3 / 9
3 新しい竜王陛下
しおりを挟む
◇◇◇
フェリシエの暮らすオリテント帝国は主に人間が暮らす国。しかし、すぐ隣国のマドラス竜王国はその名の通り竜王の治める亜人の国である。
千年の時を生きると言う竜王は信仰の対象であり、オリテント帝国はもともと竜王を信仰する人間が集まってできた国だ。
「どうして竜王陛下がわたくしを?陛下には最愛の番がいらっしゃるはずです」
竜人族は非常に愛情深い種族で、生涯番と定めた一人しか愛さないと言われている。一度番を得た竜人族は決して他人には目を向けないとか。今の竜王の治世は長く続いており、竜王の番に不幸があったなどという話も聞いたことがない。なんて理想的な恋人だろうか。口では愛だの恋だの言いながら平気で裏切る人間とは大違いだ。
「前竜王陛下の譲位により、新たなる竜王陛下が誕生したのだ」
それはフェリシエにとっても初耳だった。竜王は血筋ではなく、竜人族の中で最も強いと認められた強者がなる習わし。新たなる強者が誕生したときのみ、代替わりが行われるとされている。竜王は竜人族で最強。いや、この世界最強の存在と言うわけだ。そのため、竜王の代替わりはどの国にとっても最大の関心事であるはず。何しろ、竜王の気まぐれ一つで国が滅びかねないので。竜王の持つ強大な力は、信仰と同時に人々の畏怖の対象でもあるのだ。
「でも、どうして私が番に?新しい竜王陛下とどこかでお逢いしたことでもありましたか?」
隣国に行ったこともなければ、竜人族と公の場で会った記憶もない。竜人族の番がどうやって選ばれるかは知らないが、フェリシエには全く身に覚えがなかった。
「そんなものわしが知るかっ!とにかく国王陛下と兄上宛にお前に婚約を申し込む書状が正式に届いたのだ。我が国の貴族令嬢が竜王陛下の花嫁に選ばれるなど、オリテント帝国史上初めてのことだ。非常に喜ばしいことだが、万が一竜王陛下の機嫌を損ねたらこの国がどうなるか……だから頼む!お前が竜王陛下にすぐさまその身を捧げ、この国を守ってくれ!」
そんな無茶な。
フェリシエの暮らすオリテント帝国は主に人間が暮らす国。しかし、すぐ隣国のマドラス竜王国はその名の通り竜王の治める亜人の国である。
千年の時を生きると言う竜王は信仰の対象であり、オリテント帝国はもともと竜王を信仰する人間が集まってできた国だ。
「どうして竜王陛下がわたくしを?陛下には最愛の番がいらっしゃるはずです」
竜人族は非常に愛情深い種族で、生涯番と定めた一人しか愛さないと言われている。一度番を得た竜人族は決して他人には目を向けないとか。今の竜王の治世は長く続いており、竜王の番に不幸があったなどという話も聞いたことがない。なんて理想的な恋人だろうか。口では愛だの恋だの言いながら平気で裏切る人間とは大違いだ。
「前竜王陛下の譲位により、新たなる竜王陛下が誕生したのだ」
それはフェリシエにとっても初耳だった。竜王は血筋ではなく、竜人族の中で最も強いと認められた強者がなる習わし。新たなる強者が誕生したときのみ、代替わりが行われるとされている。竜王は竜人族で最強。いや、この世界最強の存在と言うわけだ。そのため、竜王の代替わりはどの国にとっても最大の関心事であるはず。何しろ、竜王の気まぐれ一つで国が滅びかねないので。竜王の持つ強大な力は、信仰と同時に人々の畏怖の対象でもあるのだ。
「でも、どうして私が番に?新しい竜王陛下とどこかでお逢いしたことでもありましたか?」
隣国に行ったこともなければ、竜人族と公の場で会った記憶もない。竜人族の番がどうやって選ばれるかは知らないが、フェリシエには全く身に覚えがなかった。
「そんなものわしが知るかっ!とにかく国王陛下と兄上宛にお前に婚約を申し込む書状が正式に届いたのだ。我が国の貴族令嬢が竜王陛下の花嫁に選ばれるなど、オリテント帝国史上初めてのことだ。非常に喜ばしいことだが、万が一竜王陛下の機嫌を損ねたらこの国がどうなるか……だから頼む!お前が竜王陛下にすぐさまその身を捧げ、この国を守ってくれ!」
そんな無茶な。
1
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
追放された大聖女は隣国で男装した結果、竜王に見初められる
仲室日月奈
恋愛
大聖女の再来。そう言われてきたフェリシアが王太子の婚約者になって五年。ある日、王妃主催のお茶会から帰る途中、聞いてはいけない内緒話を偶然耳にしてしまった。
「俺は運命の恋に落ちた。婚約破棄するためには、あいつを偽聖女として罰するよりほかない」
聖なる力は本物です!だけど、そっちがその気なら、もう手は貸してあげません。
王太子の陰謀により、ヴァルジェ王国から追放されたフェリシアを拾ってくれたのは隣国の歌劇団。元大聖女は男装して新たな人生をスタートします!
※全四話の短めのお話です。
巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~
アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。
まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?【カイン王子視点】
空月
恋愛
精霊信仰の盛んなクレセント王国。
身に覚えのない罪状をつらつらと挙げ連ねられて、第一王子に婚約破棄された『精霊のいとし子』アリシア・デ・メルシスは、第二王子であるカイン王子に求婚された。
そこに至るまでのカイン王子の話。
『まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/368147631/886540222)のカイン王子視点です。
+ + + + + +
この話の本編と続編(書き下ろし)を収録予定(この別視点は入れるか迷い中)の同人誌(短編集)発行予定です。
購入希望アンケートをとっているので、ご興味ある方は回答してやってください。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScCXESJ67aAygKASKjiLIz3aEvXb0eN9FzwHQuxXavT6uiuwg/viewform?usp=sf_link
私が妻です!
ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。
王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。
侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。
そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。
世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。
5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。
★★★なろう様では最後に閑話をいれています。
脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。
他のサイトにも投稿しています。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
【完結】私が重すぎ?軽い方だと思いますが、そう仰るなら婚約破棄を受け入れます。 それなのに、あなたはなぜ私に付きまとうのですか?
西東友一
恋愛
「お前、重すぎんだよ」
婚約したら将来の話をするのは当然だと思っていたジャンヌは、婚約者のジェダインに婚約破棄を言い渡されてしまう。しかし、しばらくしてジェダインが寄りを戻そうと行ってきて―――
※※
元サヤが嫌いな方、女主人公がハーレムっぽくなるのが嫌いな方、恋愛は王道以外は認めない方はご遠慮ください。
最後のオチに「えーーっ」となるかもしれませんし、「ふっ」となるかもしれません。
気楽にお読みください。
この作品に関して率直な感想を言いたくなったら、否定的な意見でも気軽に感想を書いてください。
感想に関して返信すると、気を遣って自由に言いたいことを言えなくなるかもしれないので、この作品の感想の返信は一律でしませんので、ご容赦ください。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる