥーガルは国への報告。ルシアーノは邪神がいなくなった後の領内の状況確認。レメは先日開発した転送魔法の取りまとめや実証だ。3人ともこの領では実力者だから、やることが多すぎて俺に絡む暇もなかったみたいだ。
そして、儀式の日当日。先日の儀式の時のように多くの侍女さんたちにもみくちゃにされ、身だしなみを整えられた。2回目にしてもう慣れてきたような気がする。されている間は俺はぼーっとしている。
聖堂に入り、今度はステージ下でドゥーガルたち3人と一番先頭の席で横並びに座る。
ただの異世界からきた一般人なんだが、こういう目立つ席にはまだ慣れないな。
それでも後ろに座る勇気はない。さっきもルシアーノに「一番前が緊張する?座ってみるか?すぐに攫われると思うが。」なんて脅されたばっかりだ。レメにも「本当にサトルは自分を知らないんだねえ。」と揶揄われてしまった。
ドゥーガルは「いちいち脅す必要はないだろう。いいのだサトルは。そのままで」と励ましてくれたが。
この会話のパターンにもだいぶ慣れた。3人はそれぞれが話の役割があって、お互いを補い合っている感じがする。
そう。この3人一緒がいい。
席についてからしばらくして、神官長デキムを先頭にして神官たちがステージ上に集まる。
儀式が始まる直前、ドゥーガルが立ち上がり、儀式の開始を宣言した。
「聖堂に集まりし、我が親愛なる民達よ!この度の大会は苛烈なものであったが、死者もなく無事に終えることができ、さらには邪神を鎮めることに成功した!その功績は異世界人サトル殿と討伐に参加してくれた皆のものである。領主として改めて感謝する!これより大会結果の儀式を執り行う!」
「「「おお~!!!」」」と一斉に聖堂内が湧き上がる。
ややあってドゥーガルが右手を上げると、一転して静かになり、それを見届けたドゥーガルは席に座り直した。
そのことを合図に儀式が始まる。儀式は先日行ったものと同じで、器に神官長が血を流し、神官たちは祈りを捧げ始めた。その後器から光が放たれ、一瞬目の前が真っ白になったかと思うと、ステージの中央には女神様と先日より少し背の高くなったサピセンが立っていた。
神官たちは皆一歩下がって膝を折り、両手を組む。その背後にいる俺たちも着席したまま頭を下げる。
『みなさん。頭をあげなさい。この度はまず我が子を救うきっかけになった人々に感謝します。500年前に邪神へと堕ちた我が子の行く末は悩ましいものでした。このように再び戻ってきてくれたことを嬉しく思っています。』
『さて、大会の結果ですがこの度邪神へと堕ちた我が子を救ってくれた1番の功労者は異世界人サトル殿でした。そのため、大会の勝者はサトル殿となります。そのためサトル殿を守り、心の拠り所となったドゥーガル = ウィングフィールド、ルシアーノ=サエンス、レメディオス = ララツをサトル殿の配偶者とします。』
聖堂内がどよめく。以前読んだ本にも過去に3人が同時に配偶者となった例はなかったはずだ。しかも大会の勝者というわけでもない。
でも、俺は一緒にいるならこの3人と一緒がいいと思ったんだ。女神様が俺の意思を汲み取ってこのような結果になったことが嬉しい。つい顔がにやけてしまった。
『さらに』
女神様が続ける。なんだ?
『我が子サピセンが善神と戻れたのはサトルとの絆のおかげ、なのだそうですね?サピセンもあなたの配偶者とします』
えええ???どういうこと??
聖堂内も一転して静かになる。そりゃそうだ。俺も意味がわからないもの…あ~確かに「結婚して」とか言ってた。
「サトルは僕と一緒にいるって誓ってくれた!サトルは僕の妻だ!」
ちょっと大きくなったサピセンが叫ぶ。やっぱり以前より身長が高くなって大人びた気がするな?
聖堂内を静寂が包んでいる。誰もが反応に困っているからだ。その静寂を破ってドゥーガルが口を開く。
「女神アルテイシア様。サピセン様が配偶者ということは、サトルを神界に連れていくということですか?」
『いいえ、ドゥーガル = ウィングフィールド、神界に連れていくということではありません。我が子だけが独占することなく4人で話し合ってどのような生活をするか決めてください。我が子だけに融通を効かせる必要はありませんからね。』
「僕はまだ目覚めて間もない。さして大したことはできないから、普通に接してほしい。」
サピセンが重ねて説明する。
「わかりました、女神アルテイシア様。お示しの通りに。」
女神はその言葉に頷くと、今度は神官たちの方を向いた。
『神官たちよ。日頃よりの寄進ありがとう。だが、私はそれほど大食ではないのでこれからは半分ほどにしてほしい。』
「し、しかし女神様!我々の信仰心を示すには…」
神官長デニムが反論しようとするのを女神様が制して話を続ける。
『私はあなた方の信仰心を感じています。それで十分なのです。それでも足りないというなら、別の形で示しなさい』
「わ、わかりました!」
デニムが頭を下げる。よっしゃ教会への寄付が減額できる!
そう頭の中でガッツポーズを取っていると、女神様がこちらを向いて微笑んだ。やっぱりわかっていらっしゃる。
『それではこれで大会の結果発表を終えます。我が愛する人々が愛に包まれますように』
そう言って女神様はその場から消え去った。
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