44 / 50
44 ソフィアの出生の秘密
しおりを挟む
◇◇◇
「ガライアス殿はね、シリウス伯爵家を利用して自分の野望を遂げようとしたんだ。いや、復讐といえるものかもしれないね。シリウス伯爵家の所有する門外不出の毒薬コレクションは、彼にはずいぶん魅力的に見えただろう。そして、自分のために使うことに一切の躊躇をしなかった」
「そのために、母上を利用したんだな……自分の子飼いの親父とくっつけてシリウス伯爵夫人として送り込んで。くそっ!やっぱりくそ野郎じゃねえか」
「どんな理由があったとしても、他人を犠牲にしていい理由にはならない。叔父の余罪は挙げるときりがないからな。貴族だけじゃない。毒薬の実験のために、多くのものが犠牲になったんだ。……シリウス伯爵が、前シリウス伯爵夫妻を事故に見せかけて殺害するよう指示したのも叔父だったと白状したよ。彼は直接手を下したわけではないが、使用人に金を握らせて馬車に細工をさせたらしい」
ジークが静かに告げる。
「親父が……くそっどいつもこいつも……」
ロイスの姿を複雑な気持ちで眺める。シリウス伯爵家に対するラピス王家の仕打ちは確かにひどい。ラピス王家とシリウス伯爵家の血を引くガライアスが自分の境遇を呪うのも分かる。でも、だからといってジークの母君を暗殺し、ジークも亡き者にしたうえで王座に就こうとした男を擁護する気にはなれなかった。
もうひとつ、私にはどうしても気になることがあった。
「ねえ、お父様、お母様はシリウス伯爵家の人間だったのね」
「うん。僕とは中立国であるダイナー王立学園で出会った。見た目は妖精のように儚く可憐で美しいのに、すごく男前でね。ソフィア、君はジェニファーにそっくりだ。とても、魅力的な人だったよ」
「そう、だったんだ……」
ずっとただの商家の娘だと思っていた。自分が貴族の血を引くなんて考えてもみなかった。しかも、よりにもよってそれがシリウス伯爵家だなんて。母の姿すら知らずに育った私としては、とても信じられないし実感もない。ジークはどこまで知ってたんだろう。ちらりとジークのほうを見ると心配そうにこちらを見つめているジークと目があった。
「ソフィア……」
「し、知らなかったな。私がそんな複雑な家の出身だったなんてね。お母様も苦労したのね。でもまあお父様はもともと平民なわけだし。今は単なる男爵家の娘!私は私。変わらないわ。そうでしょう?」
「あ~、まあ……」
「このさい、ソフィアには全て話しておいてはどうですか?」
ジークが真剣な顔で父に向き合う。
「やっぱりジークハルト殿下は気づいてたよね」
父が諦めたようにため息を吐くと、ジークは静かに言葉を続けた。
「ガイル・アリラン殿下。アリラン王国の王位継承権を持つ王弟殿下、ですよね」
「まあね」
ジークと父の言葉に目を丸くする。
「「は?」」
思わずロイスと声が被った。
「お父様がアリラン王国の王弟?うそでしょ!」
「アリラン王国……あのアリラン王国か」
「まあ、この国をはじめとしていい噂は聞かないよね」
「なんで、そんな人が平民になってるのよ……」
「ん?ふふ、君のお母さんと駆け落ちしたからだよ。愛の逃避行さ!」
あまりにもあっけらかんという父の言葉に頭を抱えたのだった。
「ガライアス殿はね、シリウス伯爵家を利用して自分の野望を遂げようとしたんだ。いや、復讐といえるものかもしれないね。シリウス伯爵家の所有する門外不出の毒薬コレクションは、彼にはずいぶん魅力的に見えただろう。そして、自分のために使うことに一切の躊躇をしなかった」
「そのために、母上を利用したんだな……自分の子飼いの親父とくっつけてシリウス伯爵夫人として送り込んで。くそっ!やっぱりくそ野郎じゃねえか」
「どんな理由があったとしても、他人を犠牲にしていい理由にはならない。叔父の余罪は挙げるときりがないからな。貴族だけじゃない。毒薬の実験のために、多くのものが犠牲になったんだ。……シリウス伯爵が、前シリウス伯爵夫妻を事故に見せかけて殺害するよう指示したのも叔父だったと白状したよ。彼は直接手を下したわけではないが、使用人に金を握らせて馬車に細工をさせたらしい」
ジークが静かに告げる。
「親父が……くそっどいつもこいつも……」
ロイスの姿を複雑な気持ちで眺める。シリウス伯爵家に対するラピス王家の仕打ちは確かにひどい。ラピス王家とシリウス伯爵家の血を引くガライアスが自分の境遇を呪うのも分かる。でも、だからといってジークの母君を暗殺し、ジークも亡き者にしたうえで王座に就こうとした男を擁護する気にはなれなかった。
もうひとつ、私にはどうしても気になることがあった。
「ねえ、お父様、お母様はシリウス伯爵家の人間だったのね」
「うん。僕とは中立国であるダイナー王立学園で出会った。見た目は妖精のように儚く可憐で美しいのに、すごく男前でね。ソフィア、君はジェニファーにそっくりだ。とても、魅力的な人だったよ」
「そう、だったんだ……」
ずっとただの商家の娘だと思っていた。自分が貴族の血を引くなんて考えてもみなかった。しかも、よりにもよってそれがシリウス伯爵家だなんて。母の姿すら知らずに育った私としては、とても信じられないし実感もない。ジークはどこまで知ってたんだろう。ちらりとジークのほうを見ると心配そうにこちらを見つめているジークと目があった。
「ソフィア……」
「し、知らなかったな。私がそんな複雑な家の出身だったなんてね。お母様も苦労したのね。でもまあお父様はもともと平民なわけだし。今は単なる男爵家の娘!私は私。変わらないわ。そうでしょう?」
「あ~、まあ……」
「このさい、ソフィアには全て話しておいてはどうですか?」
ジークが真剣な顔で父に向き合う。
「やっぱりジークハルト殿下は気づいてたよね」
父が諦めたようにため息を吐くと、ジークは静かに言葉を続けた。
「ガイル・アリラン殿下。アリラン王国の王位継承権を持つ王弟殿下、ですよね」
「まあね」
ジークと父の言葉に目を丸くする。
「「は?」」
思わずロイスと声が被った。
「お父様がアリラン王国の王弟?うそでしょ!」
「アリラン王国……あのアリラン王国か」
「まあ、この国をはじめとしていい噂は聞かないよね」
「なんで、そんな人が平民になってるのよ……」
「ん?ふふ、君のお母さんと駆け落ちしたからだよ。愛の逃避行さ!」
あまりにもあっけらかんという父の言葉に頭を抱えたのだった。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし旦那様は、冷酷陛下です!?)
夕立悠理
恋愛
伯爵令嬢ミレシアは、恐れ多すぎる婚約に震えていた。
父が結んできた婚約の相手は、なんと冷酷と謳われている隣国の皇帝陛下だったのだ。
何かやらかして、殺されてしまう未来しか見えない……。
不安に思いながらも、隣国へ嫁ぐミレシア。
そこで待っていたのは、麗しの冷酷皇帝陛下。
ぞっとするほど美しい顔で、彼はミレシアに言った。
「あなたをずっと待っていました」
「……え?」
「だって、下僕が主を待つのは当然でしょう?」
下僕。誰が、誰の。
「過去も未来も。永久に俺の主はあなただけ」
「!?!?!?!?!?!?」
そういって、本当にミレシアの前では冷酷どころか、甘すぎるふるまいをする皇帝ルクシナード。
果たして、ルクシナードがミレシアを溺愛する理由は――。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる