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7 竜王の怒り
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◇◇◇
────もう、ダメだ。竜王を怒らせてしまった……
誰もが絶望したそのとき
「こらっ!ダメでしょう?そんなことしたらフィーが悪いドラゴンだって言われちゃうわよ」
こ~いつう~とばかりにフィガロのおでこをつつくフェリシエ。
するとフィガロはコロッと態度を変えた。
「君を悲しませるものなど全部滅びてしまえばいい。でも、フェリシエに悪いドラゴンだと思われるのは嫌だな」
甘やかに瞳を蕩かせてフェリシエを熱く見つめるフィガロ。
フェリシエの心はフィガロへの愛しさでいっぱいになった。ああ、もうこんなところさっさとおさらばしてマドラス竜王国で心行くまでフィーとイチャイチャしたい。そればっかりを考えていた。
「ここにはもう用はないわ。帰りましょうフィー。私たちのお家に」
「ああ、そうだな。こんな気分の悪いところ、一秒たりとも居たくない」
フィガロはフェリシエを軽々と抱きかかえると、そのままテラスに出てひょいっと飛び降りる。
「きゃっ!」
「大丈夫。君を落としたりしないから安心して」
「もう、飛び降りるなら飛び降りるって言ってよね」
「怖かった?」
「あなたがいれば、怖くないわ」
フィガロはそのまま竜の姿に変化すると、大切な宝物のようにフェリシエをそっと腕に抱き抱える。
『僕の最愛。全てのものから君を守るよ』
「信じてるわ」
一方竜王の逆鱗に触れたオリテントの貴族たちは大騒ぎだった。
「本物の竜だ!」
「なんて偉大なお姿……」
「ああ、しかし我々は竜王陛下を怒らせてしまったんだぞ。これからこの国はどうなってしまうんだ……」
口々に叫ぶ貴族たちをみてフィガロはすっと目を細める。
『うるさい羽虫どもめ。殺してやろうか』
「ヒイイイ……お許しください、お許しください」
凄むフィリクスをみてくすくすと笑うフェリシエ。
「フィーったら意外と短気なんだから。駄目よ。早く嵐を止めてあげて。このままでは罪のない民にまで被害が及ぶわ」
『君が望むなら』
ピタリと嵐がやみ、それと同時に地面から小さな無数の金の光が次々と浮かび上がる。あまりにも幻想的で美しい光景に、誰もが息を呑んだ。
「こ、これは……」
「奇跡……なのか?」
いぶかしむ貴族たち。
「わぁ~綺麗ですねえ。きっと私達への祝福ですよ!」
能天気にはしゃぐキャサリンの声が響いた。
「綺麗……フィー、何をしたの?」
『これは僕から君へのプレゼントだよ』
「素敵だわ。ありがとう」
飛び立とうとする二人に、それまで黙っていた国王が声を上げる。
「フェリシエ様……どうか、お許しください……こっちへこい!この馬鹿息子め!お前からも謝罪をしろ!」
「あ、あの、フェリシエ……い、いえ!フェリシエ様には大変申し訳ないことをいたしました。これまでのこと、心よりお詫び申し上げます」
今にも倒れそうな顔でガクガクと震えるジョルジュ王子に、フェリシエはにっこり艶やかに微笑む。
「あら、ジョルジュ王子が婚約破棄してくださったおかげでフィーとめぐりあえたのですもの。そんな些細なこと何一つ気にしていませんわ。どうぞお気になさらないで」
寛大なフェリシエの言葉にオリテント帝国の国民はみな涙し、フェリシエを竜の女神としてあがめた。
────もう、ダメだ。竜王を怒らせてしまった……
誰もが絶望したそのとき
「こらっ!ダメでしょう?そんなことしたらフィーが悪いドラゴンだって言われちゃうわよ」
こ~いつう~とばかりにフィガロのおでこをつつくフェリシエ。
するとフィガロはコロッと態度を変えた。
「君を悲しませるものなど全部滅びてしまえばいい。でも、フェリシエに悪いドラゴンだと思われるのは嫌だな」
甘やかに瞳を蕩かせてフェリシエを熱く見つめるフィガロ。
フェリシエの心はフィガロへの愛しさでいっぱいになった。ああ、もうこんなところさっさとおさらばしてマドラス竜王国で心行くまでフィーとイチャイチャしたい。そればっかりを考えていた。
「ここにはもう用はないわ。帰りましょうフィー。私たちのお家に」
「ああ、そうだな。こんな気分の悪いところ、一秒たりとも居たくない」
フィガロはフェリシエを軽々と抱きかかえると、そのままテラスに出てひょいっと飛び降りる。
「きゃっ!」
「大丈夫。君を落としたりしないから安心して」
「もう、飛び降りるなら飛び降りるって言ってよね」
「怖かった?」
「あなたがいれば、怖くないわ」
フィガロはそのまま竜の姿に変化すると、大切な宝物のようにフェリシエをそっと腕に抱き抱える。
『僕の最愛。全てのものから君を守るよ』
「信じてるわ」
一方竜王の逆鱗に触れたオリテントの貴族たちは大騒ぎだった。
「本物の竜だ!」
「なんて偉大なお姿……」
「ああ、しかし我々は竜王陛下を怒らせてしまったんだぞ。これからこの国はどうなってしまうんだ……」
口々に叫ぶ貴族たちをみてフィガロはすっと目を細める。
『うるさい羽虫どもめ。殺してやろうか』
「ヒイイイ……お許しください、お許しください」
凄むフィリクスをみてくすくすと笑うフェリシエ。
「フィーったら意外と短気なんだから。駄目よ。早く嵐を止めてあげて。このままでは罪のない民にまで被害が及ぶわ」
『君が望むなら』
ピタリと嵐がやみ、それと同時に地面から小さな無数の金の光が次々と浮かび上がる。あまりにも幻想的で美しい光景に、誰もが息を呑んだ。
「こ、これは……」
「奇跡……なのか?」
いぶかしむ貴族たち。
「わぁ~綺麗ですねえ。きっと私達への祝福ですよ!」
能天気にはしゃぐキャサリンの声が響いた。
「綺麗……フィー、何をしたの?」
『これは僕から君へのプレゼントだよ』
「素敵だわ。ありがとう」
飛び立とうとする二人に、それまで黙っていた国王が声を上げる。
「フェリシエ様……どうか、お許しください……こっちへこい!この馬鹿息子め!お前からも謝罪をしろ!」
「あ、あの、フェリシエ……い、いえ!フェリシエ様には大変申し訳ないことをいたしました。これまでのこと、心よりお詫び申し上げます」
今にも倒れそうな顔でガクガクと震えるジョルジュ王子に、フェリシエはにっこり艶やかに微笑む。
「あら、ジョルジュ王子が婚約破棄してくださったおかげでフィーとめぐりあえたのですもの。そんな些細なこと何一つ気にしていませんわ。どうぞお気になさらないで」
寛大なフェリシエの言葉にオリテント帝国の国民はみな涙し、フェリシエを竜の女神としてあがめた。
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