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23 捕らわれの姫?脱出作戦開始!
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「私たちこれからどうなるんですの……」
私と同じように両手両足を縛られていたキャロルちゃんは、ちゃんとソファーに寝かされていた。私だけ床に転がされていたのは本当に私を始末するつもりだったんだな。許せん。
「ん、大丈夫。多分そのうち助けがくるから。よっと」
するりと縄をほどく私をあぜんとして見つめるキャロルちゃん。
「あ、あ、あなたっ!どうやって……」
「しーっ!今キャロルちゃんの縄も解いて上げるから。じっとしててね」
ヒールに隠してあった小型のナイフで素早く縄をほどく。
「あ、あなた何者ですの……」
「ふふ、我がアルサイダー商会自慢の護身用武器内蔵ヒールです!」
アルサイダー商会ではありとあらゆるものを扱っているが、こういうアイデアグッズも得意分野のひとつなのだ。心配性のジークのお陰で私が身につけるものには大抵何か仕込まれている。
「それ、私も欲しいですわ……」
「ふふ、今度色々紹介するね!」
「……ごめんなさい。ああは申しましたけど、お父様が頼りになるかどうか……多分知らせを聞いてもオロオロしてるだけですわ。お父様が動かせる兵なんてありませんもの」
シュンとするキャロルちゃん。いちいち可愛いな。
「とりあえず現場にはうちの家紋入りのハンカチを落としてきたの。この時間まで戻ってないんだもの。何かあったことは伝わるはずよ。今頃アルサイダー商会も総出で私たちを探してるわ」
「だと、いいのですけど……」
「でもね、私たちもこのままじっとしてる場合じゃないわ。ここにいたら何をされるか分からないから」
「そ、そうですわね!」
「ひとまず助けがくるまで、安全な場所を探して隠れましょう」
「わ、わかりましたわ!……あの、頼りにしてます」
か、か、可愛い~!
「大丈夫。キャロルちゃんのことは私が守ってあげるから」
「ソフィアお姉さま……」
おおう。なんかお姉さまに格上げされちゃった。ま、可愛いからいっか。
私はキャロルちゃんの手を取るとそっとドアの向こうに耳をすます。人の気配がない。縛っているとはいえ見張りも付けないとは随分ずさんな誘拐計画だ。よほど人手が足りないのだろう。
頷きあうとそっとドアから抜け出す。
屋敷内はどこもかしこも暗く、灯りもない。広さはそれなりにあるのでかつてはどこかの貴族屋敷だったのだろう。至る所に蜘蛛の巣が張っており、現在は廃墟となっているようだ。
私達を攫った男たちは3人。それにあの最低男。最低でも4人の男がいる。人質とはいえ見つかったらただでは済まないだろう。
使用人用階段を使って屋根裏部屋にあがると小窓から外の様子を確認する。日はすっかり沈み辺りは漆黒の闇が覆っていたが、遠くに家の灯りがみえる。
やはり、王都からは出ていない。王都の外れにある屋敷といったところだ。しかし、走って助けを呼びにいける距離でも無さそうだ。
私は太ももに隠し持っていた細い筒を半分に折るとそっと茂みに落とす。
突如もくもくと立ち上る煙。
「これでよしっと」
「な、何をしましたの?ひ、火を付けたとか?」
「ふふ、そんなことしたら私たちも危険でしょ。あれはね、狼煙っていうんだよ。うまいこと煙だけが出るようになってるの。山や森でうっかり迷子になったとき、自分の居場所を教えるのに便利なのよね」
「それもアルサイダー商会の?」
「そう!うちの人気商品よ!」
「今度お父様にお願いしてそれも買ってもらいますっ!」
「まぁ、貴族令嬢が使う機会はそれほどないと思うけど」
「絶対欲しいです!」
「……今度プレゼントするね」
ひとまずキャロルちゃんには屋根裏部屋に隠れていてもらうことにする。
「お姉さまは一緒にいていただけませんの……」
不安そうな声に胸が痛む。できればついていてあげたいが今は一刻を争う。
「大丈夫、また戻ってくるから。もう少し屋敷内の様子を見てくるね」
「危ないことはしないで下さいませ」
「わかった。いい?私が帰ってくるまで扉につっかえ棒をして絶対に開けちゃだめだよ?」
私は屋根裏部屋をそっと後にした。
───さぁ、反撃を始めますか。私たちをさらったこと、絶対後悔させてやるからね!
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