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21 王都に渦巻く陰謀
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王宮へ向かう途中、また馬車が止められてしまう。細い路地に誘導され、何やら御者と言い争っている声が聞こえるが何かトラブルだろうか。
「もうっ!また検問ですの!」
キャロルちゃんがイライラしながら窓を開けたとたん、窓から投げ入れられた匂い袋から甘い香りが立ち込めた。
「なっ!何を……」
立ち上がりかけてふらりと倒れ込むキャロルちゃん。慌てて息を止め、キャロルちゃんを抱き起こしてハンカチを鼻と口に当てる。すでにぐったりと意識を失っているので一気に吸い込んでしまったようだ。
(毒、じゃない。でも、眠り薬かも……)
手で口を押さえながら、なるべく香りを吸い込まないようにそっと窓際に移動する。少し吸ってしまったせいで頭が重い。油断すると意識が飛びそうになる。唇を噛みしめ、なんとかギリギリで意識を保つ。
しばらくすると何人かの足音が馬車に近付いてきたのでとっさに意識を失っているふりをする。敵か味方か分からない以上、下手に動くのは危険だ。
「おい、吸い込むなよ。娘はどうだ?」
「見ろよ!二人いるぞ?」
「くそっ!どっちが宰相の娘だっ!」
「早くしないと面倒なことになるぜ……」
「しょうがねぇ。両方連れていくぞ!」
言うなり荷物のように担ぎ出された。
「へへっ、可愛い娘だなぁ……」
男の無遠慮な手にするりとお尻を撫でられ、ぞっとする。くううう、殴ってやりたいっ!でもここは我慢だっ!今騒いでも多勢に無勢。勝てる気がしない。
「おい!大切な人質だ!手を出すんじゃねえ!」
「ふひひ、大丈夫ですって。ぐっすりおねんねしてらぁ」
(こいつ、絶対あとで殴ってやるんだからっ!覚悟してなさいよっ!)
相変わらず尻を撫で回す手に復讐を誓う。
「ふんっ!こいつには大金がかかってるんだ。……怖い御方だ。失敗したら命はないぞ」
(キャロルちゃん……)
ぐったりと意識を失ったキャロルちゃんのことが気にかかる。
隙を見てキャロルちゃんとともに逃げるには、目覚めてもらわないと無理だ。でも、今はなるべくじっとしておいてほしい。粗野な連中だ。暴れるとカッとなって酷い目にあわされるかもしれない。
大丈夫。ここは王都。至る所に目がある。きっと、誰かが見ている。ならばラファに伝わるはず……ラファ!信じてるわよっ!
―――そして私は、襲い来る眠気の前に遂に目を閉じてしまったのだった。
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